断然人気馬を突き放す
1年ぶりの勝利で3連覇
この日の高知競馬場は“黒船賞スペシャル”ということで、全レース1400メートル戦として行われていた。そして黒船賞JpnⅢに出走してきた中央勢5頭は、いずれもが1400メートルの地方の交流重賞を勝ったことがあるというスペシャリスト。それでも人気は2頭に集中した。59キロのトップハンデで兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢを圧勝したドリームバレンチノが単勝1.2倍の断然人気で、このレース3連覇を狙うセイクリムズンとの馬連複は1.4倍。そして3番人気の支持を受けたのが、地元のエプソムアーロンだ。兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢではドリームバレンチノの2着と好走し、さらに前走笠松のオッズパークグランプリをコースレコードで快勝。この馬もやはり力を発揮しているのは1400メートルの舞台だ。ハナを奪ったのはティアップワイルドだが、ぴたりと2番手を追走していたセイクリムズンが絶好の手応えのまま3コーナー過ぎで並びかけた。そして中団を追走していたドリームバレンチノも向正面から早めのスパート。4コーナーでセイクリムズンをとらえにかかると、ティアップワイルドは後退し、やはり人気2頭の一騎打ちかに思えた。
しかし直線を向くとセイクリムズンが一瞬にして突き放し、ドリームバレンチノに2馬身差をつけての快勝。中団から末脚を伸ばしたダイショウジェットがさらに2馬身差の3着に入った。
地元期待のエプソムアーロンだが、勝負どころの3コーナーあたりから追走一杯となり、残念ながら8着。「地元だけに、勝負に行ったぶん、息が入らず苦しくなったかなあ」と雑賀正光調教師は悔しそうだった。
今回ポイントになったのは、高知コースとの相性ではなかったか。セイクリムズンは昨年のこのレース以来1年ぶりの勝利。「簡単に(セイクリムズンを)つかまえられたし、手ごたえもよかったので勝てると思った」(D.バルジュー騎手)というドリームバレンチノを一瞬にして突き放したのだから、勝ちきれないレースが続いていたここ何戦かとは見違えるようなレース内容だった。馬自身はこのレース3連覇だが、管理する服部利之調教師は06年のブルーコンコルドと合わせて4勝目、鞍上の岩田康誠騎手も07年のリミットレスビッドと合わせて4勝目となった。
服部調教師は、「スラッとした体型よりも、ガッシリした馬が好き」だという。そういえばGⅠ(JpnⅠ)の南部杯3連覇など、同じく地方のダートグレードで活躍したブルーコンコルドも体重500キロを超える同じようにガッシリした馬体だった。そうした馬が好みであるがゆえに、勝たせる術も知っているのだろう。セイクリムズンの次走は東京スプリントJpnⅢとのことで、もし勝てばブルーコンコルドに並ぶダートグレード10勝目となる(ブルーコンコルドはほかに芝の重賞を1勝)。
またダイショウジェットも、コースとの相性ゆえの好走といえそうだ。一昨年はセイクリムズンとタイム差なしの3着。昨年はクビ差で2着。そして今回、やや離されはしたものの再び3着。「馬体を見ても11歳とは思えない」という陣営は笑顔だった。
岩田康誠騎手
パワー系の馬なので力のいる馬場は合っていますし、1400メートルの距離もぴったりだったと思います。8歳ですが、先生をはじめスタッフが大事に支えてくれてるので、これだけ走ってくれると思います。ぼくも高知は相性がいいですし、馬に感謝したいと思います。
服部利之調教師
高知は相性がいいですね。馬の体を見ればわかるようにパワータイプなので、得意な馬場なんだと思います。そのときどきで波はありますけど、8歳でも変わったところはないですね。前回の根岸ステークスでは脚を痛めて動けないほどでしたが、それでも3日目には追い切って、体質的も強いんだと思います。