着差はわずかも格の違いで完勝
タイトルを重ね目指すドバイへ
ダート界を代表する百戦錬磨の猛者たちが頂点を極めてきた川崎記念JpnⅠは、63回目を迎えた伝統の一戦だ。今年は王者ホッコータルマエが単勝オッズ1.1倍の断然人気を集め、どんな勝ち方をするのか? 相手探しに焦点は絞られていた。着差だけを見れば、ホッコータルマエが辛勝だったように思えるかもしれないが、「乗っているほうは着差以上に強かったです」とゴールデンコンビの幸英明騎手が称え、格の違いをまざまざと見せつけた形だ。
レースは武豊騎手のトウショウフリークが予想通りハナを奪うと、後続をグングン突き放して大逃げを打った。ホッコータルマエは好スタートを切り、離れた2番手につけ、後ろにはフリートストリートやムスカテール、ランフォルセといった中央勢が中団より前に位置取った。「最初から2、3番手につけていきたかったんですが、逃げ馬を楽に逃がさないように、常に射程圏内に入れておきました」(幸騎手)。
ホッコータルマエは2周目の3コーナー付近でトウショウフリークに並びかけ、最後の直線に入っても追い出しを我慢し、外からムスカテールがくると一気にスパート。「(2周目の)4コーナーを回ったときには勝てると思ったんですが、最後は考えていたよりも詰め寄られましたね。ただ、抜け出したときに遊ぶところがあったんですが、後ろからきたら反応していたので、あと100メートル、200メートルあっても差は縮まらなかったと思います」(幸騎手)。
半馬身差の2着には久しぶりのダート戦だったムスカテールが入り、逃げ粘っていたトウショウフリークは3着だった。
ホッコータルマエの重賞初挑戦は、一昨年のジャパンダートダービーJpnⅠで5着だったが(優勝はハタノヴァンクール)、勝負どころで前の馬たちが壁になる不利があり、「力負けではありません」と幸騎手が言っていたことを思い出す。その後はビッグレースに挑戦しながらも、ワイド圏内を外さない安定感は群を抜いている。昨年だけでも、かしわ記念、帝王賞、JBCクラシック、東京大賞典と4つのGⅠ/JpnⅠを含め7つの重賞を勝ち、今年は早々に川崎記念のJpnⅠタイトルも手中に収めた。今年5歳になり、この勢いはどこまで続いていくのだろう。
今後は状態を見てフェブラリーステークスGⅠを使い、最大目標はドバイワールドカップへ置いているそうだ。全国を渡り歩き、ダートグレードレースで戦い続けているホッコータルマエが、悲願の中央のGⅠを勝ち、世界へ挑戦する姿を地方競馬ファンのひとりとしても見守り応援していきたいと思う。
幸英明騎手
圧倒的な人気だったのでホッとしています。調教も返し馬も良かったので、いい状態だと思っていました。まだ中央のGⅠを勝っていないのでフェブラリーステークスは取りこぼさずにドバイワールドカップに行けたら最高ですね。ファンの皆さんの応援が力になるのでこれからも応援してくれると嬉しいです。
西浦勝一調教師
東京大賞典ではバランスを崩したところがあったので、レース後は気にして見ていたんですが、早く状態は戻りました。本当に賢くて、自分の中でオンオフの切り替えがしっかりできる馬です。レースが終わるとオフになって疲れを残さないので、また次のレースに向けて仕上げていけます。