直線後続を寄せつけず3馬身差
持ち前のスピードで逃げ切る
今年で63回目を迎えた全日本2歳優駿JpnⅠは、地方競馬の現存重賞の中で最も歴史あるレースのひとつとして知られている。ダートグレードになってからは16回目となり、後々の活躍馬たちが勝ち馬として名を連ねている出世レースだ。
中央勢5頭中4頭が単勝10倍以下のオッズで人気を分け合っていたが、結果的には牝馬のサマリーズのスピードが上回った。「スピードがいちばんの武器。前向きな馬なので気持ちに逆らわないでレースをしようと思っていましたが、あまり複雑には考えていませんでした」と手綱を取った藤岡佑介騎手。
注目の先行争いは持ち前のスピードを生かしてサマリーズが先頭に立つと、軽快な走りで他馬をリードしていった。先頭に立っても力むことはなかったそうで、前走のポインセチア賞は中団から差す競馬で優勝しているが、そこでうまく抑えて走れたことが今回ハナに行っても折り合えるだろうという自信につながったという。
しかし、競馬は何が起こるかわからない。「正直、他馬との戦いというよりもカラ馬との戦いでした」と藤岡騎手がレース後にコメントを残したように、スタート直後に落馬、競走を中止したアメイジアが3~4コーナーから絡んできて併走する形になり、ヒヤッとする場面もあった。それでもサマリーズは混戦の2着争いに3馬身差をつけて逃げ切り、完勝となった。
とにかく全馬無事だったのは不幸中の幸いだった。しかし、中には不利を受けて力を出し切れない馬もいたのは残念だった。
勝ったサマリーズは、芝の新馬戦では4着に敗れているが、その後のダート戦では無傷の3連勝。このあとは中央の桜花賞を視野に入れていくそうだが、ダートでのパフォーマンスも素晴らしいだけに、さまざまな可能性があるだろう。
2着には北海道から船橋に転厩初戦のジェネラルグラント、3着には1番人気に支持されたアップトゥデイトが入った。
地方競馬を代表する中・長距離のJpnⅠホルダー、フリオーソとボンネビルレコードが東京大賞典GⅠを最後に引退することが発表されたばかりだ。フリオーソは種牡馬、ボンネビルレコードは大井競馬場の誘導馬としてそれぞれ第二の馬生を歩む予定だが、一方では、あとに続く馬が育っていない寂しさもある。
今年の全日本2歳優駿JpnⅠは地方勢の中から3頭が掲示板にのった。2着のジェネラルグラント、4着のアウトジェネラル、5着はインサイドザパーク。今回は不利があったり小回りコース向きではなかったりなどそれぞれに力を出しきれない面はあったが、それでいてのこの結果は今後に向けても収穫になったと言える。来年の南関東クラシック戦線、そしてゆくゆくは地方競馬の中心的存在として砂上をにぎわして欲しいと願わずにはいられない。今年の全日本2歳優駿JpnⅠは例年以上にそんな思いも入り混じったレースとなった。
藤岡佑介騎手
ナイターや関東圏への輸送など初物尽くしでしたが、跨ったときにすごく落ち着いていたし体調の良さも伝わってきました。女の子ですが精神面がしっかりしていてスピードが素晴らしいです。僕たち乗っている騎手も寒いのに、たくさんお客さんが入ってくれてありがたいと話しながらレースに向かいました。
藤岡健一調教師
GⅠ(JpnⅠ)を勝つことができたので素直にうれしいです。エサの心配とかはないので特に気を遣うところもなくてえらい馬です。スタートが上手なのでいいポジションは取れると見ていたので、先手を取って自分の競馬ができれば結果はついてくると思っていました。まだ2歳なので来年が楽しみです。