レースハイライト タイトル
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2012年11月21日(水) 浦和競馬場 2000m

7歳でもハードな調教で上積み
思い描いた展開で叩き合いを制す

 浦和記念JpnIIは今年で33回目の歴史ある重賞だが、交流重賞となってからは17回目を迎えた。過去のレースを振り返ると、中央馬と地方馬がほぼ互角に戦ってきたと言ってもいいだろう。しかし今年は中央馬が上位3着まで独占する結果となり、中央馬4頭の中でもあまり人気がなかった岩田康誠騎手のピイラニハイウェイに勝利の女神が微笑んだ。
 ピイラニハイウェイは中央で6勝。今年2月には佐賀記念JpnIIIで重賞初制覇を果たしたのだが、それ以降勝ち星からは遠ざかっていた。「もう伸びしろはないのかなぁと思っていたんですが、丈夫な馬なので今回は調教をかなりハードにやってきてもへこたれずにうまく乗り越えてくれました。まだ上積みがあることがわかりました」と、管理する吉田直弘調教師。
 戸崎圭太騎手のエーシンモアオバーが先手を取ると、ピイラニハイウェイは気合いをつけて前に押し上げていき、ピタリと2番手集団を追走した。岩田騎手の話では、地力で押し切るタイプではないので、他の馬に脚を使わせて自分自身はためていこうという作戦だったそうだ。
 前6頭と後ろのグループに大きく分かれる展開になり、ピイラニハイウェイは虎視眈々と好位内目を進めていった。直線に入ると、エーシンモアオバーにピイラニハイウェイとライアン・ムーア騎手の1番人気ランフォルセが並びかけて3頭の叩き合いとなり、最後はピイラニハイウェイが一歩抜けだしたところがゴール。2着にエーシンモアオバー、3着にランフォルセが入った。
 「岩田さんもうまく乗ってくれて助けてくれたし、ピイラニさんも頑張ってくれました。また調教で工夫をしていけば伸びしろはあるかもしれません。今は7歳、来年は8歳ですが、中年の星として光り輝いていけたら……」と吉田調教師。
地元期待のトーセンアレスは4着に敗れた
 浦和所属馬による久々のダートグレード制覇が期待されたトーセンアレスは4着。「流れが遅すぎたね。ムーアがスタートで遅れたときに一瞬行こうかなとも思ったんだけど……展開に負けた」と張田京騎手。前の集団のうしろから進めていく形になったが、結果的には先行した3頭の決着となった。JBCクラシックJpnIには向かわず、あえてここへ目標を切り替えての結果だけに残念だったが、悲観するような走りではなかっただけに巻き返しに期待したい。
 オーバルスプリントのレポートでもお伝えしたが、トーセンアレスを管理する浦和の小久保智調教師はこの日までで今年107勝を挙げ、引き続き南関東リーディングを独走中だ。南関東所属調教師の年間最多勝はデータとして残されている限りでは川島正行調教師(船橋)が09年に達成した112勝。記録更新はすぐそこまで迫っている。
岩田康誠騎手
前回よりも馬は元気だったので(前回以上に)走ってくれるとは思っていました。好スタートで好位の内から流れに乗ることができてレースは思い通りでした。とても乗りやすい馬ですね。最後は戸崎君とムーアにはさまれて負けられない気持ちでした。これをきっかけにもっと上を目指して欲しいです。
吉田直弘調教師
スパッと切れる脚はありませんが、長くいい脚を使えるのと丈夫なのがいいところです。レースが終わったばかりなのでわかりませんが、この後は名古屋グランプリ(12月24日)や東京大賞典(12月29日)なども視野に入れていきたいですね。中年の星としてまた年末に光り輝きたいです。

名手3人の叩き合い。内から戸崎騎手、岩田騎手、ムーア騎手

取材・文:高橋華代子
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)、NAR