レースハイライト タイトル
dirt
2012年11月5日(月) 川崎競馬場 2100m

直線弾けて5馬身突き放す
三度目の正直でJpnI奪取

 昨年まで11回の歴史を重ねたJBCクラシックJpnI。第1回のレギューラメンバー以外の勝ち馬は、いずれも2連覇または3連覇を果たしているというのは広く知られるところ。それゆえJBCスプリントJpnIと比較して固い決着となる印象のクラシックだが、過去5年の結果を見ても、連対馬10頭中8頭を1、2番人気馬が占めるという、データ面でもそれははっきりと示されている。しかし今年は、昨年まで2連覇の絶対王者スマートファルコンが2カ月前に電撃引退、地方の雄フリオーソも休養中、さらには中央のダート王者トランセンドもドバイ以来の休み明けということもあり、結果的には混戦のJBCクラシックとなった。
 勝ったのは、単勝5番人気のワンダーアキュート。「作戦どおり、外に持ち出してズドンといけた。久々にこの馬らしいレースができた」という和田竜二騎手のコメントが、このレースの多くを物語っている。ワンダーアキュートにとって悲願のJpnI・GI初制覇となった喜びを、和田騎手は右手を高々と挙げて表現した。
 絶好のスタート切ったのはワンダーアキュートだが、マグニフィカが押してすぐに先頭を奪い、外からトランセンドも仕掛けていった。ワンダーアキュートは控えて3番手を追走。テスタマッタはそのうしろでやや掛かり気味、日本テレビ盃JpnIIまで3連勝で臨んだソリタリーキングがそのうしろ、近走好位につけるレースで成績を残してきたシビルウォーは最後方から徐々に位置取りを上げる展開となった。
 向正面でソリタリーキングがまず動き、さらにはシビルウォーが一気に先団まで押し上げてきてレースが動いた。マグニフィカは後退、3コーナー過ぎでトランセンド、ソリタリーキング、シビルウォーが併走するように先頭へ。ここで仕掛けをワンテンポ遅らせたのが、ワンダーアキュートの和田騎手だった。4コーナー手前で3頭の外に持ち出して追い出されると、直線では馬場の中央を堂々と突き抜けた。早めに仕掛けてきたシビルウォーが5馬身差の2着。トランセンドは粘りきれず3馬身差の3着。そしてソリタリーキング、テスタマッタと続き、フリオーソ不在のこのメンバーでは、やはりJRA勢が掲示板を独占する結果となった。
 勝ったワンダーアキュートは、これまでにもたびたび素質の片鱗は見せていた。その序章となったのが、昨年5月の東海ステークスGⅡで、ゴール前一気に追い込んでのレコード勝ち。秋のジャパンカップダートGⅠでは後方一気でエスポワールシチーをとらえ、トランセンドから2馬身差の2着。そして東京大賞典GIでは、逃げ切りを図るスマートファルコンに対して首の上げ下げの勝負に持ち込んだ。写真判定の結果2着に敗れはしたが、どちらが勝っていてもおかしくない大接戦だった。
 念願のJpnIタイトルに、管理する佐藤正雄調教師は、「三度目の正直で、やっとなんとかここにこぎつけました」と安堵の表情を見せた。とはいえ前走東海ステークスでの惨敗もあり、ここに向けては手探り状態だったようだ。「休み明けはあまり実績がなかったんで、正直どうかなという心配はありました」と和田騎手。馬体重は前走比ではマイナス21キロだが、好走した東京大賞典との比較ではマイナス7キロ。馬自身は仕上がっていたのだろう。
 この後に続く、ジャパンカップダート、そして東京大賞典というGI戦線では、ワンダーアキュートが突っ走るのか、それともひと叩きされたトランセンドの復活があるのか、南部杯JpnIを圧勝したエスポワールシチーも衰えはない、はたまた前日のみやこステークスGIIIでダート6連勝とした上がり馬ローマンレジェンドの台頭があるのか。秋のダート古馬頂上決戦は、高いレベルでの混戦となりそうだ。
和田竜二騎手
GI級の力がある馬だとずっと思っていましたし、この馬でずっと夢見ていたので、夢がかなった一瞬でした。苦しいときもあったんですけど、絶対いつかは勝ってくれると信じていました。ほんとに強い時はこれくらいのパフォーマンスができる馬なので、今回やっとそれが出せた感じです。
佐藤正雄調教師
放牧から帰ってきて問題なく来ていましたが、この馬は体重の変動が激しく、今回はマイナス21キロで、ベスト体重から10キロくらい軽いかなと思ったんですけど、体はいい感じで出れたと思います。大井で見せたような脚はもってるんで、ひょっとしたらという気持ちはありました。この勢いでJRAのGIも狙います。

トランセンドが先頭で最後の直線へ

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(国分智、森澤志津雄)、NAR