2歳時以来久々のグレードタイトル
逃げにこだわらない強さを見せる
Road to JBCの第2弾はJBCスプリントJpnⅠの前哨戦、東京盃JpnⅡ。ステップレースとしていくつか選択肢があるクラシックに比べ、スプリントの路線はこの東京盃以外にはあまり選択肢がない。マイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠの勝ち馬にもスプリントへの優先出走権が与えられるが、例年クラシックを目標とする馬がほとんど。今年は本番のJBCスプリントが1400メートル(川崎)で行われることもあってか、過去に2度JBCスプリントを制しているスーニがその南部杯に回ったものの、ダート短距離路線のほぼベストメンバーが顔を揃えた。
スタートで波乱が起きた。白い帽子の2頭が完全に取り残された。逃げれば強いレースをするテイクアベットに、先行して結果を残してきたスターボードだ。ハナを切ったのはダッシュ力に定評のあるジーエスライカーで、差なくギオンゴールド、ラブミーチャンと、外めの枠に入った3頭が先行。2番人気タイセイレジェンド、1番人気セイクリムズンは、そのうしろを追走する展開となった。
直線を向いてもジーエスライカーが先頭だったが、抜群の手ごたえで追い出されたラブミーチャンが残り200メートルで先頭へ。タイセイレジェンドが外から、セイクリムズンが馬群の中から追ってきたが、その差は詰まらず、ラブミーチャンがタイセイレジェンドに1馬身半差をつけて押し切り、ダートグレード4連勝中で注目されたセイクリムズンはクビ差で3着だった。
ラブミーチャンは昨年のこのレースでも勝ったスーニから0秒2差の2着、同じ大井1200メートルで争われたJBCスプリントでもスーニから0秒2差の4着と好走実績があり、そして今年は快勝と、現状、ベストの距離は1200メートル。「大井は3回目なんですけど、走りやすいですね」と濱口楠彦騎手。上がり3ハロン36秒8はメンバー中最速で、勝ちタイム1分11秒2(稍重)は、過去10年が1分10秒台後半から11秒台中盤で収まっていることを見ると、例年のJRA勢にもヒケをとらないレースぶりを見せた。
一方、3着に敗れたセイクリムズンだが、今年4月の東京スプリントJpnⅢの勝ちタイムが1分10秒5(良)で、上がり3ハロン35秒7というパフォーマンスを発揮していただけに、今回は休み明けで力を出しきれなかったと見るべきだろう。
そして地方馬で注目されたもう1頭、兵庫から遠征のオオエライジンは中団を追走し、見せ場こそつくれなかったものの、勝ったラブミーチャンから1秒差の7着。地元の兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢ(園田1400メートル)で3着の経験はあったが、一線級を相手に息の入らないこの距離は初めてで、「慣れが必要かな」と橋本忠男調教師。前半3ハロン34秒2というペースを追走して最後までそれほどバテなかった経験は、今後に生きるはずだ。
勝ったラブミーチャンは、次走JBCスプリントで、全日本2歳優駿以来3年ぶりのJpnⅠ制覇とダートスプリントチャンピオンの座を狙う。タイセイレジェンドも大外枠ながら高いスピード能力を見せた。叩き2戦目となるセイクリムズンは本番での上積み必至。さらにスーニは南部杯でどんなパフォーマンスを見せてくるか。決戦は11月5日、川崎1400メートルが舞台となる。
なお、JRA阪神開催が代替開催となった影響で、地方競馬IPATでの発売が1日遅れてこの日が初日。東京盃1レースの売上は467,146,200円で前年比105.1%。うちIPAT分は81,548,500円だった。
濱口楠彦騎手
普通にスタートがきれて、先行争いがもっと激しくなるかと思ったんですが、すんなり隊列が決まって、理想的な競馬ができました。いつになく4コーナーを回るときに手ごたえがよかったんで、これは勝っちゃうぞという感じでした。ゴールまで脚いろがぜんぜん変わらなくて、しっかりしていました。
柳江仁調教師
強かったですね。最後までよく踏ん張りました。2歳時以来の交流重賞勝ちですが、以前の一本調子の逃げ馬とは変わってきて、進化しているスタイルが見えたので、また自信がつきました。いつもどこか少し悪いところがあって、今回はそういうマイナス材料がなかったのも、結果につながったと思います。