ゴール前の大接戦を制す
得意の条件で初タイトル
地方競馬のアイドルホース・ラブミーチャンと同じ5歳牝馬が輝いた。今回主役となったアースサウンドは09年の兵庫ジュニアグランプリJpnII・2着、続く全日本2歳優駿JpnI・3着といずれもラブミーチャンに僅差で敗れていた素質馬だ。ここまでの戦績を見てもキーワードは『夏』と『左回り』と言っても過言ではなく、3歳以降の勝ち星はそれに限定されている。前走のBSN賞(新潟ダート1200メートル)で3着に入って久しぶりに馬券に絡み、ここに矛先を向けてきた。
コンサートボーイの甥っ子ピエールタイガーが先手を取ると、アースサウンドは2番手をキープ。「予定通りの位置取りでしたね。スタートから力むことなくあの位置を取れてリラックスして走ってくれました」と、約1年3カ月ぶりにコンビを組んだ後藤浩輝騎手。
3コーナー付近からピエールタイガーに並びかけ4コーナーで先頭へ躍り出ると、そのままアースサウンド完勝ムードも漂っていたが、外から張田京騎手のトーセンアレス、内から武士澤友治騎手のデュアルスウォードがともに上り3ハロン38秒5の脚で襲いかかり、ハナ、クビ差の大接戦となった。
「馬も僕も最後は気力勝負でしたね。ゴールに入ってから張田さんから『ありがとう』って言われて負けたと思っていたので、和田先生に『大丈夫だよ』って言われるまでは謝るしかありませんでした(苦笑)」と後藤騎手は胸をなで下ろしていた。
アースサウンドにとって記念すべき初タイトルで、後藤騎手にとっては怪我から復帰後の待望の初勝利となった。
ダート界にニューヒロインが誕生。今年の最大目標を11月5日に川崎競馬場で行われるJBCレディスクラシックに置く予定で、一度その前に使うか直行するかはこれから考えていくそうだ。
一方で、2着のトーセンアレスにとっては大きなハナ差となった。「最後は絶対かわったと思ったんだけどなぁ」と、いつもクールな張田騎手もひじょうに悔しそうだったが、大ベテランにそう思わせたほどトーセンアレスの矢のような末脚は圧巻だった。
中央時代は5勝を挙げて皐月賞や日本ダービーに駒を進めたことでも知られる逸材。今回は転厩緒戦で厩舎サイドも手探りの面はあったろうが、今後に向けても手応えをつかんだだろう。
管理する小久保智調教師(浦和)は現在40歳という若き指揮官。この日までで今年81勝を挙げ、南関東ではダントツのリーディングを突き進んでいる。2位の矢野義幸調教師(船橋)が56勝で、すでに25勝差がついているため南関東リーディングは濃厚だと思われるが、それだけに甘んじないのが小久保調教師の強さだろう。南関東の調教師リーディングの年間最多勝は、データとして残されている限りでは、川島正行調教師(船橋)が09年に達成した112勝という驚異的な数字なのだが、小久保調教師やスタッフの面々が今目標にしているのはもちろんその数字だ。こちらも最後の最後まで目が離せない。
後藤浩輝騎手
久しぶりに跨ってすごくいい状態だったし、頭のいい馬なので初めての環境でも戸惑わないと思っていました。夏が得意な馬ですが、まだ暑い時期は続くので秋以降も期待したいですね。僕自身は怪我をして4カ月間休んでいたんですが、初勝利は浦和競馬場で挙げたいと思っていたのでうれしいです(笑)。
和田正道調教師
うれしいの一言ですね。メンバーに恵まれた感じもしますが、状態もアップしていました。1200メートルは忙しいように思いますが、1400から1600メートルは合いますね。この馬のいいところは根性で、今日はそれが炸裂してくれました。夏女で左回りが得意なことなど条件もそろっていたと思います。