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2012年8月12日(日) 帯広競馬場

接戦から人気馬を振り切る
秋を前に実力馬が復活の激走

 ファン投票によって出走馬が選ばれる夏のグランプリ。暑い時期だけに例年有力馬が回避することもめずらしくないが、今年は古馬のほぼベストメンバーが集まった。
 断然の中心は、ここまで重賞18勝の絶対王者カネサブラック。今年正月の帯広記念を制して以降、この馬にとってはかつてないほどの不振に陥っていたが、6月の旭川記念を勝って完全復調。その旭川記念、7月の北斗賞で上位を争ったキタノタイショウ、ホクショウダイヤ、ナリタボブサップの3頭が相手と見られ、それ以外の4頭は人気的にはやや離れた。
 注目の第2障害は、ナリタボブサップ、カネサブラック、伏兵視されたギンガリュウセイの3頭がほぼ同じタイミングで仕掛け、同時にクリアした。
 坂を下りてからの脚の違いですぐにカネサブラックが先頭に立ち、ナリタボブサップも続いた。これはカネサブラックのペースかに思えたが、残り20メートル手前でカネサブラックが止まり、連動するようにナリタボブサップも止まった。ここでマイペースを守って歩き続けたのがギンガリュウセイだった。すぐに立て直したカネサブラック、ナリタボブサップを振り切り、今シーズンの初勝利がタイトル奪取となった。
 今年8歳となったギンガリュウセイは、2~3歳時にはほとんど目立たない存在だったが、4歳になって下級条件から8連勝するなどで注目を集めるようになった。2010年の6歳時には岩見沢記念4着、北見記念2着と好走していよいよ一線級の仲間入り。昨年は岩見沢記念2着のあと、北見記念で重賞初制覇を果たしていた。
 春先のスタートダッシュが遅いのは例年のことだが、今シーズンは特に遅く、ここまでは4着が最高という成績。久田守調教師も「今日は体重も減っていたし、ちょっと夏負けもしていたので、(復活は)もう少し先かなと思っていたんですけど…」と、まだ手探り状態だったようだ。そんな状況で勝利に導いたのが、数日前に騎乗を頼まれたという安部憲二騎手。第2障害では、途中で一度止まったカネサブラックとナリタボブサップに対し、ギンガリュウセイはひと腰でクリア。坂を下りてからも、半ばで止まった先の2頭に対し、ギンガリュウセイは慌てずマイペースでレースを進め、最後まで止まることなく歩きとおした。2着のカネサブラックとは1秒差、3着のナリタボブサップとは2秒4差。ばんえい競馬としてはほとんど差のない決着で、まさに騎手同士の駆け引きが明暗を分けたといえそうだ。
安部憲二騎手
800キロ台の重量で、カネサブラックとは10キロ差がありましたから、遅れないように自分の位置をとれれば、坂を下りてからも平均に歩ける馬なんで、離されずについて行って、思ったとおりのレースができました。この馬のいいところを引き出すことができました。
久田守調教師
去年もそうでしたが、春のうちはなかなかエンジンがかかりませんね。早めに行くとついていけなかったり難しいところがあるんですが、今回はほかの有力馬との重量差もありました。今日は、去年まで乗っていた安部騎手がうまく乗ってくれました。これから秋に向けて調子を上げていきたいと思います。

 そして4着のキタノタイショウ、5着のホクショウダイヤまで、勝ったギンガリュウセイからは5秒7差と、実績馬が力を出し切って好走を見せた。
 昨シーズンを終えた時点で、ニシキダイジン、フクイズミが引退し、高重量戦を争うメンバーの層がやや薄くなった感があったが、ギンガリュウセイの復調によって古馬戦線が厚みを増してきた。秋の岩見沢記念、北見記念へ向けては、今回僅差で掲示板を占めた5頭を中心にした争いが続いていくことになりそうだ。

取材・文:斎藤修
写真:NAR、中地広大(いちかんぽ)