素質馬がいよいよ本領発揮
連勝の勢いでJpnⅠも奪取
ダート古馬戦線の上半期におけるクライマックス、帝王賞JpnⅠ。昨年、ダートのチャンピオンとして並び立ったスマートファルコンとトランセンドはドバイワールドカップ遠征からいまだ復帰せず。08、10年に続いて帝王賞3勝目の期待がかかった船橋のフリオーソは、土曜日の最終追い切りを前にして脚に熱を持ったことで残念ながら回避となった。
それでも今年のフェブラリーステークスGⅠで復活をアピールしたテスタマッタ、かしわ記念JpnⅠ・3勝目を挙げたエスポワールシチーをはじめ、中央勢はダートグレード戦線で実績を残している馬たちが集結。地方勢は、ダイオライト記念JpnⅡで兄フリオーソに先着(3着)したトーセンルーチェ、そして兵庫から満を持して遠征のオオエライジンらに期待がかかった。
2番枠からランフォルセが飛び出し、大外13番枠からエスポワールシチーが競りかけたが、コーナーワークでランフォルセが単独で先頭に立ち、ゴルトブリッツ、ミラクルレジェンド、テスタマッタら中央勢が追走。昨年はスマートファルコンが飛ばして前半1000メートル通過が59秒8というハイペースだったが、今年は61秒6という平均ペース。それゆえ、ボク、トーセンルーチェ、オオエライジンら地方の重賞勝ち馬も直後を追走した。
しかし最後の追い比べで中央勢が底力の違いを見せつけた。4コーナーまで食い下がった地方の有力馬は次々に脱落、ランフォルセも後退したが、それ以外の中央勢がほぼ一団での競り合いとなった。
直線に入ってエスポワールシチーが先頭に立ち、テスタマッタが内から並びかけると2頭の叩き合い……、と思ったところに、直後でマークしていたゴルトブリッツが外に持ち出して並ぶ間もなく交わして突き抜けた。シビルウォーも加わった2着争いはエスポワールシチーがしのいだが、勝ったゴルトブリッツからは3馬身半差。クビ差でテスタマッタ、アタマ差でシビルウォーが入った。
「エスポワールシチーがしぶとそうだったので、早めに競り落とそうかなと思って、あとは後ろから来る馬だけを気にしていました」という川田将雅騎手のコメントからも、余裕のレースぶりがわかる。ゴルトブリッツは、ダートのオープン、アンタレスステークスGⅢと連勝でここに臨み、JpnⅠ初制覇となった。
デビューが3歳3月と遅れたゴルトブリッツは、芝では未勝利を脱出できず、いったんホッカイドウ競馬に移籍。しかし中央に戻ってからはダートで快進撃。一昨年の東京大賞典JpnⅠは500万下を勝ったばかりで7着だったが、それ以外はほとんど無敵で一気にJpnⅠまで突き抜けた。3走前のみやこステークスGⅢでの大敗は心房細動が原因とのこと。休養後のこの3連勝で、いよいよ5歳にして秘めた能力を発揮してきたといえそうだ。
母レディブロンドは、あのディープインパクトの半姉。現在、中央のGⅠ戦線ではディープインパクトの産駒たちが大活躍だが、ここでもその血が勢いを示した。
一方の地方勢は、トーセンルーチェが6着で最先着。オオエライジンも4コーナーあたりまでは有力中央勢の直後に位置していたが、10着に沈んだ。
ここ何年かの帝王賞でも地方馬の活躍は目立つが、それはアジュディミツオー、フリオーソなど傑出した馬たち。特に近年では中央のダート戦線はレベルアップが目覚ましく、また層も格段と厚くなり、地方馬にとっては相当に高く厚い壁となっている。フリオーソが不在となって、そうしたレベルの差をあらためて思い知らされる帝王賞でもあった。
川田将雅騎手
パドックはすごく落ち着いていましたし、返し馬もいいリズムでキャンターに行けたので、いい状態だなと思いました。ゲートもうまく出て、道中もいいリズムで運べたので、何も心配することなく乗っていました。秋にはまた大きなタイトルを獲れるよう、ダート界を引っ張れる馬になってほしいと思います。
吉田直弘調教師
馬の状態はすごくよかったと思います。勝ったのはうれしいですけど、同時に、さらに進化するためには、まだこれからたくさんの課題に取り組んでいかなければという思いです。そういう意味では、勝ちはしましたけど、勝って兜の緒を締めよという、そういう気持ちです。