直線でライバルを競り落とす
JBC連覇に向け女王の貫禄
前日の爆弾低気圧による荒れた天気にはひじょうに驚いたが、当日は打って変わって穏やかなポカポカ陽気となったのは幸いだった。馬場悪化が懸念されていたマリーンカップJpnⅢは重馬場での実施となった。
ダート界の女王ミラクルレジェンドと地方を代表する牝馬の1頭クラーベセクレタの2度目の直接対決に沸いた今年のマリーンカップJpnⅢ。両馬とも前走はエンプレス杯JpnⅡを予定していたが、降雪のためにレース自体が中止。ここに切り替えて仕上げられてきた。実質約4カ月の間隔は空いたが、そんなハンデは微塵も感じさせない名勝負を繰り広げた。
レースは、森泰斗騎手のメモリアルイヤーが一気にハナを奪うと、「想定内だったし、いい流れだった」という武豊騎手のプレシャスジェムズは2番手につけた。その後にも結果的には上位を独占する馬たちが続いたが、戸崎圭太騎手のクラーベセクレタは中団前の内目から進めていき、岩田康誠騎手のミラクルレジェンドはその後ろでピッタリとマークする形で追走していった。
3コーナーでプレシャスジェムズが代わってハナに立ち、そのまま押し切りそうな抜群の手応えだったが、残り200メートル付近でミラクルレジェンドとクラーベセクレタが馬体を併せながら一瞬のうちに抜き去って2頭のマッチレース。クラーベセクレタも必死に食い下がったもののあと一歩及ばず、ミラクルレジェンドが貫録勝ちを収めた(勝ちタイムは1分40秒3・重)。
ミラクルレジェンドの藤原英昭調教師は、「忙しいマイル戦はどうかなと思ったけど、常にああいうスタイルで競馬ができるのはいいですね。心身ともに成熟しているし、これをいかに北島康介選手のように維持させられるか」と、前日に行われた競泳のロンドン五輪代表選考会を兼ねた日本選手権で、100メートル平泳ぎ決勝を日本新記録で優勝した北島選手に例えた。ミラクルレジェンドは、昨年のJBCレディスクラシックをはじめこれで5つ目のタイトル奪取となった。
一方でクラーベセクレタの健闘にもたくさんのエールが送られた。3歳時のレディスプレリュード(5着)でミラクルレジェンドと対戦し、3キロのハンデをもらって0.9秒差をつけられたのだが、今回は同斤で0.2秒差まで詰め寄った。「クラシックの頃は砂を嫌がっていたけど、今日は我慢をしてくれて成長しています。(クラーベも)力はあるし負かすチャンスはあります」と戸崎圭太騎手は振り返っていた。クラーベセクレタにかかわる人たちにとっても大きな手応えをつかむことになっただろう。
岩田康誠騎手
戸崎君を見ながらレースを進められて、直線で弾けることができました。去年JBCレディスクラシックを勝たせていただいているので、ここでは負けられない気持ちもあったし、いいパフォーマンスができました。この馬の走りができれば(JBCレディスクラシックの)連覇はできると思います。
藤原英昭調教師
エンプレス杯JpnⅡのときは川崎に到着していたので、雪で中止になったのは馬にはかわいそうでしたが、間隔は空いてもいい状態で臨めたと思います。男馬が混ざるともう少しですが、牝馬同士ならまた違いますね。目標のJBCレディスクラシック連覇に向けてどんなローテーションを組むかはこれから考えます。
この2頭の最大目標は11月5日に川崎競馬場で行われるJBCレディスクラシックで、地方競馬にかかわるものとしては、やはりクラーベセクレタによる逆転を夢見たいものだ。この0.2秒差がこれからの7カ月でどう変わっていくのか見届けたい。そこに向けた戦いはすでに始まっている。
取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(川村章子、森澤志津雄)
写真:いちかんぽ(川村章子、森澤志津雄)