レースハイライト タイトル
dirt
2013年2月27日(水) 川崎競馬場 2100m

早めの仕掛けでゴール前抜け出す
砂の女王が貫録の勝利で有終の美

 「ミラクルレジェンドは我々が夢見ていることをみんな叶えてくれた馬ですね。たくさんの感激を与えてくれました」と管理する藤原英昭調教師。2年連続でJBCレディスクラシックとレディスプレリュードを優勝するなど砂の女王として君臨、このエンプレス杯JpnⅡでラストランを迎えた。女王の貫録をたっぷりと見せつけた姿は、最後まで強くて美しかった。
 地方所属騎手として最後の重賞レースとなった戸崎圭太騎手のエミーズパラダイスが先手を取る形になり、すかさず地元のラヴァリーズームも追走、ミラクルレジェンドは後方3、4番手を追走した。「本当はもっと前々で競馬をしたかったんですが、最近はズブさも出てきているので、道中は楽をさせてリズムを崩さないように気をつけました」(岩田康誠騎手)。前に行く馬が有利な馬場だったために、ミラクルレジェンドは2周目向正面の半ばで外目からスーッと3番手に押し上げていくと、前を射程圏内に入れた。「直線を向いたときに勝てると思ったので、あとは抜け出すタイミングだけでしたね。最後に味わう(ミラクルレジェンドの)背中の感触を噛みしめました」(岩田騎手)。
 直線ではエミーズパラダイスも必死に粘っていたが、そこに襲いかかったミラクルレジェンドが交わし切ったところがゴールとなった。ミラクルレジェンドは引き上げてきてからも岩田騎手がそのまま跨り、担当厩務員さんも隣に寄り添いながら、スタンドにいる多くのファンに別れを告げた。
 「長い間しっかり走ってくれて、いつでも期待に応えてくれたことに感謝しています。今度はお母さんになって世界で戦える、通用する仔を送り出して欲しいです」(藤原調教師)。このあとは生まれ故郷の社台ファーム(千歳)で繁殖入りし、エンパイアメーカーが最初の相手に選ばれているそうだ。440キロ台の小柄な馬だったが、力のいるダートもまったく苦にせず駆け回った。勝負根性があって負けん気の強い馬だったことを岩田騎手も称賛していたが、産駒たちにもすばらしい遺伝子を受け継いでいって欲しい。
 今年金沢競馬場で行われるJBCレディスクラシックは、国内では初めて牝馬ダートのJpnⅠとして行われる。砂の女王ミラクルレジェンドが砂上を去ったことで、そこに向けた戦いもひじょうに興味深い。クラーベセクレタはその舞台を最大目標に置き、現在はノーザンファーム天栄でリフレッシュを兼ねたトレーニングを行っている。ラブミーチャンはスプリント路線と牝馬路線のどちらに目を向けていくのだろうか。そして、中央からも新たな女王候補が名乗り出てくるに違いない。ラヴェリータからミラクルレジェンドへと続いてきた牝馬ダート路線は、今後どんな展開になっていくのだろうか。
岩田康誠騎手
最後に素晴らしいレースをしてくれて思い出になったし、無事に走ってくれてホッとしています。本当にお疲れ様でした。今度はお母さんとしていい仔を産んでもらって、その仔に乗ってみたいです。自分自身は地方競馬出身の騎手なので、これからも体の許す限り(全国の競馬場で)騎乗をお見せしたいです。
藤原英昭調教師
ますます成熟をしたかのような走りで有終の美を飾ってくれました。牡馬に挑戦させたこともありましたが、ここでは力が違いましたね。ゲートで滑らないようにというだけで、あとはミラクルと岩田騎手に任せました。弟(ローマンレジェンド)にもお姉さんを超えるためにももっと頑張ってもらわないと。

1周目スタンド前 戸崎騎手とエミーズパラダイスが先手を取る

取材・文:高橋華代子
写真:川村章子(いちかんぽ)、NAR