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2013年2月17日(日) JRA東京競馬場 ダート1600m

馬群から力強く抜け出し重賞連勝
3歳時の期待馬が骨折を乗り越え復権

 年明けに行われる川崎記念JpnIやフェブラリーステークスGIには、例年ドバイワールドカップを目指す馬がいるが、今年はそうした声が聞こえてこない。というのも昨年、スマートファルコン、トランセンド、フリオーソという、ダート中長距離のチャンピオンホースが相次いで引退したこともあるだろう。それでも今年のフェブラリーステークスに出走してきたダートGI/JpnI馬は、グレープブランデー、タイセイレジェンド、エスポワールシチー、ワンダーアキュート、テスタマッタと5頭。マイル戦らしく、短距離から中長距離まで、さまざまな距離での活躍馬が顔をそろえた。
 しかし今回もっとも注目を集めたのは、ダート初参戦のカレンブラックヒル。昨年はデビューから4連勝でNHKマイルカップGIを制し、古馬と初対戦となった毎日王冠GIIも勝って5連勝。天皇賞・秋GIでは5着に敗れたものの、4歳初戦としてこのダートGIに挑戦。ファンは単勝3.3倍の1番人気に支持した。
 注目のスタートは、心配されたイジゲンがやはり出遅れた。好ダッシュのタイセイレジェンドが逃げ、エスポワールシチーがピタリと2番手を追走。カレンブラックヒルはスタートこそ今ひとつだったが、すぐに3番手。しかし4コーナーを回るあたりでは手ごたえがあやしくなって後退した。
 直線を向いて、残り400メートルのあたりで先頭に立ったのがエスポワールシチーで、そのまま押し切るかにも思えた。しかしそこに迫ったのがグレープブランデーだった。道中は中団の内を追走。直線で馬群を捌いて外に持ち出されると、あっという間に馬群から抜け出し、エスポワールシチーを交わしきった。エスポワールシチーは3/4馬身差で2着。やはり馬群を縫うように抜けてきたワンダーアキュートがクビ差まで迫る3着に入り、GI/JpnI勝ちのある3頭が上位を占める結果となった。さらに、昨年前半に地方のダートグレードで4連勝と快進撃を見せたセイクリムズンが、今回は最低人気にもかかわらず3/4馬身差で4着に入り見せ場をつくった。
 まずは2着のエスポワールシチーに触れておきたい。昨年はかしわ記念JpnIとマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIを制し、ダートでは唯一GI/JpnIで2勝。明けて8歳になったここでも、まだまだ衰えのないことをアピールした。
 しぶとく伸びて3着に食い込んだワンダーアキュートは、昨年JBCクラシックでJpnI初制覇を果たした後も、ジャパンカップダートGI・2着、東京大賞典JpnI・3着、そして年明けの川崎記念JpnI・2着と、一線級と厳しい戦いを続けながらも常に好走。今回は勝ち馬よりうしろの位置取りで、直線では前が壁になってしまい、外に大きく進路を変えたところでテスタマッタを弾き飛ばすようにして抜け出てきた。これによって和田竜二騎手は制裁(騎乗停止2日間)となったが、うまく抜け出すところがあればきわどい勝負になったかもしれない。明けて7歳になったが、タフなレースを続けている。
 さて、勝ったグレープブランデーだが、3歳時にジャパンダートダービーJpnIを制し、その後が期待されたものの、調教中に右前蹄骨を骨折して戦線離脱。復帰した4歳時はオープン特別の阿蘇ステークスを勝ったのみで、秋のダート重賞戦線では好走するも勝ち負けには至らなかった。しかし年明けの東海ステークスGIIでは直線突き抜けて完勝。その勢いのまま臨んだ今回のフェブラリーステークスが、ジャパンダートダービー以来のGI/JpnI勝ちとなった。
浜中俊騎手
安田隆行調教師
浜中騎手は09年の菊花賞以来のGⅠ勝利となった。
プレゼンターは安藤勝己元騎手が務めた。
 鞍上は、昨年9月のシリウスステークスGIII(3着)以来となった浜中俊騎手。「もう少しうしろの位置どりになるのかなと思っていたんですが、馬自身がゲートをポンと飛び出してくれたし、思っていたよりも一列前のポジションにつけられて、ひじょうにいい形で運べました。直線は手ごたえもよくて、あとはスペースさえ見つければ抜けてこられる感触はありました。パドックや返し馬でも、前回騎乗したときとはぜんぜん違っていました」と、久々にコンビを組んで、馬が格段によくなっていることを感じ取っていたようだ。
 管理する安田隆行調教師によると、骨折によるブランクがあってその後に馬がたくましくなったという。「年が明けてから毛艶もぐんとよくなって、体調面もよくなっていたと思います。トランセンドが引退して、いいタイミングでその後釜ができました。距離的には、ジャパンカップダートのほうが走りやすいと思っています」と、早くも秋の大一番を見据えていた。近いところでは、ドバイのゴドルフィンマイルに登録があり、オーナーサイドと相談して遠征するかどうかを判断するとのこと。
 世代交代ともいえるダート中長距離路線に、中心的存在となりそうな1頭が現れた。

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(川村章子・森澤志津雄)