レースハイライト タイトル


2013年1月29日(火) 川崎競馬場
マイスターチャレンジ  
ヴィクトリーチャレンジ  

第1戦 マイスターチャレンジ

第2戦 ヴィクトリーチャレンジ

アタマ差が明暗分ける大接戦
先輩から後輩へ歴史を繋ぐ勝利

 「こんなにたくさんファンの皆さんが集まってくれるなんて、嬉しいことですよね」と、トークショーを終えて優しい笑顔で語った佐々木竹見元騎手。第11回を迎えた佐々木竹見カップジョッキーズクランプリには、この日を待ちわびていた大勢のファンが集まった。もちろん今年も場内は、佐々木竹見カラー一色。パドックで馬を引く厩務員は全員オリジナルジャンパーを着用し、川崎競馬名物の誘導馬も勝負服のコスプレで花を添えた。そして、紹介式が始まり出場騎手たちが集合すると、ウィナーズサークルを囲んだファンは大歓声。お目当ての騎手に声援を送り、それに騎手たちが応え、本番を前に場内は一体となっていた。
 第1戦のマイスターチャレンジは、単勝1.4倍の圧倒的な人気を集めた坂井英光騎手(大井)のハクユウシャンティが、大外から一気に先手を奪い、主導権を握った。しかし、「坂井騎手の馬を楽に行かせたくなかった」とアステカの真島大輔騎手(大井)が坂井騎手の直後にぴたりとつけマーク。3~4コーナーでは後続も差を詰め、追い出しのタイミングを計っていた。そして直線に入ると、各馬が坂井騎手をめがけ横一線となって猛追した。その中からひときわ鋭い脚で伸びてきたのが赤岡修次騎手(高知)のイフポッシブルで、粘る坂井騎手に内外離れて並んだところがゴールとなった。
 「交わされたと思った」坂井騎手と、「交わしたと思った」と赤岡騎手、この両者の対決は、ハナ差で坂井騎手に軍配が上がった。しかも7着までが約2馬身差以内という、まさに大接戦。スタンドのボルテージも上がり、その興奮はメインレースへと続いた。
 第2戦のヴィクトリーチャレンジは、スタートからやや激しい先行争いの末、真島騎手のダルタニヤンがペース掴んだ。川崎2100メートルというコースは、スローペースになりやすく各馬が団子状態でスタンド前を過ぎるケースが多いのだが、今回はかなり縦長の隊列でレースが進み、後方の馬がどこで仕かけるのかに注目が集まった。
 向正面半ばあたりで動きしたのは、中団に待機していた岡部誠騎手(愛知)とマイネジェシカ。連れて山崎誠士騎手(川崎)とコウエイクレストも進出を開始した。一気にピッチが上がると、先行集団と入れ替わるように、後続の馬たちが押し寄せた。そして直線は、10頭ほどがコースいっぱいに広がり、見応えたっぷりの追い比べが繰り広げられた。その混戦から先に抜け出したのは山崎騎手で、懸命に押し切ろうとすることころに、外から迫ってきたのが岡部騎手。第1戦同様に2頭が並んでゴールインしたが、山崎騎手がアタマ差で凌ぎきった。そして、このアタマ差が優勝を左右する大きな着差となったのだった。
 総合優勝は、5着、1着で72ポイントを獲得した山崎誠士騎手で、4年連続で南関東所属騎手が頂点に立った。2位は、4着、2着で65ポイントの岡部誠騎手。3位は1着、12着で54ポイントの坂井英光騎手となった。
 悔しい表情を見せたのは岡部騎手だ。第2戦で山崎騎手を捉えていれば、悲願の優勝を手にすることができたのだ。これでシリーズ4回目の2位という結果に、「このアタマ差は悔しすぎますよ」と嘆いた。それでも「来年もここに来るための結果ということでしょう。2013年もがんばりますよ」と今年の活躍と来年のリベンジを誓った。
 初出場で優勝を飾った山崎誠士騎手は、今年の出場騎手の中では最年少の28歳、成長著しい川崎生え抜きの騎手だ。毎年勝ち鞍を伸ばし、2012年は初めて年間100勝を超える109勝をマークし、南関東リーディングトップ10入りも果たした。普段からファンサービスにも積極的で、表彰式の時にはファンからたくさんの声援を受けていた。また、厩舎関係者からもたくさんの祝福の声をかけられていた姿は、周りから愛されているという人柄が伺えた。山崎騎手は、間違いなくこれからの川崎競馬を担っていく騎手である。そんな川崎所属の後輩騎手の優勝は、佐々木竹見氏にとっても特別に違いない。「おめでとう!」と力強く声をかけ、最後に山崎騎手と固く握手を交わした。佐々木竹見カップジョッキーズグランプリは、先輩から後輩へ歴史を繋いでいくレースでもあるのだろう。

取材・文:秋田奈津子
写真:川村章子(いちかんぽ)、神奈川県川崎競馬組合、NAR

総合優勝
山崎誠士騎手
(川崎)
佐々木竹見カップに出たいと思っていましたが、なかなか成績が伴わなくて。今回やっと出場できて、優勝もできて、素直に嬉しいです。第2戦は馬が気分良く走っていたので強気に競馬をしてみようと思い、早めに仕かけました。それが功を奏しましたね。賞金はお世話になっている方々に還元したいと思います。
総合2位
岡部誠騎手
(愛知)
2戦とも良いレースはできたと思います。また2位ですが、まだまだ優勝は早いのかなと思えばいいですし、こうやって悔しい思いができるってことは、またここに来ようということだし。でも、逃がした魚は大きいですよね(笑)。アタマ差ですもんね。でもそれも競馬かなと思いますし、またがんばります。
総合3位
坂井英光騎手
(大井)
第1戦は迷ったら行った方がいいと思ったし、思いきってハナを奪いました。かなり厳しい展開でしたけどがんばってくれましたね。第2戦がメンバー的に辛かったので、この1勝は大きかったですね。結果は総合3位でしたが、上出来じゃないかな(笑)。毎年、選ばれるようにがんばります。