レースハイライト タイトル
dirt
2011年8月15日(月) 盛岡競馬場 1200m

ライバルをぴたりとマーク
思いどおりの展開で圧勝

 中央勢5頭はダートグレード勝ち馬がいないという、やや手薄なメンバー。それゆえ、今年初めて行われた地方競馬のスーパースプリントシリーズで、トライアルの名古屋でら馬スプリントから、ファイナルの習志野きらっとスプリントを連勝して臨むラブミーチャンに期待と注目が集まった。
 そうした期待を反映して、ラブミーチャンの単勝はずっと1倍台で推移していたが、最終的には中央のドスライスが1.9倍で1番人気。前走、ダートのオープン特別(NST賞)で強い勝ち方をしたのが評価されてのもの。ラブミーチャンは2.2倍で2番人気。ただ馬連単では、ラブミーチャン1着の馬券のほうがわずかに売れていた。
 今回も互角のスタートを切ったラブミーチャンは、持ち前のダッシュ力でハナに立った。好スタートの笠松・エイシンタイガーが外に併走し、2頭の間でドスライスが差なく続いた。
 3コーナーあたりで前の3頭が競り合うように併走すると、4番手以下はやや離れた。圧倒的なスピードでダートの2歳チャンピオンとなったラブミーチャン。前走新潟のダート1200メートルを1分9秒8という好タイムで快勝しているドスライス。そして中央時代に芝の短距離でオープン勝ちのあるエイシンタイガー。さすがに3頭のスピード能力は他馬より一枚も二枚も上手というレース展開となった。
 内枠のラブミーチャンが終始わずかにリードする形で、4コーナーまで楽な手ごたえに見えたが、直線を向いてドスライスが交わしにかかると、ラブミーチャンの濱口楠彦騎手の手が突然、忙しく動き出した。エイシンタイガーはここで後退。先頭に立ったドスライスは余裕十分の手ごたえで追い出されると、ラブミーチャンを置き去りにして圧勝。中団から伸びてきたグランドラッチがラブミーチャンを交わし、勝ち馬から6馬身差の2着に入った。
 ラブミーチャンは2馬身半差で3着。スタート直後から2頭に競りかけられる展開はさすがに厳しかった。「いいスタートが切れたので、他馬を見ながら、ペースが遅くなってくれればいいなと思っていたんだけど、3コーナーまでが速かった。直線に入ったところで手ごたえがなくなりました」と濱口騎手が振り返った。
 対するドスライスは、内枠のラブミーチャンが逃げるだろうからそれを2番手で追いかける展開で、思い描いた通りの競馬になったと、柴田善臣騎手、森秀行調教師が口を揃えた。
 ドスライスはスタートに難があり、さらに揉まれると走る気をなくすということがたびたびあったそうで、たしかにそれはこれまでの成績にも表れている。しかし前走、そして今回と、この馬の能力を存分に発揮できる理想的な展開となっての連勝となった。このあとは、東京盃JpnU、そしてJBCスプリントJpnTと、昨年サマーウインドが駆け上がったダート短距離の王道を目標にするという。ただ賞金がまだ少ないので、調子次第ではその前にオーバルスプリント(9月8日・浦和)も使うかもしれないとのこと。
 さて、この日の盛岡競馬場ではさまざまなイベントが行われた。メインのクラスターカップJpnVとともに注目されたのは、『東日本大震災復興祈念・JRA vs 岩手』。JRAのジョッキー7名と、岩手のトップジョッキー7名が2レースのポイント制で、チームの優勝と個人の優勝を争うというもの。チームJRAのキャプテンを務めた福永祐一騎手が2戦ともに2着で個人優勝、チームのポイントでもJRAの勝利となった。
 JRAの騎手たちは、この日のためにオリジナルの勝負服をデザイン。レース終了後にはその勝負服にサインを入れ、ゼッケンなどとともにチャリティーオークションが行われた。また、昨年大井のファンファーレを演奏した東京ブラススタイルと、津波の被災地である大槌町の中・高校生のブラスバンドが合同でファンファーレやライブ演奏を行うなど、震災の被災地を元気づけるイベントでも、盛岡競馬場は例年にない盛り上がりとなった。
柴田善臣騎手
前走も力強く走ってくれたんで、あのくらい走れば勝てるんじゃないかという気持ちで臨みました。3コーナーあたりから(ラブミーチャンに)プレッシャーをかけるような走りで、4コーナーではこっちのほうが手ごたえがよかったので、余裕を持って自分のペースで走っていました。馬に成長が見えて、落ち着いて競馬に臨めるようになったのが大きいですね。
森秀行調教師
ハイペースで行って、うしろの馬に脚を使わせて押し切るという、理想的なパターンになりました。今まではゲートが悪くてなかなかうまくいかなかったんですよね。もともと素質がある馬なので、ゲートが普通に出られるようになったのが大きいですね。

JRAvs岩手競馬の騎手対抗戦に、
オリジナル騎手服で臨んだ"TEAM JRA"の面々
東京ブラススタイルと大槌町の生徒たちによるライブ

取材・文:斎藤修
写真:国分智(いちかんぽ)、NAR