門別の直線で得意の末脚爆発
並ぶ間もなく交わして6馬身
ホッカイドウ競馬では最高格付けとなるJpnUのブリーダーズゴールドカップだが、今年の中央勢はダートグレード勝ち馬がロールオブザダイスのみというメンバー。そのロールオブザダイスも1年以上いいところがないという近況なら、地方勢にチャンスも……という期待もあった。しかし結果は、5頭出走した中央勢が掲示板を独占。近走、ダートグレードやオープン特別で好成績を残しているエーシンモアオバーとメイショウタメトモの馬連複が1.5倍と人気が集中したが、勝ったのは、やや離れた3番人気のシビルウォーだった。
エーシンモアオバーが楽にハナを奪い、メイショウタメトモが続いた。中央勢が先行する、ほぼ予想された展開。3番手を追走していたピイラニハイウェイが3コーナー過ぎで徐々に離され、やはり人気2頭の一騎打ち、さあ勝つのはどちらか、と見ていたところ、外から一気にまくってくる馬がいた。中央勢では唯一、中団よりうしろを追走していたシビルウォーだった。
直線を向いても2頭が競り合っていたが、外から一気に伸びたシビルウォーが並ぶ間もなく交わし去り、あっという間につけた差が6馬身。直線で行き脚の鈍ったエーシンモアオバーを交わし、メイショウタメトモが2着に入った。
シビルウォーの上り3ハロンは36秒9。2番目に速かったメイショウタメトモが39秒4だから、その差は2秒5。他馬が止まって見えたとは、まさにこのこと。
シビルウォーの前回の勝ち星は、ちょうど1年前、昨年8月の関越ステークス(新潟)だった。以降は、馬群の後方追走から、常にメンバー中上位の上りタイムを記録しながら、掲示板に乗れるかどうかという歯がゆいレースを続けていた。しかし今回は、「いつもギリギリ届くかどうかという感じの競馬が、抜けたあと、さらに離しましたからね」と、管理する戸田博文調教師も驚くほどの変わり身を見せた。
勝因として戸田調教師は、追い込みがきく馬場だったこと、前が競り合ってくれたこと、そしてこの馬の癖をよく知っている吉田豊騎手が上手に乗ってくれたことなどを挙げた。そうした脚質だけに、ダートの2000メートルかそれ以上、距離は長ければ長いほどいいとのことで、今後もそうした路線を選んで使っていくようだ。
一方、地方最先着の6着は、地元期待のクラキンコ。これまで門別2000メートルは3度経験し、もっとも速いタイムが5着に敗れた昨年の道営記念での2分7秒3で、昨年の北海優駿、今年の星雲賞をそれぞれ勝った時はともに2分10秒台。そして今回の走破タイムが2分8秒3だけに、自身の時計ではきっちり走っていることになる。
中央勢はダートグレード勝ち馬が1頭のみというメンバーだったとはいえ、ダートのオープンクラスは相当に層が厚くなっている。その差をあらためて感じさせられる結果でもあった。
吉田豊騎手
最後の直線、いつもの末脚で伸びてくれたんで、気持ちよかったです。追い込み一辺倒の馬なので、あまり前と離されないようにと思って、ロスなく乗れたんで、最後の直線につながったと思います。やっと重賞を勝たせることができたので、それがうれしいです。
戸田博文調教師
流れが向きそうで向かなかったり、ちょっと脚質が難しい馬なんですが、今回はこの馬向きの展開になってくれました。状態はずっとよかったんですが、やはり展開ですね。こういうレースをしたことで、馬が変わってくることもあるんで、これがいいきっかけになってくれればと思います。
取材・文:斎藤修
写真:中地広大(いちかんぽ)、NAR
写真:中地広大(いちかんぽ)、NAR