レースハイライト タイトル
dirt
2011年7月13日(水) 大井競馬場 2000m

直線抜け出し後続を完封
万全の状態でタイトル奪取

 最大の注目は、クラーベセクレタによる、ロジータ以来22年ぶりの牝馬による南関東三冠制覇なるかだったが、ダービーウイークの決勝という意味でも地方勢は楽しみなメンバーが揃った。東京ダービーを制したクラーベセクレタはもちろんのこと、2着のヴェガスに、3着のキスミープリンス。岩手ダービーダイヤモンドカップを圧勝したベストマイヒーローは、岩手のダートでは無敵の存在。そして東海ダービーでハナ差の接戦を演じたアムロとミサキティンバー。
 一方の中央勢は、ユニコーンステークスGIIIの勝ち馬、牝馬のアイアムアクトレスこそ距離適性を考慮して1週前のスパーキングレディーカップJpnIIIに回ったが、2着のグレープブランデーに、3着のボレアス。そして兵庫チャンピオンシップJpnIIを圧勝したエーシンブラン。
 3歳ダートの頂点を決するにふさわしいメンバーが顔を揃えたと言っていいだろう。
 人気面でも大接戦で、クラーベセクレタとグレープブランデーが最終的に2.3倍の同オッズ。票数でわずかにグレープブランデーが上回り1番人気となった。連勝馬券では明らかにグレープブランデーのほうが中心となっていたのだが、馬連単の人気2頭の組合せに限っては、クラーベセクレタ1着のほうが1番人気。三冠のかかったクラーベセクレタの応援馬券を買うファンが多かったのだろう。
 レースは激しいものとなった。15番のエーシンブランが内に切れ込むようにハナを奪い、16番のピュアオパールがその直後、岩手ダービーを勝ったあと「ジャパンダートダービーでは2〜3番手に行ければ」と菅原勲騎手が話していたベストマイヒーローもそのとおり、直後の3番手を追走した。ただスタートして2ハロン目に10秒8というラップを刻んだこの前3頭はさすがにオーバーペースで、結果的に3頭とも10着以下に沈むことになった。
 3頭からやや離れた4番手を追走したのがグレープブランデーで、これをマークするように直後にクラーベセクレタ。タガノロックオン、ボレアスなど中央の有力馬が続いた。
 3〜4コーナーで外から絶好の手ごたえで進出したのがグレープブランデーで、直線を向いて先頭へ。クラーベセクレタも離れず食い下がった。内からボレアスが迫り、外からはタガノロックオンが差を詰めた。
 ゴール前は、単勝オッズ一桁台のこの4頭の競り合いとなった。しかしグレープブランデーは他馬の追撃を許さず、ボレアスをアタマ差で振り切って勝利。クラーベセクレタは惜しくも3/4馬身差で3着。タガノロックオンが半馬身差で4着に入った。
 人気上位馬による接戦での決着となったが、グレープブランデーは着差以上の完勝。「併せる形になるとまだまだ伸びてくれそうだったので、乗っているほうはそれほどヒヤヒヤしなかったです」と横山典弘騎手が語ったほど。前走、ユニコーンステークスでの2着敗戦は、輸送での馬体減に加え、そもそもこの馬には距離不足だったこと、さらにスタートで出負けしたことなどで厳しい競馬となった。今回は栗東の厩舎を出る前に太目につくり、輸送を経て前回からプラス10キロの516キロは思惑どおり。そしてハイペースで飛ばした3頭からやや離れての4番手追走と、すべて理想どおりに運んでの戴冠となった。安田隆行調教師は「掛かったりしないし、タフな馬なので、距離は3000メートルでも1万メートルでもあればおもしろいんですけど」と笑いを誘った。
 残念ながら、惜しくも三冠を逃したクラーベセクレタだが、戸崎圭太騎手は意外にもさばさばしていた。「ペースが速くなると思っていたので、じっくりマークして、展開的にはすんなり行けたと思います。直線も伸びてがんばってくれました。もう少しパワーをつけて巻き返したい」と。
 クラーベセクレタの走破タイムは、勝ち馬からコンマ1秒差の2分5秒0。東京ダービーから1秒5もタイムを縮めたことでも力を出し切ったことがわかる。地方勢で同馬に続く着順だったのがキスミープリンスの5着で、4着のタガノロックオンからは2馬身半離された。クラーベセクレタが南関東の中ではなおも抜けた存在であることを示す結果で、負けてなお強しという印象を残した。
横山典弘騎手
前回は輸送で体が減ったみたいだったので、今回プラス10キロは元に戻って、パドックでは落ち着きもありました。前回はたまたまスタートがよくなかったんですが、本来ならこういう競馬がいちばん合っているタイプの馬なので、今日はスタートも決められたので、自信満々で乗れました。
安田隆行調教師
全身で喜びを感じています。直線では一瞬ひやっとしましたが、脚色が一緒だったんで、しのげるなと思いました。このあとはリフレッシュ放牧に出して、使うところを考えていきたいと思います。最終的にはジャパンカップダートで(同厩の)トランセンドと対戦することになると思います。

逃げるエーシンブランに迫るグレープブランデー
(左から2頭目)
惜しくも三冠を逃したクラーベセクレタ

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(宮原政典、森澤志津雄)、NAR