圧倒的人気に応える横綱相撲
今後の選択肢が広がる勝利
3連休初日の開催となった今年のかきつばた記念JpnV。朝10時の段階でスタンド側の駐車場は満車状態となり、パドックも第1レースから多くのファンに囲まれた。
その多くの人のお目当ては、メインレースのかきつばた記念。今年は別定重量が次のとおり変更となった。
・基礎重量54kg(牝馬2kg減)
・2歳以外のGT・JpnT優勝馬は5kg増、GU・JpnU優勝馬は3kg増、GV・JpnV優勝馬は1kg増
・グレードレースを3勝している馬はさらに1kg増。それ以上は2勝ごとに1kg増(ただし上限は牡馬60kg、牝馬58kg)
つまり、当初かきつばた記念に登録していたスーニ(JpnT優勝、3歳以降のグレードレース通算3勝)は、60kgが負担重量となった(昨年のルールなら59kg)。
その変更は、前走の東京スプリントJpnVから中12日となるセレスハント、ミリオンディスクを呼び込むことにつながったかもしれない。また、昨秋以降に重賞を2勝しているセイクリムズンにとっても、この一戦が格好の標的として映ったことだろう。
そしてもう1頭、注目馬が登場した。それは笠松のラブミーチャン。昨年12月の兵庫ゴールドトロフィーJpnVのときも発症していた裂蹄が冬の間に悪化してしまい、今回がおよそ4カ月ぶりの実戦である。
「ツメからは血が出ていましたし、馬房から3週間外に出さないということもありました。裂蹄そのものは外傷性なので治れば再発しないと思いますが、それでも今回はねえ……。パドックではみんなが応援してくれていましたし、見せ場くらいあればとは思っているんですが」と、柳江仁調教師。4番人気のラブミーチャンの単勝オッズは19.5倍と、3番人気のミリオンディスク(9.1倍)の2倍程度なのに、断然人気のセイクリムズンからの馬連オッズで比較してみると、ミリオンディスクが4.3倍でラブミーチャンが17.8倍。ファン心理を表した数字と考えてもいいだろう。
しかし、レースを盛り上げたのはラブミーチャンだった。
ゲートが開いた瞬間に先手を取り、追いかけるJRA勢を引っ張る勢いで直線入口でも先頭。その姿に場内のボルテージは一気に上がった。聞こえてくる「頑張れ!」の声。しかし残り100メートルでセイクリムズンが先頭に替わって1位で入線。ラブミーチャンは直線で差を詰めてきたミリオンディスクと並んでゴールを駆け抜けた。
その2着争いのスローVTRは、すぐに大型ビジョンで再生された。ほどなく場内は「よし」「あぁ〜」など、悲喜こもごもの大きな声に包まれることとなった。
それでもラブミーチャンの鞍上、濱口楠彦騎手は検量室に戻ってくるなり驚きの表情で、「いやあ、たいした馬だわ」と一言。鞍を外すときには「勝ってまうかと思ったくらいやわ」と振り返った。
柳江調教師も笑顔で「今日はこれで満足です」。地方競馬ファンにとっても、次以降が楽しみになるラブミーチャンの快走だったといえるだろう。
幸英明騎手
どんどん力をつけて、成長してきていますね。地方の馬場は初めてでしたが、楽にいい位置につけられて、コーナーワークも上手でした。4コーナーでの手応えも十分で、ラブミーチャンをかわせると思いました。小回りの競馬場も問題ないでしょう。フェブラリーステークスは負けてしまいましたが、個人的にはマイルでも問題ないと思っています。
服部利之調教師
前走と同じ体重(デビュー以来の最高体重)でしたが、このくらいがちょうどいいと思いますし、完成してきたなという感じになりましたね。小回りコースに対する不安は多少ありましたが、結果が出てよかったです。この馬は「大丈夫かな」と心配になるくらい、おとなしいときのほうが好走するタイプ。今日はそういうパドックでした。このあとは北海道に放牧に出す予定です。
スタート後 1周目
直線の攻防
さて、勝利したセイクリムズン。パドックでは黒光りして、そして胸が広くて腰が締まった体がひときわ輝きを放っていた。
「もっともっと大きい舞台を狙える馬だと思います」と、幸英明騎手。同馬はこれでちょっと早い夏休みに入るとのこと。秋シーズンにはさらに凄みを増した体をファンの前に披露してくれることだろう。
取材・文:浅野靖典
写真:いちかんぽ(川村章子、森澤志津雄)
写真:いちかんぽ(川村章子、森澤志津雄)