レースハイライト タイトル
dirt
2011年5月2日(月) 船橋競馬場 2400m

その強さは想像以上
持ったまま8馬身差圧勝

 東日本大震災の影響を受け、馬場の使用ができなくなるなどの被害があった船橋競馬場。本馬場の修復工事は1週間ほどで完成したが、南関東4競馬場の中で唯一、2開催も中止になり、いろいろな意味で一番被害が大きかったとも言える。
 千葉県騎手会の佐藤裕太会長は、「船橋競馬場には多くのファンの方々がおられます。騎手も関係者も微力ですが、ファンの皆さんとともに復興支援競馬として被災者の方々を応援し続けたいです」と、ここでは全文を紹介できないのがとても残念なのだが、魂のこもったファンへの挨拶が胸を打った。
 当初は3月16日に組まれていたダイオライト記念JpnUが延期となったため、そもそもは出走予定のなかったスマートファルコンがここからの始動となった。メンバー構成から言っても、スマートファルコンがどんな勝ち方をするのかと言っても過言ではない一戦。さらには5歳以上が全馬56キロの定量戦だったため、単勝元返しの断然の1番人気に支持された。
 スマートファルコンがスーッと先頭に立つと、そのまま影をも踏ませぬ一人旅。大きく縦長の展開になりながら、2周目の向正面に入ったところでは、「初距離なのでいったんペースを落とそうと思いました」(武豊騎手)。後続勢を少し引きつけたが、3コーナー手前で加速するとその差はまたみるみる広がり、場内のファンも驚嘆するばかりで異様な空気に包まれた。最後も持ったままで2着のカキツバタロイヤルに8馬身差。
 『スマートファルコン強すぎる』。今年のダイオライト記念JpnUはその一言に尽きるだろう。
 この勝利でダートグレードレース14勝目とし、中央所属馬としては新記録となった。この勢いは止まるところを知らず、どこまで勝ち星を量産し続けるのだろうか。上半期の最大目標は帝王賞JpnTに置いていて、一戦挟むか直行するかはこれから検討するそうだ。
 地方所属馬にとって明るい話題は、カキツバタロイヤルが2着に入ったことだろう。笠松の重賞ウイナーとして南関東に転厩後もコツコツと力をつけていき、昨年のサンタアニタトロフィーでは待望の南関東重賞初勝利を飾っている。
 前走の金盃(6着)前に胃腸の調子が思わしくないことで順調さを欠いたのだが、それでも優勝したスーパーパワーから0秒5差だったのは、カキツバタロイヤルの力を改めて証明し、厩舎サイドも自信になったという。
 この中間は順調に調整を進め、前走よりもグンとアップさせていた。「走りますねぇ。チャンスは回ってくると思います」と森泰斗騎手。
武豊騎手
今年緒戦だし楽しみにしていましたが、レース間隔も空いていたし、初めての距離ということもあって全く心配をしていないわけではありませんでした。でも、強かったですね。ハナを切れれば折り合いもついて自分のペースでのびのび走ってくれます。ある程度のペースで行けた方がこの馬には合うと思いますね。
小崎憲調教師
前走(東京大賞典優勝)後にかなり反動がきました。川崎記念やドバイワールドカップも考えていたんですが、そういうレベルじゃないくらいガタッときたので大事を取りました。当初はかしわ記念のつもりでしたが、ダイオライト記念が延期になったので、帝王賞を考えるとこのレースのほうを選択しました。

 馬体重は420〜30キロほどで牡馬の中ではかなり小柄なのだが、最近は数字以上に大きく見せ、レースに行けば抜群のセンスを武器に、相手なりに走れる安定さも持ち合わせている。強い相手と戦っていきながら、更なる飛躍をして欲しい南関東期待の1頭だ。
 まずこの後は5月25日の大井記念に向かうと思われるが、4着のスーパーパワーともに有力候補に挙げられるだろう。
取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(国分智、川村章子)