レースハイライト タイトル
dirt
2011年4月20日(水) 大井競馬場 1200m

7着までコンマ5秒差の混戦
1200mの舞台で新境地を切り開く

 黒船賞JpnVが震災の影響で取止めとなり、ダートグレードの短距離路線はここから仕切り直しとなった感のある一戦。それにしてもここ1〜2年のこの路線は、中央勢だけでなく地方勢も、特に南関東勢の充実ぶりが目立っている。
 単勝1番人気に支持されたのは、これが地方初遠征となるティアップワイルドで、2番人気が大井のヤサカファインと、ダートグレード未勝利の馬が人気の中心。実績馬では、昨年のJBCスプリントJpnTを圧勝したサマーウインドこそ登録のみで回避したが、過去の同レースの覇者、フジノウェーブ、スーニがそれぞれ5、6番人気の支持でしかなかったことを見ても、新興勢力の台頭をうかがわせた。
 勝ったのは、8番人気の伏兵セレスハント。内の4番手あたりを追走し、直線では馬群をうまくさばいてゴール前で抜け出した。ダート1400メートルを中心に使われてきたが、ダートでのこの距離は今回が初めて。重賞初制覇となった昨年の佐賀・サマーチャンピオンJpnVのあとは3着が最高という成績であればこの人気も仕方がなかったか。福永祐一騎手にしても、「1400メートルがベストの馬だと思っていたんですけど、最近は長めの距離も対応してくれて、今回は一気の距離短縮だったので、どれぐらい対応してくれるかなという思いはありました」と手探りの部分はあったようだ。それでも上り3ハロン36秒2の末脚で一瞬にして馬群から抜け出したレースぶりは、今後この距離での活躍を期待させるものだった。
 2着には1番人気のティアップワイルドが入った。セレスハントと同じ36秒2の上りでの半馬身差は、5番手という位置取りに加え、15番枠からのスタートで外から追い込むというコース取りの差だったかもしれない。
 12番人気のコアレスピューマがアタマ差3着に粘ったことには驚かされた。絶好のスタートから2番手に控え、ゴール前で粘りを見せた。昨年初頭に中央から船橋に転入して以降、1200メートル以下のみを使われ堅実な成績で着実にクラスを上げてきていた。7歳だがこの路線の新興勢力として注目の1頭になりそうだ。
 予想通りハナを切ったジーエスライカーも粘りを見せて4着。そして2番人気と期待されたヤサカファインは5着だったが、中団よりうしろを追走して上がり3ハロン36秒5と、この馬の持ち味は発揮している。上位4着までが、道中5番手以内の位置取りだったことを考えれば、今回はヤサカファインにとっては厳しい展開だったといえそうだ。
福永祐一騎手
思っていたよりも楽にいいポジションがとれました。スムーズに直線もさばくことができたし、あとはなんとか踏ん張ってくれという思いで追っていました。強い馬たちを相手によく頑張ってくれたと思います。これで賞金も加算できたし、もともと大きな舞台でやりたいと思っていた馬なので、短距離のダート界を背負って立つような馬になってほしいと思います。
松永幹夫調教師
初めての1200メートルの競馬でしたが、上手に走っていて、適性はアリと思いました。状態は、前走、前々走からずっと安定していて、距離が合わなかったりして結果は出なかったんですが、今日はよく走ってくれました。5月3日のかきつばた記念に登録してますので、それを目標に行こうと思います。

 6着ナイキマドリード、7着トーホウドルチェまでが勝ち馬からコンマ5秒差以内。ペースや展開ひとつで着順は大きく変わってきそうで、上位勢は大混戦の決着だった。
 今年、この大井1200メートルが舞台で争われるJBCスプリントJpnTはまだ半年以上も先だが、その頂点に向けたダート短距離路線の争いは、ますます熱いものとなりそうだ。
取材・文:斎藤修
写真:NAR、宮原政典(いちかんぽ)