内をすくって混戦から抜け出す
チーム佐賀で掴んだ重賞初制覇
例年2月11日の建国記念日に行われている佐賀記念JpnVだが、今年はその祝日が週末と重なったため平日の開催。この日の鳥栖周辺の最高気温は、日付が変わった直後に記録した3度で、雪の舞う寒い1日。第8レースのあたりで一旦雪は止んだが、佐賀記念のスタート前には再び降りだした。
注目されたのは、もちろん兵庫のオオエライジン。NARグランプリ2011の3歳最優秀牡馬に選出され、4歳になっての初戦だ。対するJRA勢には重賞勝ちの実績馬が2頭のみ。それも3年以上勝ち星がないマイネルアワグラスに、重賞勝ちは芝のみのキングトップガンというメンバーだけに、オオエライジンが1番人気となったのも当然だろう。
逃げたのは、過去にこの佐賀記念を5勝している武豊騎手のタカオノボル。互角のスタートを切ったオオエライジンは2番手につけた。向正面に入ったところでオオエライジンがタカオノボルに並びかけた。早めに先頭に立つと遊ぶ癖があるため一瞬ヒヤッとしたが、武騎手が並ばせまいと再び差を広げ、そこから徐々にペースアップ。オオエライジンの木村健騎手は3コーナーを回るギリギリまで追い出しを我慢した。前のタカオノボルもバテない。これはオオエライジンには絶好の展開に思えた。
直線を向いて、やはりJRA勢とオオエライジンとの争いとなった。しかしオオエライジンはなかなか突き抜けない。そこに不意打ちのように内をすくって抜け出したのがピイラニハイウェイで、2日前の雨の影響が残る不良馬場だったこともあり、コースレコードでの重賞初制覇となった。タカオノボルが1馬身差で2着に粘り、オオエライジンは外からマイネルアワグラス、メダリアビートに交わされ、残念ながら5着に終わった。
勝ったピイラニハイウェイは、これまでダートグレードでは4着が最高という成績で、JRA勢ではもっとも人気薄の6番人気。鞍上は、父が佐賀の調教師ゆえ地元ともいえる川田将雅騎手。佐賀のコースはラチ沿いの砂が深いため内が空くのは常だが、「今日に関して言えば、思っていたより(内が)重くはない印象だったので、外に出せる並びではなかったこともあって、内に進路をとりました」という川田騎手の好騎乗が勝利につながった。そして調教師代理として表彰台に立った後藤孝鎮調教助手は、佐賀の元ジョッキー。“チーム佐賀”がもたらした勝利だったといえよう。
一方、オオエライジンは5着に敗れたとはいえ、勝ち馬からの着差は2馬身弱。「前回が1400メートルだったこともあって掛かりぎみでした。上り1ハロンが中央馬との違いですね」と木村健騎手。「距離は対処できるので、最後の1ハロンですね。馬を作り直して、また挑戦します」と橋本忠男調教師。巻き返しに期待したい。
調教助手