最後の重賞も5馬身差圧勝
荒尾競馬83年の歴史に幕
当初は例年通り12月31日に予定されていた肥後の国グランプリだが、9月上旬に荒尾競馬は年内廃止を正式表明。最終開催日が12月23日とされた時点では実施されるかどうか流動的だったが、荒尾競馬83年の歴史の最後を飾る重賞として23日に繰り上げての実施となった。
荒尾の古馬オープン戦線は、9月にJRAから転入したテイエムゲンキボが転入3戦目の九州記念(10月14日)を制覇し、タニノウィンザー(2着)の同レース3連覇を阻止。それ以降、肥後の国グランプリまで両馬は同じレースを走り、対戦成績はテイエムゲンキボが優勢ながら、九州記念と同じ2000メートルの舞台で再びテイエムゲンキボが勝利するのか、あるいはタニノウィンザーが逆転して肥後の国グランプリ4連覇を達成するのかが最大の焦点となった。さらには下級条件から9連勝でA級戦を制したスターペスレイコの重賞挑戦もあり、荒尾最後の重賞という点を抜きにしても興味深い一戦となった。
当初の雪予報に反して抜けるような晴天に恵まれ、来場者数は約9000人と、この日限りとはいえかつての賑わいを取り戻した荒尾競馬場。ファンファーレが鳴ると拍手で迎えられた。
スタートで好発進のスターペスレイコが後続を離しての逃げ。6頭ほどの2番手集団の先頭がテイエムゲンキボで、その集団の後方にタニノウィンザーが付けてスタンド前を通過。2コーナーでテイエムゲンキボがスターペスレイコを追って単独で上昇を開始すると、タニノウィンザーも向正面から前を追った。しかし4コーナーで先頭を奪ったテイエムゲンキボが直線抜け出して独走となり、九州記念と同様にタニノウィンザーに5馬身差を付けての勝利。荒尾最後の重賞勝ち馬の座に輝いた。
「このグランプリを目標にして、前の(開催の)レースを休んで2回追い切りを掛けました」と平山良一調教師。万全の体制で臨み、完全に力で圧倒しての勝利といえるだろう。
一方のタニノウィンザーは荒尾2000メートルの重賞を7勝していたが、今年は荒尾での重賞3戦、いずれも2着と重賞未勝利に終わっった。「展開が向かなかったこともありますが、正直全盛期よりは力が落ちてきているところもありますので、うまく立ち回れても5馬身差がいくらか縮まったかどうかでしょう」と、頼本盛行調教師は完敗を認めながらも、「2月の開催から佐賀で出走できるので、(短距離戦の多い荒尾に比べて)適距離のレースも増えますし期待しています」と、立て直しへの自信を見せていた。
荒尾の廃止に伴い平山調教師は勇退するが、テイエムゲンキボはJRAへ復帰の予定。タニノウィンザーは頼本盛行調教師とともに佐賀へ移籍、鞍上の吉留孝司騎手は浦和へ移籍する。今後の進路はさまざまで、新天地での活躍を願わずにはいられないが、まずはこれまで荒尾競馬を盛り上げ、最後まで素晴らしいレースを見せていただいたことに感謝の念は尽きない。
山口勲騎手
前走の1900メートル戦でかかるところを見せていたので、今日は折り合いに専念するだけでした。タニノウィンザーが迫ってくるのはわかっていましたが、前走も交わされなかったので大丈夫だと思っていました。今日は楽勝でしたね。
平山良一調教師
山口騎手にいい乗り方をしてもらいましたが、あれだけ離すとは思いませんでした。追いきりも万全にできて、馬の状態は最高のデキでした。最後の重賞を勝てたということで、うれしく思っています。
取材・文:上妻輝行
写真:桂伸也(いちかんぽ)
写真:桂伸也(いちかんぽ)