レースハイライト タイトル

2011年12月1日 (木)  荒尾競馬場 1500m
 

プレッシャーを跳ねのけ堂々逃げ切り
沖縄出身の宮平騎手が重賞初制覇

 たんぽぽ賞は3歳馬による九州産馬限定競走として、かつてJRA小倉の条件特別として行われていた時代や、97年の地方競馬移設による重賞化後も一貫して3歳2月に施行されていた。今年は9月に荒尾競馬の年内廃止が決定。当初予定の来年2月9日の実施が不可能となったため、他場での代替開催の可能性を含め、実施の可否が注目されていたが、荒尾競馬場で12月1日に繰り上げて開催され、初の2歳戦として施行されることとなった。地方移設後は2つのトライアル競走を経て本戦に挑む競走体系が組まれていたが、それも日程の都合でトライアル競走は11月10日のミヤマキリシマ特別1レースのみの実施と、異例づくめのたんぽぽ賞となった。
 JRAからは6頭が出走。3歳戦として行われていた年は、JRA所属馬も荒尾でのトライアルを使ってきたきた馬が多数出走し、荒尾への適性もある程度は見えていたが、今年はミヤマキリシマ特別を使ってたんぽぽ賞へ出走してきたのは同レースの勝ち馬ミスコクラ1頭のみ。夏のJRA小倉開催からの休養明け初戦の馬も2頭おり、例年以上にJRA所属馬の力関係の把握が難解な一戦となった。
 スタートから一気に先頭を奪ったテイエムハエンカゼには宮平鷹志騎手。外から迫って2番手に付けたグランデセイフウには村島俊策騎手と、JRA所属馬に地元荒尾の平山良一厩舎所属の騎手が騎乗する2頭が先行争いを見せ、そこからやや離れていたカシノエルフも向正面で前との差を詰めて、この3頭が先行集団を形成。3コーナーでグランデセイフウが後退し、前の2頭が後続を離して一騎打ちにもつれこむが、直線で再び伸びたテイエムハエンカゼが押し切って勝利。カシノエルフは1馬身半差の2着となった。4コーナーで前の2頭をうかがう位置まで押し上げていたカシノアポロンは、直線では前の2頭に突き放され、逆に後続のミスコクラらの追撃を受けたが3着を確保。地方所属馬は地元での上級条件で実績を残している馬がいなかったこともあり、JRAからの出走馬6頭が1〜6着を独占する結果となった。
 テイエムハエンカゼは9月の小倉2歳ステークスGV(10着)以来の休養明け初戦で、ダート戦も今回が初出走。しかし、夏のJRA小倉では新馬戦1着、ひまわり賞3着と九州産馬限定戦で好成績を収め、今回の出走馬の中でひまわり賞に出走していた馬の中では最先着と力が一枚上手だった。
 鞍上の宮平鷹志騎手は、JRAの有力馬に騎乗とあってレース前には「今でもすぐに頭がマッシロになりますよ」と緊張していたが、そのプレッシャーを跳ねのけて待望の重賞初制覇を達成。地方・JRA通して初の沖縄県出身の騎手で、荒尾廃止後も現役続行を希望しており、新天地でのさらなる活躍を期待したい。
宮平鷹志騎手
JRAの馬は逃げても(荒尾の馬と比べ)まったくペースが違いますね。こっちの馬だと止まったらそのままですが、そこからまた伸びてくれました。ゴールしたときは映画のモノトーンのシーンみたいに、まわりの風景が一色に見えました。

取材・文:上妻輝行
写真:トム岸田(いちかんぽ)