直線一気で中央勢を飲み込む
歓喜のダートグレード初勝利
今年の浦和記念JpnIIは、昨年まで3年連続で出走していた砂の王者スマートファルコンが不在ながらも、中央からはJBCクラシックJpnI3着のシビルウォーを筆頭に骨っぽいメンバーが集結。そんな中、地方の意地を見せてくれたのが山崎誠士騎手のボランタスだった。
今年1月の川崎記念JpnI(3着)のあとは腰の不安で、約半年の休養期間を経てこの夏から始動。叩き3戦目だった前走の埼玉栄冠賞は総合的に体も息遣いもできていて、4戦目の今回はそれをキープ。どんな馬でも仕上げの段階で、大なり小なり気になる面はつきものだが、「今回は休み明けの中で一番キッチリ仕上げられたし、何の不安もなくやってこられた」と山崎尋美調教師はレース前から公言し、状態に関しては満を持して送り出された。浦和コースとの相性も良く、あとは相手関係と見られていたのだが……。
想定通りエーシンモアオバーがハナを切り、好位にはボレアスとクリールパッション、中団前からシビルウォーが進めていき、中央勢が先団を形成していく中で、ボランタスは後方2番手から追走。
中団付近から競馬をする予定だったが、「もっと前に行こうと思えば行けましたが、無理をしても終いの脚が使えなくなるから、この馬のペースを大切にしました」と山崎騎手。長くいい脚を使える追ってバテないタフさがこの馬のセールスポイント。530キロ台の雄大な体から繰り出すストライドは非常に大きく、エンジンをかけたらそのまま上がっていけるかどうかが鍵を握る。「走りに迫力があって行き出した時の破壊力はスゴイ馬です」(山崎騎手)
2周目の向正面過ぎから徐々に進出していき、4コーナーでは前にいる中央勢4頭を完全に見据える形だったが、前との距離はまだ確実にある。「まさか交わせるとは思っていなかったけど、今日はいつもより終いの脚がすごかったです」(山崎騎手)。中央勢を大外から一気に飲み込んだ姿は圧巻で、上がり37秒4はメンバー中ダントツに速いタイム。山崎騎手の右腕が高々と上がった。
「これまでは切れる脚はないけどいい脚を長く使える印象だったから、今日の走りで瞬発力もありそうだなと思いました。また違う面が見られたのは収穫でしたね」(山崎調教師)。ボランタスは今年7歳だが、まだまだ奥は深そうだ。
ここ最近の南関東勢は総大将フリオーソ不在の中で、中央勢にも他地区勢にも押され気味だった。レース後に、「やったぁ〜!やったぁ〜!」と山崎調教師をはじめボランタス関係者は喜びをあらわにしていたが、南関東を応援する者にとっても同じ気持ちだった。この勝利は、南関東の競馬に再び活力を与えてくれたと思う。
山崎誠士騎手
去年はスマートファルコンがいましたが、今年は何とかなるんじゃないかと思っていました。最後までバテる心配のない馬ですが、それでも半マイルくらいから脚を使っているので、すごいですね。今は順調に調教を積んでいるのも大きいと思うし、いつも調教をつけてくれているスタッフたちに感謝したいです。
山崎尋美調教師
中央からうちにきて重賞は勝たせてもらっていたけど、ダートグレードは取らせてあげたいと思っていたから本当にうれしいです。ペースも速くなさそうだったから届かないと思ったんですが、よく頑張ってくれました。当面の目標は川崎記念になりますが、その間に東京大賞典か報知オールスターカップを挟むかはコンディションと相談して決めたいです。
1周目のスタンド前を通過する各馬
一日場長の愛華みれさん(左から4番目)、
埼玉県のマスコット「コバトン」と記念撮影
埼玉県のマスコット「コバトン」と記念撮影
取材・文:高橋華代子
写真:NAR、いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)
写真:NAR、いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)