レースハイライト タイトル
dirt
2011年11月23日(祝・水) 園田競馬場 1400m

2番手からゴール前突き放す
ダートに替わって素質開花

 今年の2歳戦線は、地方馬にとっては例年になく苦戦が続いている。特に、毎年のように「レベルが高い」と言われる道営勢は、JRA函館・札幌シリーズではとうとう1勝も挙げることができなかった。これは、JRA認定競走の制度が始まって以来初めてのこと。さらには、ダートグレードの中でも地方馬の活躍が目立つエーデルワイス賞JpnV、北海道2歳優駿JpnVともに、今年はJRA所属馬が強い勝ち方を見せた。地方勢のレベルというよりも、JRAでも早いうちからきっちりと仕上げてくる馬が増えたことや、以前と違い2歳の早いうちからダート適性を見極めて使ってくる馬が多くなってきたことなどが要因と思われる。
 そうした状況で行われたJpnUの兵庫ジュニアグランプリ。JRAからは、エーデルワイス賞JpnVまでダートで3連勝のシェアースマイルが遠征してきた。JRAの他3頭がいずれも1勝馬で、しかもそのうち2頭は今回が初ダート。ダート経験があるフリスコベイとはエーデルワイス賞JpnVで勝負が済んでいるだけに、シェアースマイルは単勝1.5倍の圧倒的1番人気となった。
 しかし競馬とはわからないもの。シェアースマイルは5着に沈んでしまう。
 フリスコベイが無理せずハナに立ち、ゴーイングパワーが併走するように2番手。シェアースマイルはスタートダッシュこそあまりよくなかったものの、直後の3番手につけた。
 4コーナー手前。前2頭の手応えがまだまだ余裕だったのに対し、シェアースマイルの丸山元気騎手は懸命に押していた。道中、何度か掛かるような仕草を見せていたため、それで消耗してしまったのかどうか。対して前の2頭は競り合うわけでもなく、むしろハナを譲り合うようにゆったりしたペースで先行できたため、余力を残していたのだろう。直線を向いて2頭の叩き合いとなったが、ゴーイングパワーが一瞬にして突き放し、フリスコベイに3馬身半の差をつける完勝。直線外から伸びた地元兵庫のエーシンユリシーズが半馬身差の3着に入った。
 勝ったゴーイングパワーは、ここまで芝を4戦して新馬戦を勝ったのみ。ここ2戦は、逃げてゴール前でわずかに交わされるという惜しいレースで連続2着。ところが初めてのダートで一転、ゴール前突き放して見せた。
 祖母の弟にはダートグレードで6勝を挙げ、9歳まで活躍したクーリンガーがいて、近親の多くはダートで結果を残している馬たち。馬主、調教師、主戦騎手ともクーリンガーと同じチームだ。父サクラバクシンオー自身は芝のスピード馬だが、産駒には兵庫所属で第2回の兵庫シャンピオンシップGVをレコード勝ちしたロードバクシンがいるなど、地方のダートでの活躍馬も少なくない。それを考えれば、むしろ今後はダートでこそ活躍が期待できそうだ。
 地方馬では、3着に入ったエーシンユリシーズが見せ場をつくった。9月にJRAで新馬戦を制し、その1戦のみで兵庫に転入。2歳一組の一般戦を楽勝し、今回が3戦目。JRAで新馬戦を勝ちながらすぐに地方に転厩というのは今までほとんどなかったパターンだが、この兵庫ジュニアグランプリJpnUを狙っての転入だったそうだ。「まだぜんぜん馬ができていない」(田中学騎手)という状態でこの走りなら、今後のダートグレード戦線で楽しみな存在となりそう。全日本2歳優駿JpnTでゴーイングパワーと再び対戦することになるようだ。
和田竜二騎手
返し馬ですごくいいキャンターをしてたので、ダートはこなせるんじゃないかという感触はありました。芝でちょっと甘いレースが続いていたので、ダートでそれが補えたかと思います。コーナーを4つ回る競馬で踏ん張ってくれたのが、今後に向けてはよかったと思います。まだまだ成長の余地があると思います。
岩元市三調教師
かなり行きたがっていたので、最後は止まるかなと思って見ていたのですが、ダートに替わったことで踏ん張ってくれたのかもしれません。小回りもよかったと思います。血統的にダートをこなしても不思議はないので、それなりに走ってくれるとは思っていました。距離は微妙ですが、全日本2歳優駿に出走することになると思います。


取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)