ハイペースでレコード決着
新設重賞で女王の座を奪う
これまで牝馬によるダートグレードでは、JpnUのエンプレス杯が格付的には最上位。とはいえエンプレス杯を年間通しての大目標とする声はほとんど聞かれることはなかった。そこに今年新設されたJBCレディスクラシックは、初年度からダート路線の牝馬が明確に目標とするレースとなった。
その牝馬の頂点を決するレースで人気を集めたのは、ラヴェリータとミラクルレジェンドの2頭。前哨戦として行われたレディスプレリュードでも、この人気2頭の決着だった。それ以外の有力メンバーもほぼ再戦という顔ぶれとなったが、いざレースが始まると、展開はちょっと意外なものとなった。
エーシンクールディがハナを切ったのはレディスプレリュードと同じ。違ったのは、ブラボーデイジーが執拗に競りかけていったことだ。さすがに1番枠のエーシンクールディは譲らなかったが、ブラボーデイジーはハナを叩くつもりで行ったにちがいない。当然ペースは速くなる。3番手にカラフルデイズが続き、1番人気のラヴェリータは離れた4番手から、これをマークするようにミラクルレジェンドが続いた。あとの馬たちはバラバラで、縦長の展開になったことでも、いかにペースが速かったかがわかる。
直線を向いてもエーシンクールディが先頭だったが、残り300メートルあたりでラヴェリータが単独で先頭へ。しかし直後でマークしていたミラクルレジェンドが交わし去って勝利。最後まで食い下がったラヴェリータが3/4馬身差で2着。7馬身離れた3着にカラフルデイズが入り、JRA勢が掲示板を独占。前で競り合った2頭、ブラボーデイジーは8着、エーシンクールディは9着に沈んだ。
そして掲示板には「レコード」の赤い文字。1800メートル、1分49秒6は、1980年のカツアールの記録をコンマ3秒上回るもの。この距離のレコードが31年も更新されたないままだったのは、大井競馬場ではこれまで1800メートルで主要な重賞があまり行われてこなかったことが要因のひとつ。同じ1800メートルでは牝馬によるTCK女王盃JpnVも行われているが、今回ここでコースレコードが出たということは、もちろん前が競り合ったこともあるが、やはりそれだけレベルの高い争いになったということだろう。ちなみに今年2月に行われたTCK女王盃は、1着ラヴェリータ、2着ミラクルレジェンド、3着ブラボーデイジーという決着で、勝ちタイムは1分52秒4。同じ良馬場ながら3秒近くもタイムを縮めたことになる。
1番人気ながら2着に敗れたラヴェリータは今シーズン限りで引退と伝えられる。牝馬同士のダート重賞では10戦6勝、2着4回と、ここまでついに連対を外すことはなかった。牡馬相手でも名古屋大賞典JpnVのタイトルがあり、今年はかしわ記念JpnTでもフリオーソに3/4馬身差の2着があった。間違いなくダートに歴史を刻んだ最強牝馬の1頭といえるだろう。
そのラヴェリータを2戦連続して下し、女王の座を奪い取ったのがミラクルレジェンドだ。430キロ前後で、ともすれば体の線が細く見えるが、オープンの関越ステークスから3連勝で、ここにきての充実ぶりがうかがえる。このあとはジャパンカップダートGTに出走予定。「荷は重いかもしれないけど、スマートファルコンやトランセンドなど、牡馬の一線級とも勝負をしていきたい」と、管理する藤原英昭調教師は期待を語った。
ダート女王の世代交代。新設された大舞台にふさわしいレースとなった。
岩田康誠騎手
今日は返し馬でも落ち着いていて、ゲートをスムーズに出たのもよかったですし、道中もいいペースで運べたと思います。3コーナーからラヴェリータのうしろについて、楽な手ごたえで直線を向いたので、これはいけるんじゃないかと思いました。直線で早めに先頭に抜け出したら遊び遊び走っているところもありましたが、それでも勝ったので、すごく強い内容だったと思います。
藤原英昭調教師
ラヴェリータと同斤量になったことで警戒はしていたんですけど、こちらもしっかり成長してくれて、状態もよかったので、勝つことができました。いろいろな展開を予想して、それでもあれほどペースが速くなるとは思わなかったんですが、最後にラヴェリータを差すというのは、理想どおりの競馬ができたと思います。ここに来て馬の中身がしっかりしてきたし、母系もしっかりしたダート血統で、まだまだよくなると思います。
エーシンクールディ(一番上)を先頭に各馬が1コーナーをまわる
4コーナーで人気2頭が先行勢に迫る
直線の息詰まる攻防
取材・文:斎藤修
写真:NAR、いちかんぽ(森澤志津雄、国分智、川村章子)
写真:NAR、いちかんぽ(森澤志津雄、国分智、川村章子)