第1戦 マイスターチャレンジ |
第2戦 ヴィクトリーチャレンジ |
世代交代を思わせる節目に
地元南関東勢が表彰台独占
冬将軍が到来した川崎競馬場。途中、雪も舞い散るほど厳しい寒さに見舞われた。しかし場内は晴れやかなムード。というのも、主催者は皆、鮮やかな黄色のブルゾンを身にまとい、佐々木竹見元騎手の勝負服柄の旗を振り、誘導馬も勝負服コスプレでファンサービス。紹介式の始まる頃には、この寒さにもかかわらず大勢のファンがウイナーズサークルに集まり、賑わいを見せていた。
「地方競馬の至宝」と言われた佐々木竹見元騎手の名を冠した『佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ』は、今年で10回目。回を重ねる度に、佐々木竹見氏がいかに愛され続けてきたのか、その偉大さを感じる。
そして、今年も全国からトップジョッキー14名が集結した。レース直後、「やっぱり、これだけの騎手が揃うとレースが面白い」「いいもの見せてもらった」「さすがだなぁと改めて思った」などと、周囲から感嘆の声が漏れていたのだが、今回もそれだけハイレベルな戦いを見せてくれたのだった。
第1戦のマイスターチャレンジは、まさに見応えのある熱戦となった。逃げ馬不在のためお互いが出方を伺いながら隊列を作り、向正面では各馬が一団でゆったりと流れていった。そして、団子状態のまま直線に突入。ここからが見物だった。まず、手ごたえ良く抜け出したのは、森泰斗騎手(船橋)のトウカイバロン。その直後から横一戦となり激しい追い比べとなった。「みんなが一気に動いて、どこに出していいかわからなくて必死だった」とマックの赤岡修次騎手(高知)が語ったように、騎手たちのせめぎ合いも相当だったようだ。激戦をものにしたのは、後続の追撃を振り切った森騎手。2着は終始インで脚をため、直線で外に持ち出したハヤブサアビオンと坂井英光騎手(大井)。そして、最後方から大外強襲の赤岡騎手が3着に飛び込んだ。
昨年に続き2回目の出場となった森騎手は、シリーズ初勝利。昨年、南関東で大ブレイクした男の勢いを感じさせる1勝だ。「優勝狙っていきます!」と、本人は気合を入れて次のレースに向かって行った。
第2戦のヴィクトリーチャレンジは、地方競馬不動のリーディングが魅せてくれた。先行馬が数頭いる中、逃げたのはなんと、戸崎圭太騎手(大井)。騎乗したダルタニヤンは、近走は出遅れもあり、後方からのレースが続いていた馬。しかし、そのままマイペースに持ち込んだ。2周目の向正面に入ると、我慢しきれんとばかりにラッキーサンライズと吉原寛人騎手(金沢)が先頭に近づき、後続の騎手たちの手も一気に動き始めた。しかしそれを尻目に戸崎騎手は後続を突き放し、2100メートルを鮮やかに逃げ切った。距離経験のあるシルククレヴァーと繁田健一騎手(浦和)が最後もしっかり脚を伸ばして2着。好位でレースを進めたステップインタイムと山口勲騎手(佐賀)が3着に粘った。
6番人気ながら、3馬身差の快勝だった戸崎騎手。意表を突いた逃げは作戦だったと思いきや、「位置取りはスタート次第と思っていたんですよ」とさらりと答えた。一瞬で最良の選択をし、結果に結び付け、しかもその馬の新味も引き出す、その技術や精神力はさすがだと実感した。
さてポイント争いは、勝利こそなかったものの、4着、2着と、2戦とも人気以上の着順で好走した繁田健一騎手が65ポイント。6回目の挑戦で見事総合優勝に輝いた。2位は、10着、1着で56ポイントの戸崎圭太騎手。3位は、1着、12着で54ポイントの森泰斗騎手。終わってみると、南関東勢が表彰台独占という結果となった。
優勝した繁田健一騎手は、「運が良かったです」と謙遜気味のコメントだったが、それでも第1戦が終わった時点で、優勝できるかもしれないと虎視眈眈と狙っていたようだ。佐々木竹見氏は繁田騎手を「人間的にも素晴らしいし、どんな競馬でも乗りこなせる騎手」と評した。確かな腕で勝ち獲った総合優勝といえよう。
節目の10回目を終えた『佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ』。入賞者や出場騎手を見ると、「世代交代」の文字も浮かんでくる。そんな、時代の流れを感じることができるのも、長く続いているこのシリーズならではだ。また今年1年、地方競馬を肌で感じながら、来年のこの日を心待ちにしたい。
パドックでのフォトセッション(最後列は第90期騎手候補生)
大勢のファンを前に騎手紹介
表彰式(前列中央が佐々木竹見元騎手)
誘導馬の騎乗者も佐々木竹見元騎手の
勝負服を着用
勝負服を着用
取材・文:秋田奈津子
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)、NAR
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)、NAR
繁田健一騎手
(浦和)
戸崎圭太騎手
(大井)
森泰斗騎手
(船橋)