競り合う中央勢を差し切る
明け4歳の期待馬が重賞初制覇
年明け最初の牝馬によるダート重賞だが、この路線は昨年新設されたJBCレディスクラシックで一段落。その後12月に行われたクイーン賞JpnVから、またその頂点に向けた争いが始まっている。今回は、第1回JBCレディスクラシックを制して初代女王となったミラクルレジェンド、クイーン賞でダートグレード初勝利を果たしたクラーベセクレタらの出走はなかったが、対抗勢力としてあらためて名乗りを挙げる牝馬たちの争い。有力視されるJRA勢はクイーン賞の2〜5着馬が揃って出走してきたので、争いの構図としてはわかりやすい。
しかし勝ったのは、伏兵視された明け4歳馬、船橋のハルサンサンで、重賞初制覇がダートグレードのタイトルとなった。
レースは、カラフルデイズが好スタートも、タイミングが合わずダッシュがつかなかったプレシャスジェムズがすぐに先頭を奪い、ウェディングフジコが3番手と、JRA勢が先行。ハルサンサンは4〜5番手の内を追走、地方勢で注目を集めたショウリダバンザイはペースが遅いと見てか後方から早めに押し上げてきた。
直線を向くと、前3頭のJRA勢が横一線での叩き合い。そこに外から迫ってきたのがハルサンサンだった。ゴール前、一旦はカラフルデイズが抜け出したが、ハルサンサンがゴール寸前で差し切り、アタマ差で勝利。鞍上の今野忠成騎手は左手を上げガッツポーズを見せた。
ハルサンサンは、前走東京シンデレラマイルでは惜しくもテイエムヨカドーの2着。しかし直線ラチ沿いから一旦は抜け出すという勝ちに等しい内容で、秋以降の成長ぶりを感じさせていた。佐藤賢二調教師は「馬体が大きくなるにつれて精神的にカリカリしなくなってきたのがよかったと思います」と、勝因として馬の成長を挙げた。
注目すべきはその血統だ。4代母のイチワカは、あのテンポイントの全妹。母の父ワカオライデンもテンポイントのおいにあたるという、母系はまさにテンポイントゆかりの血筋。父サウスヴィグラスは引退レースとなったJBCスプリントGTを制すなど地方のダート短距離路線で活躍し、ラブミーチャンなどの活躍馬を輩出している。
1800メートルの舞台で重賞制覇となったハルサンサンは、2100メートルでも関東オークスJpnU4着、戸塚記念3着、ロジータ記念2着など善戦。しかし一方、これまでの勝ち星は1500メートル以下で、中央芝への挑戦では1200メートルも経験(10着)するなど、適性距離についてはまだ手探りな部分もあるようだ。次走について佐藤調教師は、「馬の状態を見て…」と明言を避けたが、牝馬路線のエンプレス杯JpnUに行くのか、それとも東京スプリング盃から始まる短距離路線に向かうのか。いずれにしても若い明け4歳の地方馬から、楽しみな馬が現れたことだけは間違いない。
今野忠成騎手
思ったより流れが遅くて折り合いを欠いていたんですけど、最後は前の馬と並んだ時に反応してくれたので、もしかしたら勝てるかなと思いました。この馬にはなかなか上手に乗れてなかったんですけど、今回、結果が出せてよかったです。馬も若いし、挑戦することもいいことではないかとここを使いましたが、勝てたのでよかったです。
佐藤賢二調教師
中央の馬が強いので半信半疑だったんですけど、状態は良かったので、なんとかがんばってほしいという気持ちはありました。終いの脚を生かして今野君がうまく乗ってくれました。2歳時の使い始めから力のある馬だと思っていたので、勝つことができてほんとにうれしいです。
最後の直線、競り合うJRA勢に外から
ハルサンサン(緑帽)が襲いかかる
ハルサンサン(緑帽)が襲いかかる
取材・文:斎藤修
写真:NAR、いちかんぽ(宮原政典、川村章子)
写真:NAR、いちかんぽ(宮原政典、川村章子)