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2010年8月12日(木) 門別競馬場 2000m
一瞬にして大本命馬を突き放す、秋へ向け価値ある金星
今年で22回目を迎えるブリーダーズゴールドカップJpnIIに、ダート最強の中央馬が出走してきた。その馬とは、GI(JpnI)7勝のカネヒキリ。今年で8歳を迎えた歴戦の勇者ながら、実戦ではこれが初めての北海道遠征。屈腱炎による長期休養もあり、全盛期のような圧倒的な強さこそ見られなくなったものの、それでも前走のマーキュリーカップJpnIIIで1年半ぶりの勝利をあげるなど、万全の状態で真夏のダート王決定戦に臨んできた。カネヒキリの参戦に影こそ薄くはなったが、前走の東海ステークスGIIの勝利を含む、ダートグレード2勝のシルクメビウス、また今年の平安ステークスGIIIを制したロールオブザダイスに、08年のシリウスステークスGIII以来の重賞勝利を期するマイネルアワグラスなど、出走してきた中央馬のレベルも近年では最高と言えた。
メインレースのひとつ前、第9レースがスタートする前から、パドックには幾重にも人垣が出来上がっていた。お目当ては勿論、断然の1番人気に支持されたカネヒキリ。ナイター照明に照らされたその馬体は、前走よりマイナス7キロながらも張りは損なわれておらず、時には前を歩く馬を追い越そうかというほど歩様も抜群だった。
2番人気に支持されたシルクメビウスも、元気な様子で周回を重ねていく。前走の後は日高町の坂東牧場で調整されていたというシルクメビウスだが、調整も順調に進み、万全の状態でここに臨むことができたとのスタッフの声も聞かれていた。
同じく北海道で調整されていた出走馬には、マイネルアワグラスの姿もあった。ビッグレッドファームの真歌トレーニングパークで調整されていたマイネルアワグラスは、騎乗していたスタッフが「乗り込み量では今回のメンバーで一番だと思います」と話していたように、パドックでも筋肉のハリは一際目立っていた。
ゲートが開き、テンの速い中央馬が流れを作るかと思いきや、真っ先に先頭に立ったのは岩手から遠征してきたエイシンイッパツだった。その2馬身後方にはロールオブザダイス。カネヒキリは、同じ時期にノーザンファームの同じ厩舎で育成されていたアドマイヤフジを見るように4番手でレースを進めていく。
3コーナーでロールオブザダイスがエイシンイッパツを交わし先頭に立つ。その時、後方からマイネルアワグラスがまくりを見せ、直線では先頭に立つ。その展開を見越したかのように進路を外に向けたカネヒキリが、横綱相撲のように追い出しにかかる。だが、そのすぐ後方で、ぎりぎりまで脚を溜めていたのがシルクメビウスだった。
先頭に立ったカネヒキリを交わしにかかるシルクメビウス。2頭が並んだ瞬間には門別競馬場に悲鳴さえ起こったが、その後、シルクメビウスがみるみる差を広げていくと、どよめきも聞こえていた。
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田中博康騎手
1コーナーで行きたがったところも見せましたが、その後は折り合いもついて、勝負どころではカネヒキリの後ろに位置することもできました。馬はとても力をつけていますし、乗るたびに勉強をさせてもらえて、本当に頭の下がる思いがします。また、メインの他にもレースに乗せていただけたことで馬場の感じをつかめたことも、良い結果につながったと思います。改めて色々な方に感謝したいです。
領家政藏調教師
牧場から戻ってきたときにはパワーアップしているのが分かりましたし、レースでも思い描いたような走りを見せてくれました。この勝利で今後のローテーションが楽になったのも嬉しいことです。今後はジャパンカップダートを目指しながらローテーションを逆算していくことになるかと思います。
結果は4馬身差というまさに圧勝。この日は、前日の大雨の影響が残る不良馬場が前残りのレースを作り出していた中で、先行するカネヒキリを差し切った内容はまさに完勝だった。3着には早めに抜け出したマイネルアワグラスが粘り込み、4着のオーロマイスター、5着のロールオブザダイスまで、中央勢が掲示板を占める結果となった。
結果的にはいつも見慣れたダートグレードの着順かもしれないが、その頂点に4歳の新星が立った意義は非常に大きい。この地殻変動はこれから行われるダートグレードだけでなく、JBCやジャパンカップダート、そして東京大賞典といったダート界の頂点を決めるレースにまでも、波及していきそうな気がしてならない。
結果的にはいつも見慣れたダートグレードの着順かもしれないが、その頂点に4歳の新星が立った意義は非常に大きい。この地殻変動はこれから行われるダートグレードだけでなく、JBCやジャパンカップダート、そして東京大賞典といったダート界の頂点を決めるレースにまでも、波及していきそうな気がしてならない。
取材・文:村本浩平
写真:中地広大、三戸森弘康(いちかんぽ)
写真:中地広大、三戸森弘康(いちかんぽ)
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