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2010年7月19日(祝月) 盛岡競馬場 2000m
直線突き放し5馬身差、王者が地方で見せる圧勝劇
レースの約2週間前、マーキュリーカップJpnIIIにカネヒキリが登録しているのを見たとき、ほんとうに出走してくるのかどうか、疑わしく思った人も少なくなかったのではないだろうか。約14カ月ぶりの実戦となった帝王賞JpnIで2着に激走してから中2週弱。反動はないのか、脚元はだいじょうぶなのかと。果たして、盛岡競馬場のパドックに登場したカネヒキリは、帝王賞のときと変わらぬ王者の風格。威風堂々と、他馬を威嚇するような雰囲気さえただよわせていた。
そしてレースでも、格が違うとばかりの圧倒的な強さを見せてくれた。
マコトスパルビエロが最内枠から押して先頭に立つと、カネヒキリはぴたりと2番手。やや離れた3番手にロールオブザダイス、マチカネニホンバレが続き、川崎から遠征のブルーラッドがさらに離れた5番手を追走した。
向正面中間を過ぎたあたりでマチカネニホンバレが早くも後退、3コーナー過ぎではマコトスパルビエロも手ごたえが怪しくなり、カネヒキリが自然と先頭へ。直後に迫ったのは、ロールオブザダイス、ブルーラッドだった。
直線を向いて横山典弘騎手に追い出されたカネヒキリはぐいぐいと後続を突き放し、直線半ばあたりで早くもセーフティリード。あとは流すような感じでのゴールとなった。ライバルとなるはずの中央勢3頭が1頭1頭脱落していくという展開は、カネヒキリの強さを一層際立たせるものとなった。
「マコトスパルビエロと、ウチのロールオブザダイスが2頭で引っぱって、その3番手あたりからと思っていたんですが、スピードが一枚上手でしたね」と、管理する角居勝彦調教師もカネヒキリの圧倒的なスピードにはあらためて驚いている様子だった。
「1回使われた分、馬にやわらかみが増した」と横山典弘騎手。考えてみれば、これが長期休養明けの2戦目。帝王賞のときよりも、本来持っている力や勢いが戻っていて当然だ。
そのカネヒキリから5馬身離されたものの、直線でロールオブザダイスを振り切ったブルーラッドが2着を確保。中央4頭からはかなり離れた5番人気で、浦和記念JpnIIを勝ったときと同様、展開に恵まれた面はあった。とはいえ、展開だけで上位に食い込めるような甘い相手ではない。中団からマイペースでレースを進め、後半に賭けた小林俊彦騎手の好騎乗が、再びこの馬の能力を最大限に引き出した結果だろう。
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横山典弘騎手
馬まかせで行って、自分が指示を出すまでもなく、馬が勝手に行ってくれました。スタッフがよく立て直してくれて、屈腱炎があったり、骨折したり、普通の馬なら跳ねのけられないようなことを克服して、すばらしい馬です。テン乗りだった帝王賞もそうでしたが、今日も感動しました。
角居勝彦調教師
帝王賞のあとに使うとなれば、ここだと思っていました。一旦緩ませると、また仕上げるのに脚元に負担をかけることになるので、このままの体重が維持できるように、休みを入れながら競馬を使っていく形がいいのかなと思います。無事にこの路線でどこまで行けるか、ですね。
さて、カネヒキリの次走は、8月12日のブリーダーズゴールドカップJpnII(門別)を予定しているとのこと。地方勢にとってはあまりに強すぎる相手ではあるが、屈腱炎や骨折から何度も立ち直り、いまだ衰えぬダートでの強さを全国のファンの前で見せてくれれば、競馬全体がまた盛り上がるのではないだろうか。
マーキュリーカップのゴールの瞬間、スタンドのファンからは大きな拍手が沸き起こった。カネヒキリは、そうした場面を全国の地方競馬で見せてくれるかもしれない。
マーキュリーカップのゴールの瞬間、スタンドのファンからは大きな拍手が沸き起こった。カネヒキリは、そうした場面を全国の地方競馬で見せてくれるかもしれない。
取材・文:斎藤修
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)
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