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2011年3月2日(水) 川崎競馬場 2100m
最内強襲で大接戦を制す
JBCのタイトルへ視界良好
関東地方は春一番が吹いたばかりだが、3月3日桃の節句を前にして、また真冬に逆戻りしたかような底冷えするほどの寒い1日だった。しかし、最後の直線で魅せた中央馬4頭の激闘には、すべてを忘れた人も多かっただろう。
昨年の覇者ブラボーデイジーが北村友一騎手を背にマイペースの逃げで道中は進んでいき、14秒台のラップを3度も刻むほどの超スロー。向正面中間、残り800メートルを過ぎたところでペースは一気に上がり、最後の直線に入ったところでは、2番手から追走した吉田隼人騎手のプレシャスジェムズが並びかけ一騎打ちムード。
そこに待ったをかけたのが、武豊騎手のラヴェリータとクリスチャン・デムーロ騎手のミラクルレジェンド。前にいた2頭の両サイド、内と外からそれぞれ一気に強襲すると、場内も大いにわいた。
「追い出してステッキを入れたらすごく反応してくれたので届くんじゃないかと思いました。最後はすごい切れ味でしたね。去年は(ブラボーデイジーに騎乗してラヴェリータを)負かしてしまったんですがお返しができました」と武豊騎手。
優勝はラヴェリータ(勝ちタイム2分15秒3・不良)、2着は半馬身差でブラボーデイジー、3着はクビ差でミラクルレジェンド、4着はアタマ差でプレシャスジェムズだった。
着差は僅差ではあったのだが、ラヴェリータの地力の高さを目の当たりにしたような一戦だったと思う。「隣の馬と何度か接触もあったんですが、それでもしっかり走ってくれました。初めて乗せてもらいましたが、素直な馬で自在性もありそうだし、すごく競馬を理解している馬だなと思いました」(武豊騎手)
前走のTCK女王盃JpnIIIに続く連勝で、これで重賞タイトルを6つに増やした。昨年のジャパンカップダートGIでは、のちにフェブラリーステークスGIも優勝するトランセンドから0秒6差の7着に入ったことは記憶に新しい。牡馬と高いレベルで戦い続けてきたためにタイトルから遠ざかっていた時期もあったのだが、牝馬路線を進んでいればどれだけのタイトルを量産していたんだろうと思うと興味深い。
最大目標のJBCレディスクラシックに向けて視界も良好。今後は4月6日のマリーンカップJpnIII(船橋1600メートル)から7月6日のスパーキングレディーカップJpnIII(川崎1600メートル)と、牝馬ダートグレードレースの王道を進む予定だ。
しかし、地方競馬を応援するファンにとっては、寂しい結果に終わってしまったのは否めない。昨年のTCK女王盃(ユキチャン)以来遠ざかっている、地方所属馬のダートグレードレース牝馬戦線の栄冠も見せて欲しいのだが……。
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武豊騎手
ちょっとヒヤヒヤしましたが、がんばってくれました。初めて乗せてもらったので1周目は様子を見ながらで、窮屈になった面もありましたが、折り合いもついていい感じで走ってくれていたと思います。ペースがあまり上がらなかったので、外をまわったらキツイと思って内で我慢していましたが、最後は内が開いたら期待通りの脚を見せてくれました。
松元茂樹調教師
素晴らしい馬に巡り合えました。この時季の状態はとてもいいのすが、不良馬場での結果が出ていなかったので心配していました。スムーズにスタートを切って好位で競馬をしてもらいたいと思っていたので結果を出してくれてよかったです。心肺機能が非常に優れていて、物事にもあまり動じない馬です。
取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)、NAR
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)、NAR
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