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レースハイライト
 
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2010年12月29日 (水) 大井競馬場 2000m

競走成績Movie

日本レコードでの逃げ切り、3連勝でダート最強をアピール

 激しい、厳しい、そしてダート戦としては極めてレベルの高いレースだった。
 JBCクラシック組からは、7馬身差で圧勝のスマートファルコンをはじめ5着馬までが揃って出走。ジャパンカップダート組は、1、2着馬の参戦こそなかったものの、3〜5着馬が出走してきた。
 JBCクラシックではスマートファルコンに完敗の2着だったフリオーソだが、大井コースでの実績などが考慮されてのことだろう、専門紙やスポーツ紙ではフリオーソに重い印が目立った。しかし最終的にファンが1番人気に支持したのはスマートファルコンで、単勝は2.5倍。フリオーソの単勝が2.8倍で、馬連単でもスマートファルコン頭のほうがわずかに売れていた。
 注目のスタートは、フリオーソがダッシュよく飛び出した。JBCに続いて外枠だったスマートファルコンだが、大井の1コーナーまでの長い直線でじわじわとフリオーソに並びかけ、1周目のゴール手前では半馬身ほど前に出た。フリオーソも譲らぬ構えを見せたが、「今日は迷いなく先手をとりたいと思っていました」という武豊騎手のスマートファルコンが2コーナーを回るあたりで完全に主導権を握った。
 やや離れてフリオーソが続き、すぐ外に馬体を併せるようにバーディバーディ、そしてアドマイヤスバル、シルクメビウスと有力馬が続く。
 スマートファルコンの手応えは4コーナーでも楽なままで、直線を向いて追い出されると、後続をまったく寄せ付けずのゴール。フリオーソも直線で一旦は3馬身ほど離されたが、最後は1馬身3/4まで差を詰める2着と食い下がった。
 さらに3馬身離れた3着にバーディバーディが入り、アドマイヤスバル、シルクメビウスと続き、結果だけを見れば行った行ったの展開。しかし厳しいレースだった。前半1000メートルのラップが、なんと58秒9という緩みのないペース。強い馬が最初からハイペースで飛ばし、力の劣る者から脱落していくという、まるでアメリカのダート競馬を見ているかのようなサバイバルレースだった。
 表示された勝ちタイムを見て驚いた。2分00秒4は、なんとダート2000メートルの日本レコード。馬場は、ここ数日晴天が続いてまったくの良馬場だ。アジュディミツオーが06年の帝王賞JpnIでカネヒキリをしりぞけたときに叩きだした2分02秒1を、一気に1秒7も更新するタイムだった。
 とにかく記録づくめの東京大賞典だった。スマートファルコンはこれでダートグレード13勝目。これはヴァーミリアンの記録を抜いて単独トップ。東京大賞典は、ゴールドアリュール(02年)との父仔制覇に加え、ワールドクリーク(99年)と兄弟制覇となった。
 そして武豊騎手は、東京大賞典単独最多となる4勝目。過去3年はヴァーミリアンに騎乗し、これで4年連続1番人気での出走で、4年連続連対となった。
 武豊騎手は若いうちから「天皇賞男」と言われ、今年のJBCクラシックでは4年連続5度目の勝利を果たし「JBC男」とも言われた。この活躍で「東京大賞典男」という称号を加えてもいいだろう。
 スマートファルコンは浦和記念JpnIIを勝った後、年内休養の予定だったが、「充実期というか、とにかく馬の具合がいい」(小崎憲調教師)とのことで出走を決めた。そして圧倒的なスピードを見せたJBCクラシックより、さらなる強さを見せた印象だ。
武豊騎手
道中もわりと速いペースだったんですけど、今は馬の状態が最高にいいので、よくがんばってくれました。秋から急によくなったみたいで、本格化したと思います。この3走の強さは本物だと思うので、来年は海外遠征も視野に入ってくると思いますので、楽しみです。
小崎憲調教師
来年はJBCが大井ですし、帝王賞の負け方が納得いかなかったので、馬の具合がよかったこともあってここを使いました。これほどの馬にはなかなか巡り会えることもないので、大事に使っていきたいと思います。年明けは未定ですが、川崎記念、フェブラリーステークス、ドバイとあって、ドバイに行くのであればフェブラリーは使えないし、いろいろなパターンを考えます。

 悔しかったのはフリオーソだろう。今年は帝王賞制覇を含め、これでダートグレードのみに出走して7戦2勝、2着4回。陣営も、デビュー以来一番の充実期と言っていた。そしてJBCよりもいい状態で臨んだ一戦。実際にレース内容も、これまでで最高のものだったのではないか。それでもさらに強い相手がいたという、まさに死闘ともいえる名勝負で、2010年のダートグレード戦線の締めくくりとなった。
取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、トム岸田、三戸森弘康)

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