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2010年12月28日(火) 園田競馬場 1400m
直線楽な手ごたえで差し切る、1年ぶりの勝利で連覇達成
午前中は気持ちいい青空に包まれていた園田競馬場だったが、午後に入ってからは曇に覆われる天候に。さらに1コーナー方向からは強風が吹いてきた。気温は下がり、砂が風で舞い上がるなか、装鞍所では兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIの出走馬が周回を続けていた。今年のメンバーは12頭。創設以来、JRA勢がすべて勝利している重賞だが、なんとかその流れにピリオドは打てないものか。その期待は、ファンが笠松のラブミーチャンを3番人気に支持したことで表現していた。
そのラブミーチャン。復帰戦となった笠松グランプリでは装鞍所で大暴れしていたのだが、今回は落ち着いた表情。さらに歩く姿は前走より明らかに力強い。その様子に「これなら」という印象を抱いたが、今回は相手がJRAの強豪。ハンデ差があるとはいっても、前走とは相手が違いすぎる。
その強力なJRA勢。トップハンデのスーニは前走から中1週でも元気いっぱい。広い歩幅で進む姿はJpnIを2勝している存在感を誇示していた。
2番目に重いハンデのトーセンブライトは昨年の覇者。9歳だがこちらも元気よく、体調のよさを感じさせる動きを見せていた。ジャパンカップダートGIのあとは美浦トレセンに帰らずに栗東で調整。園田競馬場にも早めに入厩して、万全を期してきたようだ。
さらに今回は芝短距離のGI馬、ファイングレインもエントリーしてきた。今回が初ダートだがスピードは上位。未知の魅力は4番人気までオッズを押し上げていた。
パドックのときに降り始めた大粒の雨が本馬場入場以後には止んだ。最初の注目は先行争い。前走ではゲートで大きくつまずいたラブミーチャンだが、今回は勢いよく先頭に立っていった。しかし今回は高知のポートジェネラル、地元のイイデケンシンと、ダッシュ力がある馬がいる。さらにスーニも先行争いに加わってきた。先手こそ取れたラブミーチャンだが、常にプレッシャーをかけられる展開となった。
その先頭集団を形成する4頭の直後という絶好の位置取りになったのが、トーセンブライト。3コーナー手前では3番手に上がって前を射程圏内に。4コーナーでは前の2頭との差が開きかけたが、直線では一完歩ごとに差を詰め、残り50メートルで粘るスーニを交わし去って連覇達成。安藤勝己騎手はこのレース3勝目となった。
検量室に戻ってきたトーセンブライトを迎えた加藤征弘調教師は、「こんなにうまくいくなんて」と満面の笑み。今回で引退という話が出ているそうだが、まだ大丈夫と言わんばかりの勝利であった。
その強力牡馬を相手に逃げ込みを図ったラブミーチャンは、3着という結果。濱口楠彦騎手は「前走の反動がほとんど出なかったのはよかったけれど、仕上がりとしてはまだ物足りない」というジャッジ。柳江仁調教師も「10日くらい前に爪にキズが入って調教を少しセーブしたんですよ。その分もあったとは思いますが、今回もスタートでつまずいていましたからね」と、不満がある様子。しかし、「全日本2歳優駿のときから輸送に弱くなっていたのが、今回はまったく問題なし。これなら黒船賞とか、いろんな道が考えられますね」とも。陣営にとってもファンにとっても、今後に夢がつながる3着だったといえそうだ。
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安藤勝己騎手
久しぶりの騎乗でしたが、またがったときはあまり変わっていないなと思いましたね。相手関係からチャンスはあると思っていましたし、1400メートルもベストですからね。道中はいい位置を取れましたが、勝負どころで意外と行き脚がつかなくて、追いつけないかもと一瞬思いました。でも展開がこの馬向きになったこともあって、最後は届いてくれました。
加藤征弘調教師
ジャパンカップダートのあと、美浦に戻らないで関西に滞在したのがよかったですね。今日の園田は砂が深くて時計がかかりぎみだったのもこの馬に合いました。それよりも今日は展開ですね。本当に流れが向きました。これで引退という話になっているのですが、今後についてはオーナーと改めて相談したいと思います。
取材・文:浅野靖典
写真:宮原政典(いちかんぽ)
写真:宮原政典(いちかんぽ)
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