2010年11月23日(祝・火) 園田競馬場 1400m
好位追走から直線抜け出す正攻法
理想的な展開でダートグレード連勝
ダートグレードの2歳戦は4戦のみ。それゆえJpnの格付けと、レースのレベルが一致しないようなこともある。果たして迎えた今年の兵庫ジュニアグランプリJpnIIは、エーデルワイス賞JpnIIIの1、2着馬に、北海道2歳優駿JpnIIIの勝ち馬が顔を揃え、その格にふさわしいレースとなった。
結果から言ってしまえば、その両レースの勝ち馬が1、2着を占める人気どおりの決着。エーデルワイス賞をレコードで制し、単勝1.8倍の断然人気となったJRAのリアライズノユメが危なげないレース運びで快勝し、北海道から遠征してきた北海道2歳優駿の勝ち馬カネマサコンコルド(単勝3.7倍)が2馬身半差の2着。そして1馬身離れた3着争いは4頭横一線の大接戦。JRAのケイアイカイトと地元兵庫のエルウェーオージャが3着同着、5着、6着までハナ、ハナ差の決着だった。
ゴールだけ見れば、1、2着馬には単勝人気と同じように決定的な差があった。しかしレース内容としてはそれほど差があったかどうか。
大外枠からの発走だったリアライズノユメは楽に3番手をキープ。向正面でカネマサコンコルドが迫ってくると、鞍上の福永祐一騎手はちらりと後ろを確認し、それを待っていたかのようにゴーサイン。ライバルに並びかけることを許さず、逃げていたケイアイカイトを直線半ばで振り切るという完璧な勝ち方だった。
一方のカネマサコンコルドは、ダッシュがつかなかったこともあるが、スタート後に両脇の馬に寄られて狭くなり、さらに外から前を横切られて後方まで下がる場面があった。スタート直後だけに審議にはならなかったものの、あの位置取りから向正面で先団に取りつくまでには相当脚を使っていたはず。それでいて直線での混戦から単独で2着に抜け出したのだから、さすがに北海道2歳優駿を勝ってきただけの力はある。
両馬とも川崎の全日本2歳優駿JpnIに向かうとのことで、再戦が楽しみになった。そこには、牝馬ながら平和賞を勝った船橋のヴァインバッハも照準を定めている。また、中央からも新たな有力馬が参戦してくるだろう。今年の全日本2歳優駿は、まさにJpnIらしい2歳の頂上決戦となりそうだ。
ところで、勝ったリアライズノユメの森秀行調教師には、毎度のことながら感心させられることが多い。エーデルワイス賞のときは、熱発を心配して、1週間も前の門別入厩だった。
そして今回、芝を5戦したあとダートに矛先を変えて2連勝したことを問うと、「ダートのほうが安全やからね」と一言。真意を確かめると、中央の芝では多頭数の上に力が拮抗した多くの相手と戦わなければなければならないということらしい。なるほど地方のダートグレードは実力に開きがある場合が多く、それゆえ厳しいレースになることが少ない。若いうちから馬に無理をさせたくないということもあるのだろう。
福永祐一騎手
いい枠が当たって、スタートだけ躓いたりしないように気を付けながら、楽な感じで3番手がとれました。向正面で2着馬が早めに来たので、自分でイメージしていたより早めの仕掛けになりましたが、あそこはもう引けないところだったので。終始手ごたえは楽で、安心してレースができました。次のGI(JpnI)に向けて楽しみが広がるレースぶりだったと思います。
森秀行調教師
内枠だと、包まれたり砂をかぶったりという心配がありますが、外枠だったので周りを見ながら行けました。2コーナーを回ったあたりで、手ごたえもよさそうだったし、勝てるかなと思いました。全日本2歳優駿では南関東の男馬も相手になると思いますが、今回強いレースをしてくれたので、次も期待しています。
目の前に用意されている中央のレースだけを使うのではなく、馬の適性を見極め、さまざまに視野を広げておく。それが森厩舎の世界的な活躍につながっているのだとあらためて認識させられた。
取材・文:斎藤修
写真:三戸森弘康(いちかんぽ)
写真:三戸森弘康(いちかんぽ)