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2010年11月22日(月) 水沢競馬場 2000m
復活した地方交流の大舞台
地元期待の星が三冠達成
3年ぶりに復活したダービーグランプリ。地方同士の全国交流、そして舞台が水沢ということでは15年ぶりとなる。
単勝1番人気は羽田盃馬シーズザゴールドで、地元期待のロックハンドスターはわずかの差で1番人気を譲った。その鞍上、菅原勲騎手は、90年にサンドリーズン、94年にブラッククロスと、地方交流時代のこのレースを2度制している。3番人気となった船橋・ウインクゴールドの鞍上、的場文男騎手もまた、88年にアエロプラーヌでこのレースを勝っている。
かつてのダービーグランプリに歴史を刻んきたベテランジョッキーが、かつての姿で復活したレースで人気馬に騎乗し、顔を揃えた。ついそうした感慨に浸ってしまうのは、地方競馬における交流黎明期に、このダービーグランプリの果たしてきた役割がきわめて大きいものだったから。
勢いよく飛び出したコンゴウプリンセスの大逃げでレースがスタート。金沢のナムラアンカーが離れた2番手を追走し、ロックハンドスターは直後4番手から。南関東の有力勢は、さらにうしろからという展開。2周目の向正面に入ると、コンゴウプリンセスが後退し、3コーナー手前でナムラアンカーが単独で先頭に立った。
ここで難しい判断を強いられたのがロックハンドスターの菅原騎手だ。そのままナムラアンカーを行かせれば押し切られてしまうかもしれない。しかし、目標と定めた南関東の有力勢はまだうしろ。仕掛けが早過ぎれば、その後続に捕まってしまう。「やっぱり(相手は)うしろの馬だと思っていたので、追い出しを我慢しました」と菅原騎手。その絶妙なタイミングが結果につながった。
直線を向いてもナムラアンカーが単独先頭だったが、残り100メートルを切ってロックハンドスターがこれをとらえると、あっという間に突き放し2馬身半差をつける完勝。ナムラアンカーが2着に粘り、後方から押し上げ直線迫ったシーズザゴールドは1馬身差の3着だった。
2度の大井への遠征では結果を残せなかったロックハンドスターだが、ホームに南関東勢3頭を迎えて雪辱。同時に、ダービーグランプリの復活によって新たに設定された岩手3歳三冠を制覇。まさに「ロックハンドスター=岩手の星」を体現して見せた。
2着に敗れたとはいえ、ナムラアンカーも見せ場をつくった。鞍上の葛山晃平騎手は、岩手で騎手デビューし、06年に一度は引退。競馬の世界を離れたものの、今年金沢から再デビュー。そして出会ったのがナムラアンカーで、前々走サラブレッド大賞典での大差の圧勝が、岩手時代も通じて初めての重賞制覇だった。今回、惜しくも大金星を逃したが、「あれが勝ちパターン。思い通りのレースができました」と、満足げな表情が印象的だった。
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菅原勲騎手
南関東の有力馬を前に置いて競馬をするつもりだったので、思っていたレースとはちょっと違いましたが、この馬の力を十分出せたと思います。遠征ではなかなかロックハンドスターのいいところを出せずにいて、その程度の力ではないと思っていたので、地元で勝ててよかったです。地元の馬が勝ってくれないと、ファンのみなさんも応援のしがいがないでしょうし、盛り上がらないですから、これからもどんどん勝っていきたいと思います。
瀬戸幸一調教師
飛ばしてくれる馬がいたので、勲くんも競馬がしやすかったんじゃないでしょうか。やっぱり地元の馬が勝つことは最高のことで、すごくうれしく思っています。年内は、年末の桐花賞1本と考えています。年が明けてからのことはまだ考えていませんが、できればまた南関東とかに遠征してみたいという気持ちはあります。
取材・文:斎藤修
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)
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