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2010年11月3日(祝・水) 船橋競馬場 1000m
他馬を寄せ付けないスピード
1000m戦でさらに強さを発揮
第10回を迎えるJBCだが、スプリントの1000メートルは過去最短の距離設定。加えて、日本で1000メートルのダートJpnIが行われるのは初めてのこと。地方競馬では、競馬場のコース形態にもよるが、2歳の早い時期には1000メートルやそれ以下の距離のレースもめずらしくない。しかし今回出走する中央馬5頭にとっては初めて経験する距離。それゆえ出走させる陣営にも少なからず不安があったのではないだろうか。結果は、明暗が分かれた。
1000メートルのスピード決戦は、やはりといおうか展開関係なしのサバイバルレース。スタートを失敗してしまえばそこで万事休す。五分にスタートを切った中から、手綱をしごいてじわじわと先頭に抜けてきたのは、断然人気のサマーウインド。スピード乗ってからの二の脚は、他のどの馬にも負けない。3コーナー手前では1馬身ほど抜け出し、単独で先頭に立った。
外枠のナイキマドリードが離されまいとこれに食らいつき、芝のスピード競馬を経験しているアイルラヴァゲインも追走した。
しかしサマーウインドのスピード能力は次元が違った。直線を向くと2番手のナイキマドリードを引き離しにかかり、最後まで余裕の手ごたえのままゴール板を駆け抜けた。
4馬身離れた2着には、地元船橋のナイキマドリードが粘った。直線を向いて後退したアイルラヴァゲインに替わり、道中はやや離れた4番手集団を追走したミリオンディスクが3着を確保した。
「速すぎて、ついていけなかった」。着外に敗れた騎手の何人かが、検量室前に戻って開口一番、口を揃えていたが、それほどサマーウインドのスピードは抜けていたということだろう。
1000メートルが“明”と出たのは、もちろんそのサマーウインド。「この馬のスピードを思う存分発揮できる舞台だと思っていたので、記録に名前を残せてうれしいです」と藤岡佑介騎手。ともにJpnI初制覇となった庄野靖志調教師は、「こんないい馬を預けてくれたオーナーに感謝です。厩舎スタッフもよくやってくれた」と声を詰まらせた。
対してこの距離が“暗”と出たのはスーニ。昨年、名古屋1400メートルからの連覇がかかり、単勝では2番人気に支持されていた。結果は、サマーウインドから1秒7も離された4着。「ここ2走があまりよくなかったですが、だいぶよくなってきていました。1000メートルはやっぱり忙しい」と川田将雅騎手。
そして単勝54.6倍の6番人気ながら2着に粘ったナイキマドリードの健闘も光った。07年のこのレースの覇者フジノウェーブ、東京盃JpnIIでサマーウインドにハナ差まで迫ったヤサカファインらとともに、ダート短距離路線を盛り上げる南関東勢の中心的存在となりそうだ。
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藤岡佑介騎手
いつもスタートがあまり速くはないんですが、ここ一番でいいスタートきってくれました。出た時点で、あとは丁寧に乗ることだけ心掛けてまわってきたので、何も不安はなかったです。4コーナーでもかなりいい手ごたえでしたし、ゴール前でもスピードは衰えなかったので、ほかの馬は追いつけないだろうと思って乗っていました。
庄野靖志調教師
いつもより一歩目が早く出られたし、そのあと二の脚も早い段階でエンジンがかかって、スピードに乗って行けました。1000メートルということで、馬のスピードを十分に生かせる競馬ができました。ここまで夏からずっとがんばってくれたので、まずは馬の様子を見て、疲れをしっかりとってあげて、その後のことはじっくり考えたいと思います。
取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(宮原政典、森澤志津雄、川村章子)、NAR
写真:いちかんぽ(宮原政典、森澤志津雄、川村章子)、NAR
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