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2010年10月6日(水) 大井競馬場 1200m
本番を見据え飛ばす展開
ハナ差辛勝も視界良好
いよいよ今年もJBCが1カ月後に迫った。JBCクラシックの前哨戦としては、Road to JBCの日本テレビ盃JpnII、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnIのほかにも、シリウスステークスGIII、白山大賞典JpnIIIなど選択肢は多い。しかしJBCスプリントに関しては、特に今年は本番が1000メートルで行われることもあり、ほぼこの東京盃JpnIIに絞られる。それだけに、本番に直結するメンバーが集結した。
クラスターカップJpnIIIをコースレコードで圧勝してきたサマーウインドが単勝1.3倍で圧倒的人気。スタートに課題があるとされるそのサマーウインドは、今回もフワッとした感じでゲートを出た。とはいえ出遅れというほどのものではなく、勢いに乗ってからのスピードはやはり抜群。3コーナー手前で早くも単独先頭に立った。これをぴたりと追走したのが、大外枠から絶好のスタートをきったナイキマドリードで、3番手以降はやや離れた。
直線を向くとサマーウインドがじわじわと後続を離しにかかり、そのまま独走かに思われた。しかし内から他馬とはまったく違う脚いろで伸びてくる馬がいた。前哨戦のアフター5スター賞を好タイムで制していたヤサカファインだ。残り100メートルでは3馬身ほどもあった差がみるみる詰まり、鼻面を並べたところがゴール。写真判定の結果、サマーウインドがハナ差でしのいでいた。
勝ちタイムは1分10秒6(稍重)。東京盃の過去5年の勝ちタイムが、いずれの年も不良または重で1分11秒台だったことを見ても、例年以上のスピード決着だったことがわかる。それは、サマーウインドの藤岡祐介騎手が「次(船橋1000メートル)のことも意識して、かなり速めのラップで飛ばしていこうと思っていた」ということが、ひとつの大きな要因であろう。
JBCスプリントを目標にしていたという陣営にとっては、クラスターカップで重賞初制覇を果たし、今回の東京盃で本番への優先出走権を獲得と、目標に向けて最短距離を勝ち進んできた。わずかハナ差とはいえ、本番を見据えたレースぶりでの勝利は、まさに会心だったに違いない。共同インタビューの前、そして後に、庄野靖志調教師が「よしっ、よしっ!」と何度も気合を入れていた様子からもそうした心境がうかがえた。
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藤岡祐介騎手
正直、ゴールした時は差されたかなと思ったので、勝っていてホッとしました。今日はひきつけるようなことはしないで、飛ばせるだけ飛ばそうと思っていました。最後はヒヤッとしましたけど、非常に強い競馬だったと思います。スピードでは現役でも1、2位を争う馬だと思うので、あとは、今日もそうでしたけど、スタートがあまりよくないので、そこだけ集中していきたいと思います。
庄野靖志調教師
今日は人気もかぶっていましたし、次に向けていいレースをしたかったので、まずは勝ててホッとしています。ヤサカファインがすごい脚で追い込んできたので、一瞬、負けたように見えましたけど、よく粘ってくれました。スピードを持続できることが、この1200メートルで生きているんでしょうし、これからもそういう競馬になっていくと思います。
惜しくも2着に負けたとはいえ、上がり3ハロン36秒3という末脚で追い込んだヤサカファインにも驚かされた。ナイキマドリードも直線で突き放されたとはいえ、4着に粘った。前走アフター5スター賞の1、2着馬で、ともにダートグレードは今回が初挑戦。それを考えれば、南関東のこの2頭も相当に高いレベルにありそうだ。
本番のJBCスプリントは、JpnIとしては初めてとなる1000メートルでの決戦。200メートルの距離短縮が、プラスに作用する馬も、マイナスに作用する馬もいることだろう。いずれにしても、1番人気となるであろうサマーウインドが、JpnIII、JpnIIに続き、頂点のJpnIまで一気に突破するのかどうかが最大の焦点となりそうだ。
取材・文:斎藤修
写真:三戸森弘康(いちかんぽ)
写真:三戸森弘康(いちかんぽ)
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