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2011年1月25日(火) 川崎競馬場
第1戦 マイスターチャレンジ![]() ![]() |
第2戦 ヴィクトリーチャレンジ![]() ![]() |
全国の名手がしのぎを削る争い
人気馬での確実な勝利で戴冠
通算7153勝をあげ、“鉄人”と呼ばれた川崎競馬の至宝、佐々木竹見元騎手。その偉業を讃え、引退の翌年度に創設された『佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ』は、今年で9回目を迎えた。周囲からは「竹見さんが引退して10年も経つんですね」と懐かしむ声。この日は佐々木竹見元騎手の偉大さを改めて噛みしめる日でもあるのだ。その佐々木竹見元騎手が所属した川崎競馬場に、今年も全国からトップジョッキーが集まった。
昨年、初出場ながら出場メンバー中最年少の町田直希騎手(川崎)が優勝したことは、ベテラン騎手たちに刺激を与えたであろう。今年は、福永祐一騎手(JRA)、森泰斗騎手(船橋)、杉村一樹騎手(荒尾)の3名がシリーズ初参戦。佐々木竹見氏もこの初出場組には期待をかけていたようだ。なお、初出場となるはずだった坂井英光騎手(大井)が怪我のため、的場文男騎手(大井)に変更となったのだが、その的場騎手も前日に落馬負傷。それぞれのレースで違う騎手に乗り替わり、その着順のポイントは含まれないという措置がとられた。従って、13名でシリーズを競うこととなった。
第1戦は、1500メートルのマイスターチャレンジ。先行馬が多いメンバー構成の中、まずは岡部誠騎手(愛知)のドリームカウボーイが押して先手を主張した。2番手に内田博幸騎手(JRA)のヤマイチダイヤ、その外は菅原勲騎手(岩手)のチチブヨマツリ、この3頭が先行集団を形成した。ペースを読んでのことか、この距離にしては縦長の展開で終盤に向かう。そこで、後方から徐々に位置取りを上げてきたのが戸崎圭太騎手(大井)のジュウクリュウオウだった。直線に入ると、必死で粘る先行馬と後ろから迫る各馬との大混戦となったが、大外から伸びた戸崎騎手が半馬身差でねじ伏せた。
「スタートで出遅れたのは、誤算でした。申し訳ないです。馬の力で勝てました」と戸崎騎手は苦笑い。ミスがありながらも巻き返して勝利に導く技術は、さすがトップジョッキーだ。そして2着は、道中内で脚を溜め、最後は最内を伸びた繁田健一騎手(浦和)のバンブーデコ。慣れたコースでうまくパートナーを誘導した。3着は、内田騎手との激しい追い比べを制した岡部騎手。岡部騎手はこのシリーズで3回準優勝があり、今年こそはの意気込みだ。
レース後、リプレイを真剣に確認する騎手たちの姿があった。レース前の紹介式などでは和気あいあいとした雰囲気の騎手たちだったが、一戦を交え、その戦闘モードが検量室前に溢れていた。「勝ちに行く競馬をしますよ」そう言ってパドックに向かう騎手もいた。
勝負を決める第2戦ヴィクトリーチャレンジは、騎手の技量が試される長距離、2100メートル戦だ。専門紙の予想を見ると「混戦」の文字。それもそのはず、近走1500〜1800メートルを使っている馬がほとんどで、馬とっては未知の距離、騎手にっては難題といっていい舞台なのだ。それはファンも理解しているのだろう、単勝オッズはなんと10番人気までが10倍台と人気が割れ、難解さを示していた。
予想通りレースはゆったりと流れる。ある程度隊列が決まるとスタンド前でペースが落ち、お互いの出方を伺いながら向正面に入った。動いたのは今野忠成騎手(川崎)のアップローだ。後方から一気に進出すると、それを見た他の騎手の手が激しく動き始めペースアップ。あとは直線勝負。いち早く抜け出したのは本橋孝太騎手(船橋)のスズツルギオーで、1頭だけ余裕の手ごたえでゴールイン。その後ろがまたもや大混戦となり、直線半ばでは7頭が一団で激しい2着争いとなった。その結果、2着は町田直希騎手のナイトシアター、3着には川原正一騎手(兵庫)のアンビシャスガイが入り、中団〜後方で我慢していた両馬が上位を確保した。
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勝った本橋騎手は急遽の乗り替わりのためポイントには反映されず、2戦ともに上位に入る騎手がいなかったためポイント争いは大激戦。結果、1戦目の勝利で唯一50ポイントを獲得した戸崎圭太騎手が総合優勝。2位、3位は49ポイントで並んだが、2戦目の着順が優先されるため、2位は今野忠成騎手、3位は内田博幸騎手となった。
自分のレースには納得していない様子も、「佐々木竹見さんの名が付いた名誉あるレースで優勝できて本当に光栄です」と戸崎騎手。今年も白熱した戦いでファンを魅了した全国のトップジョッキーたち。偉大なる大先輩、佐々木竹見元騎手を目指し、今後の活躍にも期待したい。
取材・文:秋田奈津子
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)、NAR
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)、NAR
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戸崎圭太騎手
(大井)
今野忠成騎手
(川崎)
内田博幸騎手
(JRA)