第2ステージ



シルバーサドル賞(第4戦)   シルバーブーツ賞(第5戦)
   


菅原勲騎手が再逆転、世界への切符をゲット

 
 スーパージョッキーズトライアル2008(以下、SJT)の第2ステージは、このシリーズでは初のナイターとなる大井競馬場での開催。時おりまばらに降る雨にレースの熱気が相まって、10月の夜とは思えないようなじわっとした蒸し暑さを感じさせた。
 笠松で行われた第1ステージは岩手の菅原勲騎手が2勝で40ポイントを獲得し、大きく抜け出した。これを追うのが2戦とも2着だった名古屋の岡部誠騎手。上位の騎手は大きなアドバンテージを持っているものの、第2ステージの成績次第では下位グループにもまだまだチャンスが残されている状況。ナイター、広いコース、長い直線、14頭立てのレース。南関東以外の騎手にしてみれば第1ステージだけではなく、普段とは大きく異なる環境への対応力が求められることも、第2ステージが一筋縄で収まらないのではと感じさせた。
 第4戦のシルバーサドル賞を勝利したのは、タカラキャンディに騎乗した地元大井の的場文男騎手。「包まれるインが嫌だった」と振り返るように、道中は徐々に外に寄せるようにレースを進め、直線でもさらに外に持ち出すと、逃げた同じく大井の御神本訓史騎手のツカサアローをゴール前で捉えた。
 第1ステージでは6ポイントで最下位タイだった的場騎手だが、地の利を生かす好判断での勝利で合計26ポイントに。一方、第1ステージトップの菅原騎手が13着で1ポイントの加算に終わり、合計41ポイント。第5戦次第では大逆転もありうる状況となった。さらに3着が岡部騎手のインカントと吉留孝司騎手のワタリフローラが同着。この時点で岡部騎手が合計42ポイントで逆転トップに立ったものの、同着で本来の3着よりも1ポイント少ない加算に終わったことも、混戦へ拍車をかけることとなった。
 
 合計24ポイントで8位の吉留騎手まで優勝の可能性を残し、迎えた第5戦のシルバーブーツ賞は、各騎手の意地と意地のぶつかり合いが如実に表れたかのような激戦となった。ハイペースを作り出し逃げ込みを図る東川公則騎手のウイングスプレッドに、坂井英光騎手のツクバフェアリー、菅原騎手のスピードキングが並びかけ、ゴール前で壮絶な叩き合い。これを大外からまとめて差し切ったのが、今野忠成騎手のウォーラシアンだった。準地元とも言える大井で結果を出した今野騎手だったが、皮肉にもポイントでは優勝圏外。
 総合優勝の行方は2着以下の動向となったが、ここまで2位だった菅原騎手が2着、1位だった岡部騎手が6着という結果。これによって合計56ポイントとなった菅原騎手が48ポイントの岡部騎手を再逆転し、このシリーズ2回目の出場で総合優勝を果たすともに、2002年以来2度目となるワールドスーパージョッキーズシリーズへの切符を手にした。
 ホッとした表情を見せる菅原騎手とは対照的に、なんともやり切れない表情だったのが岡部騎手。昨年は3位、今年は2位と2年連続で表彰台に足を掛けているのは立派だが、やはり優勝を意識できる位置につけただけに、チャンスを逃した悔しさは大きかったようだ。
 今年のSJTは5戦で行われたこともあり、より魅力的なシリーズとなった。ファンにとっても滅多に見ることができない全国のトップジョッキー同士の戦いが見られる歓びと同時に、参加するジョッキーたちにとっても普段と異なるメンバーやコースでの競馬が大きな刺激であることは、それぞれの表情からも一目瞭然。いずれのジョッキーも「また来年も出たい」と口を揃えるのは、この刺激に魅了された彼らの紛れもない本心であろう。

取材・文:土屋真光
写真:いちかんぽ

 
(第4戦)
的場文男騎手(大井)
  1番枠で包まれやすいので、道中はこの馬の普段の競馬より前めの位置取りで進めました。それでも直線は前が塞がってしまいましたが、外にうまく出せたらいい脚を使ってくれました。地元でレースを勝ったのはうれしいのですが、笠松ステージが悪かったので、第5戦を勝てても総合優勝が難しいのはちょっと残念です。  
 
(第5戦)
今野忠成騎手(川崎)
  ゲートが上手じゃないけれども追って伸びると聞いていたので後方待機策は予定通り。道中のペースが速く、掲示板はあるかなと思っていましたが、直線では砂が被らないように追ったら馬も頑張ってくれました。このシリーズはとにかく勉強になります。みんな乗り方もきれいですし、競馬場が変わっても即座に仕掛けどころを判断できますしね。来年も出場したいです。
 
(SJT2008総合優勝)
菅原勲騎手(岩手)
  ポイントが1点しか加算できなかった第4戦の内容から、ちょっと流れが向いていないかもしれないと思いましたが、最後にもう1度逆転できて良かったです。笠松のアドバンテージを生かせました。第5戦は1コーナーで上位は確信できましたが、やっぱり岡部君の位置取りは気になりましたね。WSJSは地方競馬の代表として頑張りますので、皆さん応援よろしくお願いします。