第1ステージ



シルバースパー賞(第1戦)   シルバーホイップ賞(第2戦) シルバービット賞(第3戦)
     


世界への扉目指し、今年も名手が集結

 
 午前中は雨模様だったが、全国から集まった猛者たちから雨雲が逃げ出したかのように、正午ごろから晴れ間が広がり始めた笠松競馬場で、スーパージョッキーズトライアル2008(以下、SJT)の第1ステージが行われた。今年も全国から出場の14名は多士済々。各地域の顔とも言うべき14名だが、このシリーズに3年間を通して出場しているのは、的場文男騎手(大井)、今野忠成騎手(川崎)、岡部誠騎手(名古屋)、赤岡修次騎手(高知)のわずかに4名。頂点を維持することの難しさと同時に、地方競馬の層の厚さを改めて認識させられる。
 今回第1ステージが行われる笠松ではフルゲートが10頭であることから、14名の騎手が2回ずつ騎乗できるよう、すべて同じ1400メートルの3戦が組まれた。これによって、昨年まではサバイバル形式で第2ステージに進める騎手の数が絞られていたものが解消し、2つのステージそれぞれですべての騎手の騎乗が叶うこととなった。全国のトップジョッキー同士の手綱さばきを期待するファンにとっても楽しみが増えたと同時に、フルゲートが少ない競馬場でもシリーズを行うための指針ができたと言えよう。もちろんレースが分割されたからといって、熱い戦いが薄まるものではなかった。
 第1戦、シルバースパー賞を制したのはホウヨウターニングに騎乗した菅原勲騎手。スタートから気合をつけて1周目のゴール前で早々と先頭に立つ積極的な競馬。道中では後続との差を測るように進むと、直線でも岡部誠騎手オートレンゲル以下の追撃をしりぞけて逃げ切り。後方から徐々に押し上げた木村健騎手のレステカルムが2着馬にクビ差及ばずの3着。会心の騎乗に笑顔で引き上げてきた菅原騎手と対照的だったのが、準地元ともいえる名古屋の岡部騎手。苦笑交じりに「去年はオール4着だったから、今年はオール2着かもね」と語っていたが、第3戦でも2着となり、図らずもそれが現実味を帯びることとなる。
 
 第2戦のシルバーホイップ賞から、ディフェンディングチャンピオンである高知の赤岡修次騎手がサイキョウキロクに騎乗して登場。第1戦の逃げ切り劇に刺激を受けたのか、第1戦は4着だった楢崎功祐騎手ブルーアジサイと火花を散らすかのように先行。奇しくも同厩舎2頭の争いは、最後の直線に向いても続いたが、これをあざ笑うかのように外からまとめて差し切ったのは、道中は中団でレースを進めた菅原騎手のリードラヴィーだった。第1戦をイメージ通りに乗れたことでリラックスしてレースに臨めたという菅原騎手が2連勝で、この時点で早くも第1ステージの優勝を決めた。
 第3戦のシルバービット賞は、JRAから転入以来9連勝中のストライクリッチが断然人気。抽選の段階から高ポイント確実と言われていた同馬の手綱を取ったのは、父が名古屋の厩務員、弟も以前笠松で活躍した坂井薫人元騎手と、この地に縁の深い大井の坂井英光騎手。「とにかく道中の不利など心配がないよう、スタートを決めたかった」との言葉どおり、坂井騎手とストライクリッチはキッチリとゲートを決めた。前半こそ吉原寛人騎手のアイノキセキに絡まれる展開となるも、スピードの違いで競り落とすとあとは独走。後続に脅かされることなくゴールを駆け抜けた。
 第1ステージを終えて大きく抜け出したのは、2連勝で40ポイントを獲得した菅原騎手。以下、30ポイントの岡部騎手、25ポイントの坂井騎手と続いた。第1ステージでは最下位が続いても6ポイントを獲得できた一方、大井競馬場に舞台を移して争われる第2ステージでは合計2ポイントしか得られないケースもある。第1ステージの結果は上位の騎手にとってアドバンテージではあるものの、まだ安心できるものとは言えない状況。昨年の最終戦での大逆転劇は記憶に新しい。シリーズ初のナイターでの開催、秋の夜の肌寒さも忘れるほどの熱い戦いを期待しよう。

取材・文:土屋真光
写真:三戸森弘康

(第1戦)
菅原勲騎手(岩手)
  先行できるようであれば前に行って欲しい、という調教師の指示でしたので、うまく先手が取れたのがよかったです。向こう正面から3コーナーにかけて手応えが怪しくなるところがありましたが、これもあらかじめ聞いていたので、焦らず直線でのもうひと脚につなげられました。イメージどおりの競馬ができましたね。  
(第2戦)
菅原勲騎手(岩手)
  砂を被らないで行きたかったのですが、いい位置が取れず道中は中団の内を進むことになってしまいました。それでも、3コーナーから4コーナーにかけて馬が動いてくれたので、行く気にまかせて外に持ち出したら、直線でいい脚を使ってくれました。新しい面を引き出せての勝利だったので気持ちがいいですね。

 
(第3戦)
坂井英光騎手(大井)
  厩舎の皆さんからも、無事に回ってくればポイントが稼げる馬だと聞いていましたので、とにかくスムーズな競馬ができるようスタートだけは気をつけました。すんなりとハナに立てて、1コーナーで勝利を確信しました。縁のある土地で勝ててよかったです。次は地元大井ですので、逆転できるよう頑張ります。  
 
(第1ステージ優勝)
菅原勲騎手(岩手)
  1戦目を勝てたことで、2戦目もリラックスして乗ることができ、結果的に2連勝できました。笠松は初めてなんですが、相性がいいんでしょうね。第2ステージまで2週間あいだが開きますが、緊張感を維持しつつ、いい意味でプレッシャーを楽しめるよう、当日を迎えたいと思っています。