現名古屋競馬場では最後の開催となる砂の名馬への登竜門
“二刀流”が世間の話題をさらった2021年の勝ち馬クリンチャー(JRA)は、レース史上初めて(1996年の中央交流後)重賞初勝利が芝だった馬による制覇で、年末の東京大賞典GI・2着とダートでも出世を遂げた。移転により、現在の名古屋競馬場で実施される最後の重賞となる。ここでは過去10年のデータから傾向を分析していく。
JRAが上位をほぼ独占し、地方馬で馬券に絡んだのは、17年3着カツゲキキトキト(愛知)のみ。レベルが高い南関東から一線級の参戦がないこともあるが、JRAの壁は高い。[表1]
所属 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
JRA | 10 | 10 | 9 | 17 | 21.7% | 43.5% | 63.0% |
愛知 | 0 | 0 | 1 | 40 | 0.0% | 0.0% | 2.4% |
その他地方 | 0 | 0 | 0 | 26 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
1番人気が勝率60.0%、連対率80.0%、3着内率90.0%と優秀。それに続くのが2、4番人気で3着内率では70.0%。3番人気は3着内率40.0%だが、3勝は1番人気に次ぐ多さだ。5番人気以下は3頭が3着に入ったのみで、ほぼ4番人気以内で決着。6番人気以下の3着2回はともに6番人気で、17年3着カツゲキキトキト(愛知)もこの人気。人気薄の地方馬の大駆けは考えにくい。[表2]
単勝人気 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
1番人気 | 6 | 2 | 1 | 1 | 60.0% | 80.0% | 90.0% |
2番人気 | 0 | 4 | 3 | 3 | 0.0% | 40.0% | 70.0% |
3番人気 | 3 | 0 | 1 | 6 | 30.0% | 30.0% | 40.0% |
4番人気 | 1 | 4 | 2 | 3 | 10.0% | 50.0% | 70.0% |
5番人気 | 0 | 0 | 1 | 9 | 0.0% | 0.0% | 10.0% |
6番人気以下 | 0 | 0 | 2 | 61 | 0.0% | 0.0% | 3.2% |
4歳の4勝がトップで、5、6歳が各2勝、7、8歳各1勝と若い世代ほど勝ち星が多い。4歳が3着内率でもっとも高く、12年(4着が最高)と14年(出走なし)を除く8回で3着以内に入っている。なお17年3着カツゲキキトキト(愛知)も4歳だった。年齢が上がるほど地方馬の比率が高まる傾向があり、馬券絡みがある4~8歳のうち3着内率が最も低い6歳でも、JRAに限れば【2-2-0-0】。JRA馬なら年齢はあまり気にする必要はない。[表3]
年齢 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
4歳 | 4 | 3 | 5 | 9 | 19.0% | 33.3% | 57.1% |
5歳 | 2 | 1 | 2 | 17 | 9.1% | 13.6% | 22.7% |
6歳 | 2 | 2 | 0 | 17 | 9.5% | 19.0% | 19.0% |
7歳 | 1 | 3 | 1 | 19 | 4.2% | 16.7% | 20.8% |
8歳 | 1 | 1 | 2 | 11 | 6.7% | 13.3% | 26.7% |
9歳以上 | 0 | 0 | 0 | 10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
馬番別で最も目立つのは5番で、5勝、3着1回。5番のJRA馬で唯一、3着以内に入れなかった21年メイショウカズサはスタートで出遅れていた。ほか勝利があるのは2、7、9、11、12番。なお、3着内率でも5番が最も優秀。3頭以上が馬券絡みしているのは、ほかに2、4、6、7、9、10番で、5番より外に入った馬の好走が多い。逆に最内の1番は不振で、1番人気で唯一、馬券外だった17年モルトベーネなどJRA4頭いずれも4着以下に敗れている。[表4]
年 | 12年 | 13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 17年 | 18年 | 19年 | 20年 | 21年 |
頭数 | 11頭 | 12頭 | 12頭 | 11頭 | 12頭 | 9頭 | 10頭 | 12頭 | 12頭 | 12頭 |
1着 | 5 | 5 | 9 | 11 | 2 | 5 | 5 | 12 | 5 | 7 |
2着 | 9 | 7 | 7 | 10 | 10 | 2 | 6 | 2 | 4 | 12 |
3着 | 2 | 10 | 4 | 5 | 6 | 6 | 4 | 9 | 10 | 10 |
注記:15年3番、18年3番は出走取消
勝ち馬10頭中8頭にダートグレード競走勝ちの実績。1着馬の臨戦過程は大きく2つで、“前走ダートグレード競走で連対し初の名古屋コース”だった馬が5頭(13、15、16、20、21年)。20年ロードゴラッソ(JRA)、21年クリンチャー(JRA)ら3頭は前走が佐賀記念JpnIIIで、2、3着馬も5頭が同レースを使われていて相性がいい。もう一つは“前年に名古屋のダートグレード競走で3着以内”だった馬で4頭(12、14、17、19年)が該当。なお17年3着カツゲキキトキト(愛知)も前年の名古屋グランプリJpnII・3着と好勝負できる素地があった。
まず『5番より外枠に入ったJRA馬』が有力。勝ち馬10頭中9頭が該当する。20、21年と連勝中の川田将雅騎手は、過去10年で【3-1-1-1】とJRAの騎手でもっとも騎乗数が多く成績も残している。なお武豊騎手も騎乗機会として2連勝中。ともに参戦があれば注目したい。佐賀記念JpnIIIをはじめ『前走ダートグレード競走で連対していた馬』はもちろん有力だが、『前走ダートGI/JpnIで5着以下だった馬』の巻き返しにも警戒したい。
(栗田 勇人)
1着
2着
3着
注記
当ページの情報は、NARが特定の馬の応援や推奨などを行うものではありません。