第3ラウンド



富士通賞   オッズパーク賞
  


火の国熊本での最終戦、別府騎手が執念の総合優勝

 
 今年のレディースジョッキーズシリーズ最終ラウンドの舞台は荒尾競馬場。12月にしては暖かく、雲ひとつないおだやかな空模様。最高のコンディションが10名の騎手を後押ししていたが、決戦を控えての各騎手には緊張感が張り詰めていた。
 それも当然で、ほとんどの騎手が総合優勝を狙える得点分布。誰もが勝ちたいという心理状況に加え、荒尾競馬場は3〜4コーナーのカーブがゆるく、直線も220メートルと長いために追い込みタイプも活躍できるコース形態。そのために、道中の流れが結果を大きく左右することが予想された。
 
 しかし騎手の仕事は、馬の能力を100%引き出すこと。それを忠実に全うしたのが、第5戦「富士通賞」で大外枠から先手を取りきったフジノビームの森井美香騎手(高知)だった。内側をややあけての逃げは、走りやすいところを優先した結果。馬もそれに応えて快調に逃げていたが、直線では後続が猛烈な追い上げを見せた。全身で馬を追う皆川麻由美騎手(岩手)に、外を伸びる増澤由貴子騎手(JRA)。1400メートルを走りきったゴールでは、わずかに森井騎手が粘っていたという激戦だった。
 そして最終決戦。地元の岩永千明騎手以外は久々となる荒尾競馬場の騎乗感覚を思い出したところで、いよいよスタート。
 
シリーズ第6戦「オッズパーク賞」で、圧倒的な人気を集めたのはテイエムセッペトベ(増澤騎手)。単勝1.2倍の逃げ馬に4人の騎手が競りかけていったのは、これがラストだからということもあるのだろう。それでも増澤騎手は持ち前の技術で折り合いをつけ、3コーナーでは競りかけた相手が苦しくなる展開。力の差を見せつける形で、直線入口では2着争いに焦点が移っていた。その2着争いが大激闘。インを回る別府真衣騎手(高知)と、外から追い込む平山真希騎手(浦和)。悔いなき一戦をと叩き合ったこの勝負は、レース前に「2着以内なら総合優勝」と聞かされていた別府騎手の執念に軍配が上がった。
 
 それぞれに白熱した争いが見られた荒尾ラウンドは、3着、1着にまとめた増澤騎手が、金沢に続く2度目のラウンド優勝。しかしながら総合優勝は、全6レースのポイントの積み重ねで決まる。わずか1ポイント差で別府騎手がその栄冠をつかみとったのは、6レースすべてで5着以内に入るという安定感が大きな要因だったといえよう。昨年のスーパージョッキーズトライアルを制した赤岡修次騎手も未勝利での優勝だったが、ともに高知所属の騎手というのは、偶然ではないのかもしれない。
 
金沢、高知、荒尾と転戦した今年のレディースジョッキーズシリーズは、別府真衣騎手の逆転優勝で幕を閉じた。しかし次への戦いはすでに始まっている。誰もが口にした「来年は……」の言葉。そのモチベーションに大きな期待をしつつ、再び10名の女性騎手が一堂に会するこの祭典を楽しみに待つこととしたい。

取材・文:浅野靖典
写真:いちかんぽ

 
総合 優勝
荒尾ラウンド 3位
別府真衣騎手(高知)
 やっと総合優勝! 本当にうれしいです! 最終戦は自分の気迫に馬が応えてくれたのかな。ゴールに入った瞬間には「ヨッシャー!」って叫んでいました(笑)。確実にポイントを取れるようにと騎乗していましたが、シリーズで1勝もしていないのがいまひとつ。来年は勝ち星を挙げて優勝したいです! 
 
総合 2位
荒尾ラウンド 優勝
増澤由貴子騎手(JRA)
 1ポイント差ですか……。優勝したかったですね。くやしいです。最終戦では競られたわりには馬がムキにならずに行くことができましたし、このシリーズで2勝できたのはうれしいこと。これをこの先につなげていきたいと思います。地方競馬はやっぱり砂が重いですね。でもだんだんわかってきましたし、来年は総合優勝したいです。
 
総合 3位
皆川麻由美騎手(岩手)
 (荒尾1戦目の)9レースで競り負けたのがなあ……。4コーナーで外に出そうとしたら、馬が内にササってヒヤッとしましたが、あれは勝たないといけないレースでしょう。また総合3位ですか……。それでも3年連続で表彰台というのは素直にうれしいですね。岩手の皆川麻由美というのもアピールできたと思います! 
 
荒尾ラウンド 2位
森井美香騎手(高知)
 (荒尾の)第1戦では楽に逃げられましたが、ゴール前では皆川さんがすごい気合で追い込んできたので、それにつられてこちらも最後までがんばれました(笑)。高知の時点で総合最下位だったので、どうしようと思っていたんですよ。2年連続最下位は絶対イヤですから。それで勝てたので、もう本当にうれしいです!