女性騎手たちと親交のある、
競馬リポーターの大恵陽子さんが、
彼女たちの日々の様子や
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発信していきます。
(毎週金曜 更新予定)

COLUMN

Vol.19 子供の成長を感じた療養期間


宮下瞳騎手(名古屋競馬)が6月15日に待望の復帰戦を迎えました。



5月4日のレース中に落馬し、脳しんとう、肋骨骨折、肺挫傷、さらにのちには第5頚椎の骨折が判明した宮下騎手。

以前のコラムでもお伝えした通り、落馬直後の1週間はめまいと吐き気がひどく、日常生活を送ることもままならなかったようですが、助けてくれたのは“お兄ちゃん”に成長した二人の息子さんでした。

「洗濯物を一緒に畳んでくれたり、いつもはご飯を食べたら食べっぱなしなんですけど、ちゃんと台所までお皿を持ってきてくれたり、お風呂や翌日の学校の用意も自分たちでできることは全部やってくれました。成長してくれましたね」

2016年に騎手復帰をした時はまだ甘えん坊だった息子さんたち。
特に次男くんは、最終レース後に行われたフォトセッションの頃にはすっかり疲れていて、眠たい目をこすりながらママの足にぎゅっと抱きついていました。
それが今では小学生。
ママが困った時には、しっかり助けられる“お兄ちゃん”に成長したんですね。

そして、長男くんはママのカッコイイ姿を見て「ジョッキーになりたい」と夢を語るようになりましたが、一昨年の夏に宮下騎手が鼻を骨折してからは騎手への夢を口にしなくなったよう。
「見た目に衝撃を受けたのかもしれません」と宮下騎手は心配していましたが、今回は退院して帰宅したママを見るなり

「え!もう帰ってきたの?」

というリアクション。

「私がいないとゲームができるので、『まだ病院にいた方がいいんじゃないの?』なんて言っていました(笑)」

と、すっかりたくましくなったようです。

こうして“たくましくなったお兄ちゃんたち”の協力を得ながら、骨折の治癒を促進するという超音波治療と酸素カプセルに2週間通い、さらには

「カルシウムをたくさん摂りました。
魚や牛乳など乳製品をいっぱい食べようと思って、子どもにも『ママみたいに折れちゃうよ』と言って一緒に食べさせました(笑)。
『分かった!』と信じて一緒に食べてくれました」

と、食事もアレンジしたようです。

調教に復帰したのは5月25日前後。

「本当は6月1日からにしようと決めていたんですけど、ウズウズしちゃって我慢できませんでした。
最初は厩舎周りの運動だけやらせてもらって、ゆっくり体を慣らしていきました。
はじめの頃はちょっとフワフワしましたけど、そのうち大丈夫になりました」

休んでいる間には4月デビューの神尾香澄騎手(川崎競馬)が初勝利を挙げ、

「よかったですよね~!神尾騎手のレースを見ていて、いつも『がんばれ!』って応援していました。ホッとしましたし、頑張ってほしいですね」

と後輩たちも応援。

こうしてレースへの思いはどんどん高まり、私たちが予想していたよりも遥かに早く復帰を迎えたのでした。

復帰戦となった6月15日の名古屋2Rはトーホウルナロッサとコンビを組んで8着。



馬から降りると、他の騎手と会話しながら充実した表情で検量室へと入っていきました。

「やっぱりレースは気持ちいいです!
もっと息が上がるかなと心配していたんですけど、意外と大丈夫でした。
体が動くようになって楽になると、ずっと競馬ばかり見ていて『早く乗りたい』って思っていました。
復帰戦は勝てませんでしたけど、レースは気持ちいいです」

デビューから16年近く経っても競馬が、レースが、そして馬が大好きな姿が随所に感じられる宮下騎手。



復帰当日は6鞍に騎乗したのですが、楽しそうな生き生きとした表情で装鞍に向かってレースに挑んでいました。

「怪我をした時はみなさんにご心配をおかけして、すみませんでした。
思っていたよりも早く復帰できたので、本当によかったなと思いますし、これからは怪我しないようにがんばります。
お客さんが競馬場に来てくれるようになる日が1日も早く来ることを待っています」
※名古屋競馬場は現在、無観客開催

瞳姉さん、おかえりなさい!

  • 大恵 陽子競馬ファン歴25年 女性競馬リポーター

    グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。

  • 大恵 陽子
    競馬ファン歴25年
    女性競馬リポーター

  • グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。