JOCKEYS HEART

どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。

#07 木之前葵(名古屋競馬)

  • 木之前葵騎手
  • 名古屋競馬
INTERVIEW
INTERVIEW

どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。

馬が好きで、たまらなくて。

馬が好きで、たまらなくて。

 きっかけは小学校のときに、乗馬を習い始めて、そこで馬の世話をしたり、馬と接するようになったことですね。もともと動物が好きだったんですけど、馬と出会ってからは、格別に好きになりました。競走馬を引退した馬や、馬車をひく馬、ポニーとか、みんな可愛くて。いろいろ習い事をやっていたんですけど、乗馬だけは行きたくてしょうがなかったですね。それで、小学校6年生くらいのときに初めて競馬を見てカッコいいなと思って、「ジョッキーになりたい」と母に話したんです。そしたら「いいんじゃないの」という感じで、そこからのバックアップがすごかったですね(笑)。母はとくに競馬好きとかではないんですが、習い事は率先してやらせるタイプだったので。

ホームシックと“やめたい”を、乗り越えて。

 入所試験を受ける前に、千葉にある馬の学校に入りました。予備校みたいな感じなんですが、2年間通って、高校2年生の時に教養センターの騎手課程に応募して合格しました。同期は15人いて、女性は私ひとりでしたね。馬の学校でも女性は私しかいなかったので、それほど気にはならなかったんですが、大変は大変でしたね、訓練についていけなくて。最初は良かったんですけど、だんだん疲れちゃって。乗馬の経験はあったけど、今まで乗っていた馬と教養センターの馬は全然違うので、慣れるまで大変でした。そのせいか、けっこうホームシックになりましたね。家を出て3、4年になっていたし。そんな時は母に「帰りたいわ〜」って電話していたんですが、「いつでも帰ってきていいけど、今頑張らんとダメだよ」と言われて。でも、訓練にもついていけなくて、やめたいと何度も思いました。「こんなに馬が好きなのに、なんでうまくできないんだろう」って。それでもやめなかったのは、やはり母に「今頑張らないと。今やめてしまったらもう戻れないよ!」とエールを送ってもらったからですかね。そんなことが何回もありましたが、そこで頑張って堪えたから、今があるんだなと思います。

予期しなかった、初勝利。

予期しなかった、初勝利。

 宮崎県出身なので九州だと佐賀競馬場があるんですけど、名古屋競馬場を選びました。ちょっと違う場所で自分を成長させたくて。それで希望を出して、錦見勇夫調教師に採っていただきました。今年(2021年)榎屋充調教師の厩舎に移籍したんですが、錦見先生には、今でも可愛がっていただき、お世話になっています。デビュー戦ですか?まったく覚えていないですね(笑)。「今日デビューだ」という実感もなかったです。その2日後に初勝利したんですけど。1コーナー、2コーナーで外をグーッと周って。そのまま3、4コーナーも外周って、直線向いた時は「あれ?なんか勝っちゃいそう」って(笑)。それで、勝っちゃいました。当然、当時はどう乗れば勝てるみたいな戦略を実行する余裕もなく、先輩の見様見真似で乗っている感じだったので、馬に勝たせてもらったレースでしたね。

姿勢を気にする、私生活。

 騎手として心がけていること?そうですね、馬に乗っているとき以外でも姿勢を気にしていることですね。普段座る時でも、良くない座り方をしていると、それが馬の上でも出てしまうので。背骨の伸ばし方などを意識して、いい姿勢で座るようにしています。あと、馬の上では馬の鞍を挟むように内股になるんですが、それが日常でも出てきちゃって。トレーニングする時も内股になってしまうので、外にも開くように気をつけています。騎手になって大変だなと思うのは、仕事が始まる時間がめちゃくちゃ早いことですね。知らなかったですね、こんなに朝が早いということを。最初は眠たすぎて馬の上でも寝れるんじゃないかっていうレベルだったんですが、今ではもう慣れてパッチリです。でもこの仕事は、毎日大好きな馬に乗って生活できるので、最高だなって思います。「これでもか」って、毎日お腹いっぱいになるくらい乗れるので(笑)。

夢は、ダービージョッキー。

夢は、ダービージョッキー。

 馬の中にも乗るのが難しい馬がいるんですけど、そういう馬が乗っているうちに、日に日に折り合って「今日はうまくできた」、「レースではどんな感じなんだろう」とか考えながら乗るのが楽しいですね。名古屋競馬だと、自分で攻め馬をした馬に、実際のレースで乗せてもらえることが多いので。それも魅力のひとつですね。騎手としての夢?今はダービーを勝つことです。東海ダービー。これまでも4回くらい騎乗していますが、2着が最高です。すごい大差の2着でしたけど、2着は2着です(笑)。去年はたまたま騎乗できたけど、ダービーは3歳の一番上の賞金を持っている馬しか出られないし、その馬に巡り会えるかどうかの運もあるので、馬にとっても騎手にとっても狭き門です。今は “ダービージョッキー”と呼ばれることを目標にして、日々頑張ってます。

最後に、名古屋競馬場が来年(2022年)4月にトレーニングセンターのある弥冨市へ移転するんです。その頃にコロナも落ち着いていたら、ぜひ新しい名古屋競馬場でも皆さんにお会いしたいです。楽しみにしていてくださいね!