JOCKEYS HEART

どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。

#05 岩永千明(佐賀競馬)

  • 岩永千明騎手
  • 佐賀競馬
INTERVIEW
INTERVIEW

どんなきっかけで騎手の道を選んだのか。
騎手になってから、どのように競馬と向き合い、どんな夢をもって走っているのか。
女性騎手として第一線で活躍する彼女たちの想いをお伝えします。

先輩の騎乗姿を見て、決意。

先輩の騎乗姿を見て、決意。

 父が、競馬が好きでテレビをよく見ていて、私も見ていました。高校2年生の時に父が、「近くで馬に乗れるところがあるよ」と言って、私も「行きたいっ!」という感じで、連れてってもらって、乗馬クラブに入ったんです。当時は軟式テニス部に入っていたんですけど、乗馬クラブに入ってからは、乗馬に切り替えました。それで、そのクラブの先輩の西原玲奈さん※が、中央競馬で騎手デビューしていて、応援に行ったんですよ。その姿を見て、「わぁ、カッコいいなぁ」と思って憧れて。乗馬クラブの先生には「おまえには無理だよ」と言われたんですが、負けん気が強いんで逆に絶対なってやる!って決意しました(笑)。父は競馬ファンだったので喜んで応援してくれましたが、母からは危険だからやめてくれと反対されましたね。でも、一度言ったら聞かない性格を知っているんで、最後はあきらめた感じでしたね(笑)。

※西原玲奈さん…佐賀県出身のJRA元騎手。2000年3月デビュー、2003年荒尾競馬場で行われた交流重賞・霧島賞をカシノコールミーで制覇、2010年2月引退。現在はJRA調教助手。

入学当初は、天国だったけど…。

 試験は高校3年の時、中央競馬にチャレンジしました。でも落ちちゃって。当時は競馬の知識がなくて中央しか受けなかったんですけど、その後、地方競馬があるというのを知って、教養センターを受けて1回で受かりました。乗馬をずっとやっていたのと、受験された方からも色々話を聞いていたので、走ったり、懸垂したり、体力づくりもしっかりやったのがよかったんだと思います。センターに入ってからは、同期の子たちはまったく経験がなくて、私は乗馬をやっていたんで、その子たちより上手く乗れたり、障害も飛べたりしたので、気持ちに余裕があって楽しかったですね。でも、だんだん同期の男の子たちに体力的にも筋力的にも負けてきて、ショックでしたね。それからは訓練の後も、筋トレしたり、木馬で練習したり自分なりの努力はしました。

22戦目で、初勝利。

スタートからゴールまで、記憶なし。

 デビュー戦は、ドキドキでしたね。でも夢が叶う日でもあったんで、頑張らないと!とは思いました。それに先輩騎手が周りにいるので、邪魔にならないようにしなければとか考えて、緊張しまくっていましたね。だから、ゴールした時はホッとしました(笑)。それで夢は叶ったんですけど、なかなか勝てなくて。初騎乗、初勝利という人もいるので、焦りましたね。それに応援してくださる方や、声をかけてくれる馬主さんとか、周りの人の期待にも応えなきゃという感じで、早く勝たなきゃと。それで、22戦目ですね。当時所属していた荒尾競馬場の同期が乗って勝った馬に騎乗したんです。どれだけ強い馬かは知っていたので、失敗するわけにはいかない、勝たないわけにはいかない、絶対勝てる馬だと思って。それで勝つことができました。もちろん喜びは大きかったですけど、勝つことの難しさも知りましたね。でも初勝利は特別です。長い道のりだったので。

常に勝ちにいくレースを。

 騎手として心がけているのは、人気のある馬と人気のない馬がいるけど、競馬は何が起こるかわからないので、人気がなくても勝ったりするんですよね。だから、人気がないからダメだと諦めないで、勝ちにいくレースをすることです。あとは、レースではゲートが一番大事だと思っているので、失敗しないでゲートを出して先行させるということを心がけていますね。自分自身も先行して勝つパターンが好きなので。一番に出る先行が好きですね。理想としている騎手ですか?そうですね、やはり宮下瞳さんは凄いなぁと思います。私も怪我で3年くらい休んでいたんですけど、瞳さんも休んでいた時期があって、復帰して、結果を出されているんで凄いなって。長いブランクがあっても活躍できるって、精神的にも強いんでしょうね。瞳さんみたいな方がいると、自分も頑張らなきゃ、と思えますね。

やりきったと思えた時が、引退の時。

やりきったと思えた時が、引退の時。

 騎手としての夢というか、こうできたらいいなぁと思うのは、いつか引退しなくちゃいけない時が来るので、その時は悔いなく、すっきりした気持ちで引退できたらと思います。騎手人生に満足して、区切りがつくような。怪我して復帰したのも、やりきったという気持ちはなかったので復帰したという経緯もあるので。特に年齢とかは関係なく、自分が「ここだ」と思ったときに引退できれば。競馬初心者の方へのメッセージですか?そうですね、競馬は血統なので、それを知ると興味がどんどん広がると思うので、馬のことを調べて欲しいですね。それと騎手も、ただ馬に乗っているんじゃなくて、常に危険と戦いながら頑張っているので、その頑張りを見ていただければ。最近はナイター競馬も開催していて、家族みんなで楽しめると思うので、ぜひ一度足を運んでいただければと思います。