ルーキー小笠原騎手が首位守り優勝
調教師転身の宮下騎手は総合4位
LJSザ・ファイナル 名古屋ラウンド
“ザ・ファイナル”と銘打たれて行われた今年のレディスジョッキーズシリーズ(LJS)。笠松との2ラウンド制で、ここ名古屋が正真正銘のファイナルとなる。
話題の中心はなんといっても宮下瞳騎手。5日前に調教師試験合格が報じられた女性騎手の第一人者の元には次々と後輩騎手や関係者が訪れ、合格祝いやこれまでの感謝とともに「寂しいです」と思いを口にした。前日までに挙げた地方通算1381勝は国内女性騎手最多勝で、2020年には女性初の年間100勝も達成。出産により一度は引退しながらも、再受験しての騎手復帰、さらには子育てと両立しながらの活躍には励まされた人も多いことだろう。
そのうちの一人と思われるのは濱尚美騎手(高知)。現在、妊娠9カ月で休養中だが、「体調は安定しています」と笠松ラウンドに続き騎手紹介式に元気な姿を見せた。結婚時から「母になっても騎手を続けられるよう頑張りたい」とビジョンを描けたのも、宮下騎手が前例を作ったからだろう。
第1戦は中島良美騎手(浦和)が好スタートから先手を取ると、やや落ち着いた流れに見えた。向正面では、大外枠からのスタートでヨレて後方となった塩津璃菜騎手(兵庫)がじわじわとポジションを上げ、他の騎手も機を窺っていたところ、中島騎手は3コーナーで早めに仕掛けた。直線でも数馬身のリードがあり押し切るかに思えたが、外から脚を伸ばしたのは深澤杏花騎手(笠松)と、そのやや後方から塩津騎手と関本玲花騎手(岩手)。ゴール手前数完歩で深澤騎手が交わして先頭に立ったところ、塩津騎手が鋭く迫ったところがフィニッシュとなった。2頭は首の上げ下げとなり、軍配が上がったのは深澤騎手とベアショット。
「笠松ラウンドが悔しかったので、勝たないとと思っていました。よかった、安心しました」と笑顔の深澤騎手。当日朝の調教中には所属厩舎の田口輝彦調教師から「頑張ってこいよ。表彰台、乗るんだぞ」と活を入れられていた。滅多にないことで、本人も気が引き締まり、レース前には「1つ勝てば優勝の可能性もありますか?」とポイント計算していた。
さらに、本人以上に喜んだのでは、と思えるのは兵庫県から応援に駆け付けた家族。母は「心臓がドキドキバクバクして、初めての感覚です」と興奮した様子。
アタマ差2着となった塩津騎手は悔しさいっぱい。「脚を溜めすぎて、追い出しが遅くなってしまいました。直線に入って、すごく伸びそうと思ったんですけど」と唇を噛んだ。
3着中島騎手は騎乗馬の反応を見る意味も込めて3コーナーでやや早めに仕掛けて、最後も「止まってはいないんですけど」とのこと。「追い負けました」と勝者を称えた。
なお、木之前葵騎手(愛知)の騎乗馬は残念ながら調教中の故障により出走取消となり、規定により6ポイントが付与された。
この第1戦の様子を検量室前でじっと見守っていたのは小笠原羚騎手(愛知)の師匠である沖田明子調教師。6着ながら、最終戦を前に7ポイント差で暫定1位をキープしている。「笠松では馬に助けられましたけど、いまの騎乗はダメですね。初出場・初優勝を狙っているんです」と話すと、弟子の元に歩いて行った。
第2戦で専門紙に本命の二重丸がずらっと並んだのは宮下騎手。JRA未勝利から愛知移籍初戦の前走で小差2着とあっては、単勝1.3倍に支持されたのも当然だろう。06年度の第1回からほとんどのLJSに出場している宮下騎手が勝ち、有終の美を飾るかと思われたが、勝負は甘くなかった。
3番手から運んだ宮下騎手は手応えのある状態で直線に向いたように見えたが、それを上回る手応えだったのは今年デビューの小笠原騎手。外から並びかけると、女性騎手界のレジェンドを抜き去り、1着でゴールした。
「やった!うちの厩舎の馬じゃないけど、嬉しい」とガッツポーズしたのは沖田調教師。淡々とした表情で下馬した小笠原騎手に力強く抱きついて祝福した。
「宮下騎手を目標に一緒に動いたらいいから、と第1戦後に伝えていました」と師匠のアドバイス通りのレースを見せた小笠原騎手。このレースで使用した鞭は宮下騎手から贈られたもので、それを使って本人を追い抜く姿は、時代のバトンが一つ、渡されたような気がした。
宮下騎手は「小笠原騎手はどんどん上手くなっています」と褒めると、「厩舎を開業したらぜひ乗ってもらいたいし、乗ってもらえる馬を育てないといけませんね」と話した。とはいえ、誰にも負けぬ根性で30年間、騎手人生を歩んできた宮下騎手だ。2着に敗れて悔しくないはずはない。
「前半、抑えすぎたかな……。前走で乗っていた騎手から最後に甘くなると聞いていて、実際に追い出してもそう感じたんですけど、それなら同じペースで走らせてあげた方がよかったかもしれません」
そう話していると、自身の半年後にJRAデビューし、騎手紹介式や表彰式の司会で来場していた細江純子氏より労いの言葉をかけられた。レース前もゲート裏での輪乗りで中島騎手から「最後ですね。寂しいです」と声をかけられジーンとしていたようで、気づくと目にはうっすら涙を浮かべていた。
表彰台はデビュー6年以内の騎手たちが占めた。総合優勝はルーキーの小笠原騎手で、2位に深澤騎手。3位には佐々木世麗騎手(兵庫)で、順位を聞くと深澤騎手と抱き合って喜んだ。
「またどこかで会おうね」と帰路に着いたのは関本騎手。次に女性騎手が集まれるのはいつの日になるのか。現時点では未定だが、またその日が来るのを楽しみに、各地で奮闘する彼女たちの騎乗を見守りたい。
取材・文大恵陽子
写真岡田友貴(いちかんぽ)
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総合2位 深澤杏花騎手(笠松)
第1戦の騎乗馬は返し馬でハミをしっかり取って、真面目でレースでも大丈夫だろうなと感じていました。中島騎手が早めに仕掛けて少し焦りましたが、馬が最後まで頑張ってくれました。最後は後ろからの脚音も聞こえていて「残って!」と思いながら追っていました。LJSは毎年楽しみにしていました。

総合3位 佐々木世麗騎手(兵庫)
11月のレース復帰前から調教には乗っていて、体を慣らしていたので特にブランクは感じませんでした。LJSは最後まで総合優勝できず、悔しい結果になりました。これからは1鞍1鞍、地元で勝ち星を挙げていきたいです。またこのようなイベントがあれば、応援に来ていただけると嬉しいです。












総合優勝 小笠原羚騎手(愛知)
嬉しいです。LJSは緊張しましたが、他場の先輩と一緒に乗って普段と異なるレース展開も経験できました。第2戦は大外枠で全体の流れを見られてよかったです。宮下騎手を目標に、3コーナーでは馬なりで上がっていけました。応援に来ていた祖母に勝つところを初めて見せられたと思います。