休養と敗戦を糧に躍進
名古屋の一番星が輝く
今年の名古屋の2歳馬戦は、5月20日の新馬戦から始まった。8月には準重賞の若駒盃をケイズレーヴが勝ち、9月から行われた3鞍のJRA認定競走・セレクトゴールドは、門別からの転入馬ページェント、地元デビューのカワテンティアラ、そして再びケイズレーヴが勝利。これら主要競走を勝った馬たちが、今回のネクストスター名古屋の主役と目され、人気的にも上位に推された。
この日、昼前から降り出した雨は、レースが行われる夕方に向けてその勢いを強めた。馬場状態の発表は『不良』。表面に水が浮く馬場は、経験の浅い2歳馬たちに新たな試練を突きつけた。
レース序盤には、各々の思惑と駆け引きが垣間見えた。促して先手を取りに行こうという馬がいない。内目の枠から「想定外の逃げ。むしろ逃がされた感じ」(大畑雅章騎手)というエレインアスティが、ミトノプライドと並びながら押し出されるように先行する。一方、1番人気のカワテンティアラは、先を争うことなく控える戦法。前を追う2番人気のケイズレーヴを先に行かせ、その直後4番手に位置を取った。
レースはそのまま、淀みなく進んだ。向正面では、先団の4頭からまずカワテンティアラが遅れ始めた。逆に、先頭にいたエレインアスティは3コーナーから仕掛けて後続を離す。ミトノプライドも追いすがったが、直線に向いても一旦ついた差は縮まることなく、エレインアスティが1馬身半のリードを保って逃げ切った。ミトノプライドが2着。1馬身差の3着にはケイズレーヴが粘り込んだ。
勝ったエレインアスティは、今年最初の新馬戦を勝ち早くから期待された馬だった。しかし、ソエの影響などにより秋まで休養したうえ、復帰後2回の敗戦によりその存在感が薄れていた。管理する今津博之調教師も戦前「前走から日にちもなく、不利な内枠でもあるので、今回は挑戦の気持ち」と話しトーンは控えめ。しかし蓋を開ければ、6番人気という戦前の評価を覆し実績馬を完封し、勝ち時計も競馬場弥富移転後の2歳馬戦(1500メートル)では最速。改めて素質の高さをアピールした。
一方、3着のケイズレーヴは、「『行きっぱなし』のレースで脚が溜まらず、3コーナーから加速するこの馬の持ち味が出なかった。良馬場でやりたかった」と、騎乗した木之前葵騎手が無念の表情。しかし続けて「かかることなく指示通り走ったし、時計は出せて収穫はあった」とも話し、デビューから共に向き合いながら歩んできた馬の成長には胸を張った。
3番人気のページェントは、6着だった。友森翔太郎騎手も「伸びているが、前が止まらず一向に追いつかなかった」と馬場状態を敗因に挙げたが、マイナス13キロの馬体重については「しっかり乗って仕上げた。馬は良くなっていた」と話し、成長に手応えはあったようだ。
カワテンティアラは、7着。デビューから2連勝で臨んでいたとは言え、馬の気持ちが出過ぎて行きたがる面を見せた前走を踏まえ、この中間は課題克服のため「ゆっくり行こうよ、と馬に教えるような調教」(岡部誠騎手)でメンタル面の成長を促していた。戦後の騎手同士の感想戦で出ていた「(序盤から)出して行くつもりはなかった」(同騎手)という話から推し量ると、今回はレースでの馬の気持ちと今後に向けてのレース運びを重視した乗り方だったことが窺われる。
名古屋での次の2歳重賞は、12月3日のゴールドウィング賞。距離が1700メートルに延びるだけに、次なる目標に向け各馬の動向が注目される。
取材・文坂田博昭
写真宮原政典(いちかんぽ)
Comment
今津博之調教師
デビュー戦まではスピード馬と思っていましたが、秋以降の走りからは距離はもつのではないかと感じます。今後は馬の状態優先となりますが、まずは1700メートルを試したい。今でもソエが気になり、今日はトモの感じも一息で、この馬が良くなるのはもっと先。これからどこまで成長するか楽しみです。
大畑雅章騎手
前走で押して行ったのが今回生きて、1~2コーナーの入りは前走より楽でした。まだ伸びしろがあるし、センスもあり距離延長はいいと思います。カツゲキキトキト以来、こういう手応えのある馬に巡り会う機会が少なかったのですが、この馬は調教から乗るのが楽しみ。騎手としての意欲に繋がっています。