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第69回羽田盃JpnI

直線追い比べを制し人気に応える
  白毛がダート三冠初年に名を刻む

南関東三冠が全てJpnIにグレードアップされ、新ダート三冠が整備された。この羽田盃も1着賞金が5000万円に増額。前哨戦から多方面での告知も行われ、大きな注目を集めることになった。京浜盃JpnIIを制した大井のサントノーレが負傷により戦線を離脱し、他の南関東勢の参戦も少なく、結果として8頭立てとなったが、JRA勢は前哨戦への参戦がほぼ必須となり、路線を明確化する意図はきっちりと反映。雲取賞JpnIIIか京浜盃JpnII、そして地元のクラシックチャレンジを使った各馬が三冠初戦の舞台に集結した。

この日の大井競馬場は早朝より雨に見舞われ、重馬場でスタート。時計がかかるわりに前残りという、つかみどころのない馬場傾向でレースは推移した。さらに雨は降り続け、直前の第10レースから不良に悪化。前残りの傾向がさらに強まっていた。

単勝1番人気にはアマンテビアンコが支持された。ダートグレード3勝を挙げたユキチャンを母に持つ白毛馬。雲取賞JpnIIIでは2着だったが、デビューからの4戦全て3着以内と安定した走りを見せている。その雲取賞JpnIIIを制したブルーサンが2番人気。単騎で逃げられれば高い能力を示すが、大外枠で自分の競馬ができるかが鍵となった。以下、地元の笹川翼騎手が手綱を取るハビレ、ブルーバードカップJpnIII制覇、京浜盃JpnIIで2着の牝馬アンモシエラとJRA勢が上位人気を形成し、スタートのときを迎えた。

好スタートを決めたのは最内枠のアンモシエラ。これに大井のティントレット、大外枠のブルーサンが絡んでいき、3頭が横並びで激しい逃げ争いを演じる。しかし枠順の差はいかんともしがたく、アンモシエラ、ティントレット、ブルーサンの順で1コーナーを通過。その後ろにアマンテビアンコ、ハビレと続いて向正面に入り、隊列は落ち着いた。

ところが3コーナーの手前でブルーサンが徐々に後退。代わって外からアマンテビアンコ、内からムットクルフェ(大井)がポジションを上げにかかった。

直線の入口でアンモシエラが単独先頭。前残りの馬場を利して、懸命に逃げ込みを図る。その外からアマンテビアンコが1完歩ずつ差を詰めにかかり、直線の半ばから2頭による激しい叩き合いが演じられた。しかし、それも残り50メートルまで。アマンテビアンコが敢然と抜け出し、1馬身差で三冠初戦を制した。

母のユキチャンがTCK女王盃JpnIII(2010年)を制したのと同じ舞台で、アマンテビアンコが躍動。父はヘニーヒューズで、地方のダートで飛躍を遂げるべき1頭が歴史的な一戦を制した。「まず1つ獲ることができましたので、次の東京ダービーへ向けてもいい準備をして、走ってくれればと思います」と川田将雅騎手が話せば、管理する宮田敬介調教師も「二冠目を獲ることを目指して頑張ります」と、視線は東京ダービーJpnIへ。パワフルな末脚で差し切ったレース内容を見ても、大井2000メートルは絶好の舞台。頂上決戦へ向け、期待は高まるばかりとなった。

アンモシエラは最内枠と前残りの馬場を利して最善の競馬を演じたが、最後は勝ち馬の末脚に屈して2着。横山武史騎手は「二の脚が想像以上に速かったですね。競られたわりには、最後までよく踏ん張ってくれました」とねぎらった。これで地方では3連続連対。牡馬を相手に奮闘を続けており、ゆくゆくは牝馬路線との両面で活躍が見込める。地方向きの先行力があるのも魅力で、今後の飛躍を予感させる一戦となった。

最低人気のフロインフォッサル(船橋)が3着に入り、雲取賞JpnIII・5着から前進した。最後方の追走から直線で猛然と追い上げた内容に、本田正重騎手も「急かせずに進ませたら、いい脚を使ってくれましたね。距離が延びていいし、これからの馬ですよ」と手ごたえをつかんだ様子。展開次第では東京ダービーJpnIでも面白い存在だ。

2番人気のブルーサンは勝負どころで後退し、最下位の8着。和田竜二騎手は「間隔があいて、仕上げが難しかったと思います。それに自分のリズムで走るタイプですから……」と天を仰いだ。いわゆる『逃げ馬の宿命』で、今回は枠順に泣いた形。自分の競馬ができれば巻き返しが可能だ。

出走頭数の確保という課題は残ったが、地方にもゆかりのある白毛馬が初戦を制したことは注目度を高める一助となったはず。東京ダービーJpnI、ジャパンダートクラシックJpnIへの盛り上がりを加速させるためにも、アマンテビアンコを筆頭とした各馬の奮闘と飛躍を願っている。

取材・文大貫師男

写真いちかんぽ(岡田友貴、国分智)

Comment

川田将雅騎手

今まで跨った白毛馬と比べつつ、この子の良さを感じながらの騎乗でした。前回もスタートでつまずいていますので、今回はつまずかないような出方を、と考えていました。最後の直線も、ゴールまでにはきっちり捕まえてくれる雰囲気でしたので、無理せずゆっくりと捕まえに行こうと思っていました。

宮田敬介調教師

歴史が動いたレースとなりましたが、最初に名前を刻むことができてうれしかったです。競馬場に来てからも非常に落ち着いていて、馬体も研ぎ澄まされていた印象だったので、しっかり仕上がっているなと感じましたね。いいポジションで運べていたし、直線でも捕らえてくれるだろうと思っていました。