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第1回ネクストスター西日本

同期の絆でつかんだ1勝
  高知勢が1~3着を独占

高知の田中守調教師とJRAの小牧太騎手は、地方競馬教養センターの同期生。同じ九州出身ということもあってかウマが合い、センターではいつも一緒にいた。田中調教師が和歌山の紀三井寺競馬場で、小牧騎手が兵庫で騎手デビューしてからも、それぞれが新天地に移籍して以降も、ときおり連絡を取り合ってきた。

田中調教師の携帯電話に、小牧騎手から着信が入った。

「その日はJRA交流のレースがあって園田に乗りに行くから、リケアサブルに乗れるんやけどなー」

ネクストスター西日本で、リケアサブルにエキストラ騎乗できるというのだ。リケアサブルは2月に姫路で兵庫ユースカップを快勝している実績馬。田中調教師は突然の申し出に驚きながらも稲場澄オーナーに相談したところ、オーナーは快諾。同期のふたりは、56歳にして初めてタッグを組むことになった。

ネクストスター西日本は、3歳スプリントシリーズとして新設された重賞。兵庫(園田・姫路)、高知、佐賀の持ち回りで開催される。今年は地元兵庫から3頭、高知から5頭、佐賀から2頭がエントリーして、園田の1400メートルを舞台に覇を争った。

ハナを切ったのは地元兵庫のクラウドノイズで、高知のホーリーバローズが2番手の位置取り。高知のリケアサブルは外目の3番手、佐賀のトゥールリーは内の4番手を追走する。

直線、リケアサブルが満を持して先頭へ。外から高知のワンウォリアーが猛然と伸びてくる。しかしリケアサブル&小牧騎手は先頭を譲らず、喝采の1着ゴールイン。1番人気にきっちり応えた。ワンウォリアーが2馬身差の2着、ホーリーバローズが6馬身差の3着に入り、高知勢がワンツースリーフィニッシュを決めた。

表彰台で小牧騎手の笑顔が弾けた。

「1~2コーナーだけ行きたがる面があると聞いていました。ちょっと行きたがったんですけど、あそこで辛抱をしたぶん最後まで伸びてくれました。田中の馬で勝つなんて思ってもみないことだったので、それが実現できて本当によかったです」

田中調教師もとびきりの笑顔を浮かべた。

「最近は騎乗が少ないのでドキドキしていましたが、さすがですね。上手く乗ってくれました。ゴールの瞬間はウルッと来ましたね」

ワンウォリアーは兵庫ユースカップに続いて2着。騎乗した岡村卓弥騎手は「今回は道中も楽に運べましたし、やっぱり勝った馬が強かったですね。ワンウォリアーもいい脚を使っているんですけどね。距離が長くなれば逆転できるかもしれないですけど、今日は完敗でした」と勝ち馬を称えた。

ホーリーバローズは初遠征で3着。永森大智騎手は「逃げか2番手で進めたかったので、主張していきました。2コーナーをまわったときにフワッとしたので、早めに動かしていきました。初めての馬場に戸惑った感じもありましたし、このメンバーに入ってよく頑張ってくれたと思います」とパートナーを労った。

この日の小牧騎手はエキストラ騎乗(計5レース)時に、兵庫所属時代の勝負服を着用した。帰って来た『胴緑、赤山形一本輪、袖赤』に、観客も関係者も大喜び。第2レースでは弟の小牧毅調教師が管理するメイショウマサカリに騎乗して約1年半ぶりの勝利を挙げ、メインレースに弾みをつけた。兵庫で重賞を勝つのは、2004年の姫山菊花賞(カネトシパッション)以来20年ぶり。名手の騎乗と「まだまだ乗れることを実感しました」という言葉が、熱く心に響いた。

取材・文井上オークス

写真桂伸也(いちかんぽ)

Comment

小牧太騎手

リケアサブルは強い馬で、僕は跨っていただけでした。田中(守)の馬で、園田で勝ったことがとても嬉しいです。久々に園田に来て6鞍に騎乗して、まだまだ乗れることを実感しました。この勝負服を着ると、やっぱり燃えるところがありますね。今日は朝から20年前の僕に戻ったような気持ちで乗っていました。

田中守調教師

ワンウォリアーは必ず伸びてきますし、高知では負けているので怖かった。勝つことができてホッとしました。ペースが遅いと行きたがるところはありますが、少しずつ成長して大人になっています。いい状態で臨むことができましたし、なにもかもが上手く行った感じですね。次走はオーナーと相談します。