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LJS2023 笠松ラウンド

盛岡首位の木之前騎手が優勝
  2位は第1戦勝利の佐々木騎手

3月8日は国連制定の国際女性デー。地方競馬ではばんえいを含め現役で11名の女性騎手が活躍することから、この日にレディスジョッキーズシリーズ(LJS)を開催しようと企画され、笠松競馬場が開催地となった。7日と8日にはJR名古屋駅コンコースで『LJS×国際女性デー』イベントを実施。普段は地方競馬に馴染みが薄いと思しき買い物客なども足を止め、女性騎手の紹介パネルに見入っていた。

「まだまだ女性が子育てを担うことが主流。私のように仕事をしながら育児ができる人もいると思うので、周りが協力してくれる場を作ってくれたらありがたいです」と話したのは2児のママである宮下瞳騎手(愛知)。この日、笠松第3レースを勝ち地方通算1200勝を達成し、国内女性騎手の最多勝記録を更新し続けている。

笠松初騎乗となった中島良美騎手(浦和)は「これ、浦和にも欲しいです」と、昨年10月に検量室横に設置された女性専用トレーラーハウスを指した。中には更衣室、トイレ、休憩室があり、従来は着替えのために調整ルーム3階まで上がる必要があったが、グンと近くなり、レースにより集中できる環境となった。

今年は2ラウンド制のLJSはオール女性の8頭立て。2023年11月21日の盛岡ラウンドは怪我のため欠場した関本玲花騎手(岩手)がこの日からレース復帰し、第1戦ではA評価の馬に騎乗した。

好スタートを決めたのは、内の中島騎手。その外に濱尚美騎手(高知)がつけようとしたところ、大外枠から1コーナー直前まで強気にポジションを取りに行ったのは佐々木世麗騎手(兵庫)だった。手応え良く2番手につけて直線で先頭に立つと、4コーナーで追い出しを待たざるを得なかった関本騎手を半馬身しのぎ勝利。昨年は12勝に低迷したが、今年は姫路開催で強気にポジションを取りに行くレースや、早めに仕掛けての押し切り勝ちなどで14勝を挙げる勢いが垣間見られるレースだった。

2着の関本騎手は「まだ自分の動きがハマってきていません」と、もどかしさを抱えつつも「次、勝てば表彰台はありますか?」と勝負師の顔を覗かせた。しかし、勝ったとしても合計50ポイント。第1戦を終えた時点で暫定3位がすでに54ポイントのため逆転不可と分かると、「盛岡ラウンドを乗れなかったので、大きな差ですね」と肩を落としつつ、次戦も善戦を誓った。

3着は木之前葵騎手(愛知)で、4着の濱騎手は「結果論ですけど、位置取りをもう少し主張してもよかったかな」と、序盤で佐々木騎手が外から来た時に控えたことを反省。5着に深澤杏花騎手(笠松)だった。

最終戦となる第2戦は1周目スタンド前から大声援が飛んだ。「世麗ちゃーん!」「濱ちゃん、行け!」など、野太い声も聞こえ、競馬場のスタッフも「いつもの2倍以上の入場者数と感じるくらいの盛り上がり。大きなカメラ機材を持ったファンも多いですね」と笑顔を見せた。

その声援を背に神尾香澄騎手(川崎)が引っ張るレースは、3コーナーで木之前騎手が先頭に並びかけると、そのまま押し切って2馬身差で勝利。2着に宮下騎手で、笠松コースを乗り慣れた東海地区の2人が意地を見せた。3着は「めちゃくちゃ悔しい」と地団駄を踏んだ佐々木騎手。というのも、優勝に向けてポイント計算をあらかじめしていて「やってしまった……。葵さんが優勝だな」とゴールの瞬間に悟ったとのこと。

その予測通り、87ポイントで木之前騎手が総合優勝に輝いた。「盛岡ラウンドが1位で、今日の出馬表を見てもチャンスがありそうだったので、ワクワクしていました」と喜んだ。この日は場内の名古屋競馬PRブースで同騎手の特製バスタオルも販売され、それを手に応援するファンもいた。「構想として、売上げを出身地・宮崎県の在来馬である御崎馬の寄付に充てられたらいいな、と考えているんです」とのことで、LJSでの活躍は売上げにも貢献したことだろう。

2位は12ポイント差で佐々木騎手、3位に盛岡ラウンドで木之前騎手と同じ42ポイントを獲得し、笠松で4着・6着で62ポイントの濱騎手だった。

表彰式が終わると濱騎手が勝負服姿のままコートを羽織り、ダッシュで帰路に就いたほか、6位の神尾騎手や7位の深澤騎手は言葉少なく俯き加減で競馬場を後にするなど十人十色の雰囲気だったが、国際女性デーにLJSが大いに盛り上がった一日だった。

取材・文大恵陽子

写真岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

総合優勝 木之前葵騎手(愛知)

めちゃくちゃ嬉しいです。第2戦は前に行ければと思いましたが外の馬が行きたそうだったので、逃げ馬の後ろに切り替えました。内を空ける馬場になっていて、インからすくわれる前に早めに動いて行きました。絶対勝ちたい気持ちが強くて、最後は声を出しながら追っていました。

総合2位 佐々木世麗騎手(兵庫)

第2戦も1着を狙っていたので、総合2位は残念です。第1戦は遊ぶ面がある馬と聞き、ゲート裏で気合をつけるなど準備をしました。2番手は押して行ったわけではなく、抑えながらでの位置。外枠が良かったですし、砂を被らない方がいい馬らしく、その点でも枠が向きました。

総合3位 濱尚美騎手(高知)

第1戦は結果論ですが、ポジション争いでもう少し主張してもよかったかな、と反省です。今日は前残りのレースが多く、前目につけたいと思っていました。ただ、外から(佐々木)世麗ちゃんが来て、付いて行くと相手もさらに来るだろうと思い、一歩控えました。最後は脚を使っているだけに、悔しいです。