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2023ヤングジョッキーズシリーズ総括


クローズアップ

2024.01.09 (火)

活躍が目立ったJRA騎手
 優勝は横山琉人騎手

迎えて7年目となったヤングジョッキーズシリーズ(YJS)。一時期、地方でもJRAでもデビューする騎手が減っていたが、ここ数年は回復傾向にあり、したがって本シリーズの出場騎手も年を追うごとに増えてきた。昨年のトライアルラウンド(TR)出場騎手は、地方38名、JRA24名で、ともに過去最多を記録したが、今年も地方37名、JRA25名で、合計では同数の出場となった。

本シリーズが初めて行われた2017年のTRは、4月下旬から11月下旬まで7カ月をかけて争われていたが、徐々にその期間が短くなり、23年のTRは7月4日の佐賀に始まり、10月11日の笠松まで約3カ月という、これまででもっとも短期間での決戦となった。

ファイナルラウンド(FR)は、昨年が西日本だったため今年は東日本で、地方は初めての川崎競馬場、JRAは5度目の中山競馬場を舞台に争われた。

濱尚美騎手が地方西日本1位でFRへ

TRの序盤はJRA騎手の活躍が目立った。

初戦となった佐賀(7月4日)では小沢大仁騎手が連勝。さらに高知(7月17日)では松本大輝騎手が連勝した。

一方、東日本の初戦となった門別(7月19日)では佐々木大輔騎手が1着・2着。永野猛蔵騎手は川崎(7月27日)こそ2戦とも二桁着順だったが盛岡(8月1日)で連勝した。

前半でJRA騎手3名が1つの競馬場で連勝したのは印象的だった。

地方騎手が印象的な活躍を見せたのが金沢(8月22日)だった。第1戦では新人・大畑慧悟騎手(愛知)が10番人気ながら直線で先頭に立ち、アタマ、クビ、ハナ差という4頭の接戦を制した。そして第2戦では最低人気の濱尚美騎手(高知)が後方追走から3~4コーナーで一気にまくって直線抜け出して勝利。さらに第1戦を制した大畑騎手が9番人気で3着に入り、3連単は266万円という大波乱となった。

濱騎手は3場6戦に騎乗して、1勝、2着2回、3着1回で85ポイントを獲得し、地方西日本で1位となった。デビュー5年目で、過去4年のYJS・TRではいずれの年も地方西日本で二桁順位だったが、最後の年にFR進出。地方所属の女性騎手では初のFR出場となった。

後半には地方騎手の健闘も目立つようになり、菅原涼太騎手(大井)が地元大井(9月5日)で2着・1着、大木天翔騎手(大井)は東日本最終戦の船橋(9月26日)で1着・2着と結果を残し、ともにFR進出を決めた。

とはいえ全体的にはやはりJRA騎手が優勢で、東日本・西日本とも、JRA騎手7勝に対して地方騎手5勝という結果だった。

FR進出騎手を見るとデビュー2・3年目の騎手が多く、地方では8名中5名、JRAでは8名中6名がこれに該当した。

それゆえ今年デビューの新人騎手はあまり目立たず、地方・JRAともFR出場は1名ずつ。地方は前述の大畑騎手で、JRAは田口貫太騎手が東西通じてTRの最終戦となった笠松で1着・2着。父が調教師をしている、いわば“地元”でもあり、自身がデビュー初勝利を挙げてもいる競馬場で結果を残し、JRA西日本で4位に食い込んだ。

FR中山では川崎の野畑・新原騎手が健闘

FRもJRA騎手優勢の流れは変わらなかった。川崎競馬場はフルゲート14頭のため、出場16名が3戦のうち2レースずつ騎乗して争われた。

第1戦は3番手につけた田口騎手が4コーナーで先頭に立つと2着に5馬身差をつける圧勝。単勝1.1倍という人気だったため、多分にクジ運もあったかもしれない。

第2戦は先行した永野騎手、大木騎手が3コーナーから馬体を併せての一騎打ちとなり、2番人気の永野騎手がクビ差先着した。

第3戦は3番手につけた2番人気の秋山稔樹騎手が直線で抜け出した。

3戦ともJRA騎手の勝利となったが、2着は3戦とも地方騎手で健闘を見せた。

中1日置いてのFR中山・第1戦の舞台は芝2000メートル。逃げた川崎の新原周馬騎手が直線を向いても先頭だったが、中団を追走した同じ川崎で同期の野畑凌騎手が、7番人気ながら直線外を一気に伸びて差し切った。

ダート1800メートルの第2戦は、2番手につけた2番人気・横山琉人騎手が直線で突き放し7馬身差の圧勝。2着には新原騎手が入り、第1戦に続いて見せ場をつくった。

優勝は、川崎3・4着、中山4・1着の横山騎手。2位は、川崎1・6着、中山7・4着の田口騎手、3位は、川崎5・5着、中山3・2着の新原騎手だった。

FRは初回の2017年から21年まで5年連続で地方騎手が優勝していたが、22年の小林凌大騎手に続いてJRA騎手が連勝となった。

なお地方騎手では、3位の新原騎手に次いで、中山第1戦を制した野畑騎手が5位。両者ともデビュー2年目ですでに通算101勝を超えており、YJSの出場は今年が最後。南関東でデビューした騎手が2年目で通算100勝超というのは相当な活躍で、その実力をYJSでも存分に発揮した結果といえるだろう。

なおFR中山の実施は12月16日の土曜日。メインにはターコイズステークスGIIIが組まれていたが、それほどの混雑ではなく、ゴール前のウイナーズサークル付近には、出場騎手の親族・友人や厩舎関係者と思われるグループや、思い思いの騎手を応援するファンが目立った。

初回から21年まではFRのJRA実施日は、年末の開催最終日、もしくは有馬記念前日で、いずれもGIのホープフルステークス開催日だった。YJS・FRは、特に地方騎手にとっては晴れの舞台。観戦・応援に来る関係者のことを考えると、やはり入場者が落ち着いている開催日のほうがいい。

コロナ禍を経て、JRAの多くの競馬場ではスタンド前のかつて自由席だったところがスマートシートという指定席となった。出場騎手の関係者にどれほどの招待席が用意されているのかはわからないが、コース近くで声を出して応援できるように、スマートシートのゴール前付近の一角を仕切るなどして、出場騎手関係者用の席にするなどがあってもいいのではないだろうか。

斎藤修

写真いちかんぽ